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夢幻水滸伝

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第十二話 西の動きその十四

「間合いを考えてそうしてくれたらいいでおじゃる」
「ほなやらせてもらうわ」
「では麿達はでおじゃる」
 夏目はその手に持っている菊一文字を抜いた、そしてだった。
 自軍に砲弾の様な速さで向かって来ている井伏に向かった、佐藤兄妹もだった。互いに顔を見合わせて言い合った。
「ほな僕等は山本さんに向かおうな」
「そうしよな」
 二人で話した。
「二対一でな」
「やったろな」 
「ほな中原さん行ってきます」
「今からそうしてきます」
「相手は強いから気をつけや」
 中原は自分に言う二人を送り出した、そのうえで自身は軍勢の采配に専念することにした。
 砲撃と銃撃が続く中でだ、夏目は井伏の前に来た。すると井伏は動きを止めて夏目に言った。
「来たか」
「久方ぶりでおじゃるな」
 夏目は急停止した井伏の前に出て悠然とした笑みを浮かべて応えた。
「井伏氏も元気そうで何よりでおじゃる」
「お互いにのう。それで頼みがあるんじゃ」
「負けろ、でおじゃるかな」
「関西全軍わしの仲間になって欲しいんじゃ」
「ほっほっほ、では井伏氏がこちらに入るでおじゃるな」
「ちゃう、逆じゃ」
 井伏もまた笑って夏目に返した。
「わしが棟梁、夏目達がわしの配下になるんじゃ」
「それはまた珍妙でおじゃるな」
「珍妙?」
「この天下は姫巫女様のものになると決まっているでおじゃる」
 夏目の悠然とした態度は変わらない。
「井伏氏もそのお一人でおじゃるよ」
「わしを配下にするんか」
「麿と轡を並べるでおじゃる」
 そうなるというのだ。
「いいことでおじゃるな」
「山本もっちゅうんか」
「当然でおじゃる」
 井伏の親友である彼も然りというのだ。
「むしろ麿達の方から井伏氏達に言いたいでおじゃる」
「配下になれか」
「一緒に楽しくやるでおじゃる」
「面白い、そう言うんならじゃ」
 夏目のその言葉を受けてだ、井伏は。
 猪の顔でにやりと笑てだ、こう夏目に返した、
「わし等に勝つことじゃ」
「勝てばでおじゃるな」
「江田島の男に二言はないわ」
 その笑みでの言葉だ。
「そのことは言っておくけんのう」
「帝国海軍からの伝統でおじゃるな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「絶対にじゃ」
「わかったでおじゃる、ではでおじゃる」
「やるか」
「麿にも二言はないでおじゃるよ」
 菊一文字を構えてだ、夏目は井伏に答えた。
「戦場においては」
「そう言うか」
「そうでおじゃる」
 こう答えたのだった。 
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