夢幻水滸伝
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第十二話 西の動きその六
「ここはそうせんのじゃ」
「ほな何時攻めるんですか」
「夜い仕掛けんかったら」
「朝じゃ」
その時だというのだ。
「朝に仕掛けるんじゃ」
「朝ですか」
「その時にですか」
「早朝じゃ」
まさにその時にというのだ。
「朝に一気にやったるんじゃ」
「それがええのう」
竜人はオークのその提案に乗って言ってきた。
「関西の連中は中々頭が切れるけえのう」
「だから夜襲位は読んでるわ」
「そやからじゃのう」
「夜は敢えて攻めんわ」
迎え撃たれることが容易にわかるからだ。
「だからじゃ」
「夜は何もせんと」
「用意はする」
戦のそれはというのだ。
「しかしじゃ」
「それでもじゃな」
「用意をしてじゃ」
「そしてじゃな」
「朝じゃ」
まさにその時にというのだ。
「日の出と共に攻めるんじゃ」
「そうか、わかったわ」
「そういうことじゃ、ええのう」
「ああ、朝に一気にやったろか」
「人間朝が一番辛いんじゃ」
日の出のその時がというのだ。
「まだ寝てるか起き抜けじゃからのう」
「夜よりもな」
「お日さんにもまだ目が慣れてないしな」
このこともあってというのだ。
「やったるで」
「そして狐と狸やったるか」
「わし等でのう」
「猪と竜でな」
「向こうは化かす、こっちは干支じゃ」
オークは笑ってこうも言った。
「格がちゃうんじゃ」
「わし等は連中と同じ地の星じゃけどな」
星の格は同じだというのだ。
「しかしのう、われの言う通り違うわ」
「そうじゃ、干支の力見せたるんじゃ」
こう言ってだ、山陽の勢力を率いるオークである井伏秀幸と竜人である山本剛が共に出陣した、その報はすぐにだった。
夏目達にも届いた、夏目はそれを聞いてすぐに陣中で言った。
「井伏氏も山本氏も出たでおじゃるか」
「予想通りやな」
「その通りでおじゃる、しかしでおじゃる」
「しかし?」
「山本氏はどちらの世界でも変わったでおじゃるな」
こちらの世界でも彼等の世界でもというのだ。
「実に」
「そうやな、一年の時はな」
「荒れて仕方なかったでおじゃる」
「それで仕方なかったわ」
「向こうで色々あったと聞いているでおじゃる」
「広島では」
彼の出身地で中学までいたそこではだ。
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