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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十五話 長崎へその五

「全く以て」
「いえ、お似合いかと」
「そう言って頂けますか」
「そうです、本当に畑中さんに相応しい」
 心からこう思っている。
「そうした方です」
「そうですか」
「はい、確かお料理も」
「実は出来ます」
 八条荘では小野さんがいるので作ってないけれどだ。
「和食が主です」
「そうなんですね」
「はい、包丁の使い方が特にです」
 いいというのだ。
「妻は」
「そうですか」
「はい、そうした妻でして」
「六十年ですね」
「共にいます」
「六十年一緒なのは」
 それこそだ。
「滅多にないことですね」
「古来より」
「七十歳で古稀ですが」
 古来稀という意味だ、昔は七十歳まで生きられる人は滅多にいなかったのでこうした言葉も生まれたのだ。
「ですが六十年になりますと」
「私達は二十代前半で、です」
「結婚されてですから」
 それで六十年となるとだ。
「やっぱり凄いですね」
「まず二人共そこまで生きることがですね」
「難しいですね」
 夫婦揃って八十過ぎまで生きることもだ。
「やっぱり、それに」
「六十年共にいることも」
「このことも」
 考えれば考える程だ。
「難しいですね」
「そうなりますね」
「ですから本当に」 
 僕は心から思った。
「素晴らしいことですね」
「神仏に感謝しています」
「六十年一緒にいられて」
「はい、まさに」
「そして今も働いておられるなんて」
「執事、女中に定年はありません」
 畑中さんのお考えだ。
「働けるまで、です」
「働くものですか」
「私も妻もその様に考えています」
「そうですか」
「修行と同じです」
 執事さん、女中さんのお仕事はというのだ。
「出来る限りはです」
「していきますか」
「はい、そのつもりです」
「そして奥さんともですね」
「これからも共にいたいです」
 六十年経たけれどというのだ。
「是非」
「そうされて下さい」
 是非にとだ、僕は畑中さんに笑顔で答えた。 
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