提督はBarにいる。
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世界の米料理・パエリア編(1)
前書き
ノリでパエリア編とか書いちゃってますが、続編があるかは未定ですwww
「はぁ。パエリアねぇ」
「そう、パエリア!」
「TVで見てたらスッゴく美味しそうだったの!ねぇ作ってよ提督~」
とある日の昼下がり、仕事も一段落着いて煙草をふかしつつコーヒーを啜っていると、2人の艦娘が飛び込んできた。照月としおいこと伊401である。詳しく話を聞くと、演習終わりで出くわした2人はそのまま甘い物でも食べようと『間宮』に向かった。そこでクリームあんみつ食べながらTVを眺めていると、スペイン料理を紹介する番組をやっていて、大きな鍋で作っているパエリアがとてつもなく美味そうに見えたのだという。そこで今晩の夕食はパエリアが食べたい!と思った2人、ちょうど配膳しに来た間宮を取っ捕まえ、パエリアを作ってくれとせがんだらしい。しかし、
「パエリアですか?う~ん……実は私、作った事がないので自信はありませんよ?」
という予想外の反応。これには俺も驚いた。しかしそこで諦めないのが潜水艦イチの食いしん坊と、駆逐艦トップクラスの食いしん坊。特に照月の食欲は凄まじい。あのスケベボディを維持している秘密はあの食欲なのだろう……話が逸れた。
間宮さんが作れないならば鳳翔さんだと、既に仕込みの始まっていた『居酒屋 鳳翔』に突撃。女将である鳳翔に土下座する勢いで頼んだらしい。だがしかし、
「パエリアですか……すみません、私も和洋中なら自信はあるのですが、フレンチやイタリアンはちょっと」
と、絶望的解答。更には仕込みを邪魔してはいけません、とやんわりとながらコッテリと絞られしょげかえる2人。しかし2人の頭の中はパエリアで一杯。どうしても食べたいと諦めきれず、最後の望みを賭けて俺の所に来たらしい。
「ねぇ~作ってくださいよぉ提督ぅ」
照月の駆逐艦らしからぬ2つの膨らみが、ムニュッと二の腕に押し付けられる。こんなおねだりをされたら、おっぱい好きの俺としてはグラつく。
「仕方無ぇなぁ……んじゃ今晩な」
「やったね!照月ちゃん」
「うん!」
イェーイ!とハイタッチをかまして、そそくさと執務室を出ていくしおいと照月。さて、昔買ったパエジェーラはどこに仕舞ったっけな……
そしてその日の開店時間。待ちきれないと言った様子のしおいと照月が真っ先にやってきた。俺はまだ仕込みの真っ最中である。
「来たよ提督~!って、あれ?鶏肉?」
「パエリアってシーフードじゃないんですか?」
そう、2人が来たときに俺が切っていたのは鶏肉。
「何言ってんだお前ら、パエリアは寧ろシーフードよりも鶏肉とかの方がメジャーだっての」
「え、そうなの!?」
「だってTVだとシーフードで……」
やれやれ、こいつぁTVに毒され過ぎだな。ちょっと一丁、パエリアについて解説してやるか。
パエリア(地方によってはパエヤ、パエージャとも発音する)ってのは、スペインの米所であるバレンシア地方の名物料理で、米や野菜、魚介類、肉なんかを一緒に専用の鍋で炊き込んだ料理だ。日本で言う所の炊き込みご飯とか釜飯が近いイメージだな。名前の由来はバレンシア地方の言葉でいうフライパンの事だ。バレンシア地方の外にこのフライパンを使った調理法が伝わる内に、調理器具の名前としてではなく料理そのものの名前として浸透していった、って感じかな。
「ふ~ん……じゃあ元々はシーフードは使わないんだ」
「そうらしいな。元は猟師が仕留めた獲物と野菜、米を塩とサフランで炊き上げた猟師飯らしいから」
なので本場仕込みのバレンシア風パエリアは、ウサギの肉か鶏肉、いんげん豆、パプリカ、食用カタツムリなんかの山の幸がメインらしい。
「え、カタツムリ食べるの?」
「そりゃ食べるさ、エスカルゴとか高級品なんだぞ?それにサザエとかの巻き貝だって親戚だしな」
実際、俺の友人はスペイン旅行で本場のパエリアを食べた時に食用のカタツムリだと気付かずに、美味い美味いと食べて後から知らされてリバースした……なんて奴もいたけどな。
「う~……提督、カタツムリは入れないでね!?」
「安心しろ、食用のカタツムリなんざ高級すぎて仕入れられんわ」
そして、何よりのパエリアの特徴がパエジェーラと呼ばれる専用の鍋だ。両側に取っ手があり、平底で浅くて丸いフライパン……パエリアをイメージした時に出てくるあの鍋だ。こいつで具を炒め、米と水、そして米に黄色い色を付けるサフランを入れて炊き上げる。この時、具材を蓋代わりにするってのも大きな特徴だな。ちなみにだが、パエリア通を気取る奴の中には『パエリアの米はパスタ同様、中に芯が残るアルデンテに仕上げる物だ』という輩が居るらしいが、本場バレンシアのパエリア職人(本場にはパエリア専門の職人がいるのだ)に言わせれば芯が残るのは素人の炊き方で、芯が残らず、かといってベチャベチャにもならず、日本のご飯のようにふっくらと炊き上げるのが一流らしいぞ。尚且つ、ソカラ(おこげ)も出来れば最高らしい。
「ふ~ん、勉強になったね!」
「でも話聞いてたらお腹空いちゃった……提督、早く作って~!」
涙目の照月にお願いされちゃあ敵わねぇな。んじゃ、とっとと作るとしましょうか。
《日本風にアレンジ!基本のチキンパエリア》※分量4人前
・米:2合
・鶏のぶつ切り肉(無ければモモ肉):400g
・玉ねぎ(大):1個
・にんにく:1片
・パプリカ:1個※またはピーマン2個
・サラダ油:大さじ3
・コンソメキューブ:3個
・塩、胡椒:適量
・パセリのみじん切り:あれば
・サフラン:あれば少々
・レモン:1/2個
さて、作っていこう。まずは基本のチキンパエリアだ。本格的な作り方も出来なくは無いんだが、今回は一般家庭でもお手軽に出来るやり方で行かせてもらう……昔気まぐれで買ったパエジェーラが見つからなかった、ってのは内緒だ。
まずは米だな。2合を普通にご飯を炊くように研いで、ザルにあけて10~15分位置いて水気を切っておく。
「パエリアって日本のお米でいいの?」
「ん、なんでだ?」
「だって炒めるならタイ米とかの方がパラパラになるんじゃないの?」
「しおい、そりゃピラフとかチャーハンの場合な。イタリアのリゾットとかパエリアに使われる米は短粒種って呼ばれる米でな。むしろ日本の米の方が近い種類なんだ」
タイ米に代表される長粒種だと粘り気が足りないらしいからな。米の水気を切っている間に、具材を刻んでいく。玉ねぎとにんにくみじん切り、パプリカは2cm角の角切りに。鶏肉は少し大きめのぶつ切りに切ったら、塩、胡椒をまぶす。
フライパンにサラダ油大さじ1を引いて熱し、鶏肉を炒める。強火でしっかりと炒めて、焼き色が付いたら一旦取り出しておく。
同じフライパンでサラダ油大さじ2を引いて熱し、玉ねぎとにんにくを炒める。玉ねぎが透き通ってきたら米とあればサフランを加え、全体に油が回るように炒め合わせる。
コンソメキューブを熱湯600ccに入れて溶かし、スープを作る。広口で底の浅い耐熱容器に炒めた米を入れ、焼いた鶏肉、パプリカを散らしてスープを注ぐ。塩、胡椒を振ったら180℃に余熱したオーブンで30~35分程焼く。汁気が無くなったら取り出して、全体をかき混ぜて水気を均す。皿に盛り付け、パセリを散らしてレモンを添えたら完成。
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