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~異世界BETA大戦~ Muv-Luv Alternative Cross Over Aubird Force

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兆し

 
前書き
すみません、毎度の事ですが、大変間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
今回はプロットで悩むところがあって筆が進んでいませんでした。 

 

モニターがパァッと明るくなる。
遅れて衝撃波がピリピリと外装甲に届いている感触をおぼえる・・・そしてレーダー表示からはまたも僚機が1機消失した。
「くっそ、これじゃ嬲り殺しだ!いかんせん数が違い過ぎる・・・・。」
デトロワ軍の辺境警備艦隊に所属するニルセン曹長は圧倒的不利な戦況を見て思わずつぶやく。
広域レーダーに目をやると味方スクワイエルを示す青い輝点が8つに対し、敵を示す輝点は・・・・約800・・・。
味方スクワイエルは全機新型強襲タイプのディオールⅡなのだが・・・。
敵にはシールドが無く、当たれば一撃で落とせるのに割とすばしっこくて中々ロックオンしない。
そのうえ、ミサイル兵器は8割くらい敵のレーザー兵器によって、ことごとく撃ち落される為、光学兵器(レーザー)と実体弾(レールガン等)で対抗しているので効率も悪い。
これでも既に200~300は撃破したが、数の暴力の前にどんどん押され、当初12機いた彼の中隊も4機撃破され、残されたメンバーも段々と気力や体力が消耗して効率が落ちてきている。
彼らの母艦であるオスメイア(デネヴァ型)やルモラン型は偵察艦や警護艦なので長射程兵器を持たず、シールド強度はお世辞にも高いとは言えないレベルなので近づかれたら蹂躙される可能性があり、この敵を接近させるわけにはいかない・・・。
更には敵の背後にどでかい小惑星ともいうべき物体のような船?・・・・やつらの母艦らしい・・・が控えている。

「1個中隊で3個師団相当数相手に足止めとか、無茶すぎる!・・・・本部には1時間も前に報告したはずなのに、増援はまだ来ないのか?」ニルセン曹長が思わず叫ぶ――――がその時、突如ニルセン曹長たちの背後、彼らと彼らの母艦の間の空間にひずみが現れ、そこから次々とデトロワ軍正規艦隊の艦艇がワープアウトしてきた。

『オスメイアより各機へ、防衛艦隊が到着した!彼らが戦線を押し上げるので全機一旦帰投せよ!』
母艦であるオスメイアのCPからの指令を聞きながら、ワープアウトしてきたイェルムン級空母がモルギウⅢやゾフィエルⅡを次々と吐き出すように発信させているのを見て、ニルセンはやっと落ち着きを取り戻す事が出来た。
「さて、やっとのこと、旗艦から指示が飛んできたので、帰るとするか・・・・。」
ニルセンは旗艦への自動帰投プログラムを起動させると、シガーバー(電子タバコのようなもの)を点火して煙をくゆらせる。

――――エレミア星系の最も外周に位置するデトロワ領の小惑星リグルスは鉱物資源の埋蔵量が多く、多量に採掘できる為、主にその施設や関連企業の従業員とその家族などが居住しており、軍の守備隊も駐留している。
惑星上に建設されたリグルスシティーとその衛星都市すべてを合わせると、それなりの人口―1億5000万人ほどが生活している立派な有人惑星と言える。
ただ、未だテラフォーミングがされていないため、都市以外は居住には適さず、都市の外では常にLSS-ライフサポートスーツ(宇宙服)を着用しての活動が必要な星であった。
直径も太陽系でいうところの月よりもやや大きい程度だが、重力調整に手間や莫大な費用がかかる事もあり、テラフォーミングや大規模な移民計画などはあるが、中々進んでいないのが現状だ。

そもそもデトロワ本星はそのほとんどを氷と海に覆われている惑星であり、首都も海中にあるという珍しい水系惑星国家なのだが、密閉された各都市の中は常に新鮮な空気と水が供給されており、人々はあまり不自由を感じてはいなかった。
そのため、リグルスにいるデトロワ人たちもそんな生活には慣れっこではあるようだ。
緑や自然を感じたければ、同じデトロワ領である緑豊かなトノスやロドリグへ行けばいいじゃない?と皆考えていたのだろう。
ただデュミナス戦役の前まではトノスもデトロワ領であったが、独立してしまい今ではロドリグだけとなってしまったが。

リグルス駐留のデトロワ軍は駐留軍総司令部を頂点に3つの部隊があった。

一つ目は惑星防衛艦隊―デトロワ軍第2任務艦隊(艦艇数60隻余、随伴艦載機216機)
二つ目は辺境警備艦隊―デトロワ軍第3警備艦隊分艦隊(艦艇数50隻、随伴艦載機100機)
三つ目はリグルス地上軍―デトロワ軍第2野戦軍(陸戦6個師団、機動2個師団、航空機600機、スクワイエル648機、戦闘車両8,000台)

小惑星を防衛する戦力としてはやや過剰に思えるが、トノスを失い工業生産力をこれ以上落とせない事、星系の最外周であり国境としての備えが必要な事、そして何より1億5000万人の市民という人的資源保護の為、特に戦力が割かれている。
工業生産力がかなり高かったトノスはかつてデトロワの兵器廠と呼ばれ人口も35億人いた。
それに比べ、ロドリグは農業や畜産、漁業などの第一次産業が盛んであり人口は10億人、緑は多いが工業生産力がリグルスよりもだいぶ低い為、十分な守備隊の配置が無く、先のBETA侵攻の際には陸上兵力含め戦力不足に陥ったという経緯がある。
デュミナス戦役とそれに続くエレミア戦役で失ったデトロワ連邦の国力と戦力はあまりに大きく、その回復には少なくとも15年以上かかると言われている。
ここへ来て外宇宙からの未知の敵の侵略に対抗する為に、かなりのリソースを割かれ国力復興に大きな痛手を強いられているのだった。

母艦へ戻ったニルセン曹長は、戦況を確認するため格納庫からまっすぐに艦橋(ブリッジ)へと向かった。
途中、艦で面倒を見ている猫が窓の桟にうずくまって外を眺めているのを横目で見て、癒された想いを抱きながら艦橋の扉を開けて中に入る。
猫はニルセンの後ろ姿をチラッと見ると大きなあくびをして、また窓の外へ顔を向けた。
防衛艦隊である第2任務艦隊が戦場に到着してから30分ほどが経っていたが、それまでに敵の艦載機はあらかた撃破されて、艦隊は残った母艦に攻撃を加えつつ包囲しているところだった。
敵艦の砲台は既に沈黙しているらしく目立った反撃はしてこないのだが、攻撃はとても効いているようには見えない。

「どうやら、攻撃しても岩の塊のような艦体構造なので誘爆しないようだな。」モニターを見ていた艦長が誰に言うともなくつぶやいた。
そうなのだ、まるでただの大きな岩の塊に攻撃をしているかのように、周りは少しづつ削れていくのだが、中々破砕する事が出来ないのだ。
そうしているうちに全艦艇に後退命令が出た。
通常攻撃では削りきれないと判断してAD兵器を使う事にしたのだろう。
敵の砲台が生きていれば迎撃されて失敗するかも知れないが、反撃手段が無い今ならほぼ確実だ。
10分後、防衛艦隊の艦艇からガロッグ7が放たれ、鮮やかな白い軌跡を残して収束しつつ敵艦へ突っ込んでいった。
ガロック7が着弾した敵艦は、まばゆいばかりの閃光を上げて大爆発を起こし、大小の岩塊となって後方へと飛散していく。

デトロワ軍の艦艇では皆歓声を上げ、あるものはガッツポーズ、またあるものは隣の兵士と抱き合い喜んだ。
推移をモニタリングしていたオスメイアの艦橋からも大きな歓声が上がり、皆口々に喜びを伝えあった。
そして、猫はというと、ゆっくりとのびをしながら艦橋へと歩き始めた・・・皆が喜んでいる様子には全く興味がないというようなそぶりだった。
だが突然途中で立ち止まり、ふっと何もない窓外の宇宙空間を見て、フシャーと威嚇を始めた。
通りかかった女性士官は、猫は皆がうるさく騒いでいるので、怒っているのだろうと思い、微笑ましい表情を向けながらその場を去っていったのだが、その数日後に女性士官を含む彼らは同じような敵の攻撃が同時多発的にエレミア星系各所で起こっていた事を知る・・・。エスパー猫?・・・・。

公転軌道から言えばデトロワ領が一番外周にあたるのだが、すべての惑星が一列になっているわけではないので、別の方向から侵入してきた敵は別の惑星領へと侵入するものあり、結果的にデトロワ領へは2か所から、デュミナス領へは3か所から、ラファリエス領へは2か所からと合計6方向からの侵入があった。
いずれも撃退して、損害は軽微であったが(軽微とはいえ1000人単位の戦死者は出ている)、ラファリエス軍は情報が錯そうした為に初動がかなり遅れてパトロール部隊を3つ潰されるという比較的大きな損害を受けた。

そして今回の敵は以前のように無防備な降着ユニットで移動して来たのではなく、砲台型生物(超重光線級クラスの上半身)と飛行型生物(新種:エイのようなフォルムに光線級の上半身が合体している)を積載し、明確に武装準備をして侵攻をかけてきた。
この一連の事象はエレミア星系全域の人類に驚きと恐怖をもたらし、軍の増強、敵の策源地の捜索と撃滅を急ぐ声が大きくなっていったのである。
 
 

 
後書き
唐突に猫が出てきましたが、今のところ深い意味は持っていません。 
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