| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十一話 岐阜城にてその十六

「北陸から話があるそうや」
「北陸からか」
「ああ、この度の戦の仲裁をしたいそうだぎゃ」
「そんなん頼んでないぎゃ」
 坂口はこうは言っても中里との一騎打ちを中断していた、これは話を聞く為だ。
「けれどわしは人の話は聞くぎゃ」
「そうか、それは何よりや」
「それで話って何や」 
 中里も一騎打ちに入ろうとしたところで止めて中里に問うた。
「一体」
「一旦綾乃ちゃんのところに行こか」
「そうしてやな」
「話をしよか」
 北陸の申し出を受けてというのだ。
「これから」
「そうしてもらうと何よりです」
 陣羽織を着た翼人も言って来た。
「我等の棟梁もそうして頂けると喜びます」
「一体何の話や」
 そのことについてだ、中里は考えを巡らせた。
「まあそこは話を聞いてからやな」
「そや、とにかく戦を中断してな」
「本陣で綾乃ちゃんも交えてやな」
「話を聞こな」
 こうしてだ、一先ず戦は中断となった。そして北陸の者達は関西と東海双方に使者を送って話をした、それで関西の三人の星達もだ。
 彼等の本陣で話を聞いた、翼人はここで彼等に言った。
「ここは兵を退いて頂きたいのです」
「岐阜城攻めを止めろっちゅうんやな」
「はい」
 その通りだとだ、翼人は棟梁の座にいる綾乃に答えた。
「ここは」
「まあ戦はせんに限る」
 今度は芥川が言ってきた。
「出来る限りな、けどな」
「はい、戦をするには理由があります」
「そや、その理由はわかってるな」
「貴方達にしてもですね」
「ここまで来たら得るもんを得んとな」
 その得たいものについてはだ、芥川はあえて言わなかった。
「引き下がれんで」
「左様ですね」
「こっちもさもないと兵を退かせる訳にはいかん」
 腕を組んでだ、芥川ははっきりと言った。
「岐阜城を攻め取ってそれからも攻める」
「そこを何とかとです」
「そっちの棟梁さんが言うてるんやな」
「左様です」
 その通りという返事だった。
「その詳しい話を棟梁はされたいのです」
「講和してか」
「左様です」
「確かに戦をするよりも話で収められたらええわ」 
 綾乃はあえて芥川と同じことを言った。
「それでな」
「それでは」
「うん、けどな」
 穏やかな表情だが口調はしっかりとしていた。
「うちも引き下がる訳にはいかんと思ってるから」
「そのこともお話されたいとのことです」
「そっちの棟梁さんはやな」
「左様です、お願い出来ますか」
「綾乃ちゃんどないするんや?」
 中里はこれまで翼人の話を聞いているだけだったがここで棟梁である彼女に聞いた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧