夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十一話 岐阜城にてその十四
「そうして攻めるわ」
「わかりました、ほなここはです」
「棟梁の言われる通りにします」
将兵達もこう中里に言う、そしてだった。
中里は鵺に乗って空に上がった、そうして空から稲葉山全体を見つつ鵺に言った。
「ほなやろか」
「ああ、空から思いきり攻めるんや」
鵺も中里に答えた。
「わし等でな」
「芥川もおるしな」
「よお、来たな」
ここでその芥川の声がした、見れば彼も狐に乗って空にいる。
「ほな今から攻めるか」
「そうするか」
「ああ、僕等は空から攻めるさかいな」
それでとだ、芥川は中里にこうも言った。
「自由に攻められる」
「それが利点やな」
「それやったらわかるやろ」
「敵の本丸を一気に攻めるか」
「そうするで」
稲葉山の頂上にあるその三層の天守を見ての言葉だ、安土城や大坂城のそれ程ではないが見事な天守である。
「そして上と下からさらに攻めてや」
「城全体をやな」
「占領する、ええな」
「わかったわ」
「ああ、ほなやろな」
こう二人で話してだ、空にいる軍勢を率いて本丸の上空に向かった。だがその本丸の上空には彼がいた。
坂口だ、空に上がり蜻蛉切と団扇を持って二人を待っていた。
「よお来たぎゃ」
「やっぱりおったか」
「おらんと思ったぎゃ?」
芥川に不敵な笑みで問い返しもしてきた。
「おみゃあさん達がそう思うとは思わんだがや」
「その通りや、絶対に来る思うてたわ」
芥川も不敵な笑みで答えた。
「最初からな」
「そうだぎゃな」
「ほな今から僕等を足止めするか」
「そうだぎゃ、天狗は空でこそ最も力を発揮するぎゃ」
坂口はこうも言った。
「それを見せてやるぎゃ」
「僕も天狗やで」
芥川は坂口にまた返した。
「それも承知やろ」
「ああ、勿論だがや」
「ほな天狗と天狗の勝負やな」
「そしてこっちにはこれがあるだがや」
右手に蜻蛉切、そして左手に団扇がある。坂口はここでは天狗の団扇を見せつけてそのうえで言うのだ。
「天狗の団扇の力見せるぎゃ」
「あれは気をつけるんや」
芥川は坂口の言葉を受けて中里に言った。
「関ヶ原では使ってなかったやろ」
「ああ、蜻蛉切だけやった」
「あの槍は貫けんもんはないし気を放つことも出来る」
「そうした神具やけど、ちゅうねんな」
「あれはあれでかなり強い」
「風を自由に起こして操れるか」
「そや」
そうした神具だというのだ。
ページ上へ戻る