提督はBarにいる。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
肉+夏野菜で夏を乗り切れ!・その4
「『ナスと豚肉の蒲焼き丼』、お待ち」
「うっはぁ~……これはまた」
短くそう言うと、よくタレと山椒の絡んだナスの蒲焼きにかぶりつく彼氏君。ジュワッと染み出してくるナスのジュースに、甘辛いタレと山椒の辛味がアクセントを加える。当然のように、甘辛い醤油ダレが白い飯に合わないハズが無い。美味い美味いとかっこんでいく様子は、さながら食べ盛りの男子高校生のようで、清々しさすら感じる。
「ふぉれちょうおいふぃいわていふぉふ!」
おぉう、こっちにもいた。というか足柄、お前オンナなんだからあんまりがっつくなよ。そんなんだから残念系美人とか言われんだぞ?なんて事を考えていると、完食していた彼氏君がニコニコしながら丼をがっつく足柄を眺めていた。
「……何してんの?」
「いやぁ、ああいう無邪気な足柄さんも可愛いなぁって」
恋は盲目というか何というか……あんな姿でも好きな相手なら可愛く見えるモンかね。ウチは遠慮のねぇ嫁さんばかりだからな、そんな感情ハナからねぇや。ケッ。
ふむ、彼氏君の食欲を見る限り体調は戻ってきたらしい。そろそろ肉オンリーのレシピも出してみるか。実は足柄に頼まれてから漬け込んで、仕込んでおいたのがあるんだ。後は焼くだけにしてあるから、それを出してみるとしよう。
《バーベキューにも!スペアリブのパイン醤油ソテー》※分量4人前
・豚スペアリブ:8本(800g位)
・パイナップル:60g
・おろしにんにく:小さじ1/2
・醤油:大さじ1.5
・ウスターソース:大さじ1
・塩、胡椒:少々
・サラダ油:適量
さて、作っていこう。まずはスペアリブを漬け込むタレを作る。パイナップル(缶詰めじゃなくて生の奴な)を細かいみじん切りかおろし金ですりおろしておく。パイナップルの風味と甘味を付ける目的と、その酵素で肉を柔らかくする為に入れている。パイナップルの下準備が出来たら、にんにく、醤油、ウスターソース、塩、胡椒と混ぜ合わせて、厚手のビニール袋に入れておく。
お次はスペアリブ。といっても、肉に2~3本切れ込みを入れるだけなんだがな。肉に火が通りやすくするのと、味が染み込みやすくなるように入れている。
肉に切れ込みを入れたら、タレを入れておいたビニール袋に入れて、しっかりと揉み込んでおく。揉み込んだら冷蔵庫で2時間~1晩寝かせておく。
後はフライパンに油を引いて熱し、スペアリブの汁気を軽く切って並べて焼いていく。焦がさないように裏返したりしつつ、強火で8~10分程焼けば火が通るハズだ。もしも心配ならビニール袋に残ったタレを掛けて、蓋をして蒸し焼きにするといいだろう。
「あ~……醤油の焦げるいい匂い♪」
「ホント、この匂いは堪んないわぁ」
まぁな、焦がし醤油の香ばしい匂いはそれだけでオカズになりそうな破壊力がある。待ちきれない、といった様子の2人に、焼けたスペアリブを盛り付けてやる。
「ホラよ、『スペアリブのパイン醤油ソテー』だ」
「「いただきます!」」
まだ湯気の立つスペアリブを、アチアチ言いながら持ち、ガブリ。迸る肉汁、口一杯に広がる肉の味。それを引き立てるスパイスの辛味と醤油の塩気、そしてパイナップルの甘味。それらが一体となって、美味いと舌に教えてくれる。
「美味いなぁ……」
「こういう骨付き肉って、肉を食ってる!って気分になるのよね」
まぁ、それは同意するが……足柄、口の周りテッカテカだからとりあえず口拭け。
さて、大分彼氏君も腹が満たされただろうし、そろそろお開きだろうと思うんだが……どうにも様子がおかしい。妙にそわそわしてるし、しきりに右ポケットに入った何かを気にしている。ははぁん、『勝負』かけるつもりか?どれ、それなら俺も手助けしてやるか。
「さて、そろそろ腹も一杯になってきたろ?〆の一品と行きたいんだが……どうだい?」
「良いですね、何を作るんです?」
「ナスを使った中華風カレーだ!」
《提督秘伝!ナスの中華風キーマカレー》※分量2人前
・牛挽き肉:300g
・にんにく:1片
・生姜:1/2片
・ナス:1本
・ピーマン:2個
・カレー粉:大さじ1
・塩:少々
・サラダ油:適量
・ナンプラー:小さじ1
・オイスターソース:小さじ1
・中華スープの素:小さじ2
・砂糖:小さじ1
・水:100cc
・水溶き片栗粉:小さじ3(片栗粉小さじ1+水小さじ2)
「何だか麻婆茄子作るみたいな材料ね?」
「あぁ、これは俺が学生の頃に中華料理屋でバイトしてた時に作ったメニューだからな」
あの時は賄いで作ったんだが、これが存外好評でな、そのまんま店の看板メニューになっちまったってのは笑い話さ。そんな話はともかく、さっさと作るとしよう。
ナスはヘタを取り、一口大の乱切りに。ピーマンは縦半分に割ってワタを取り、2~3等分に切る。生姜、にんにくはそれぞれみじん切りに。
中華鍋に油を熱し(分量外)、170℃位まで温まったらナスとピーマンを油通しする。ナスはうっすらと狐色になるくらいまで揚げ、ピーマンは緑が鮮やかになるまで揚げておく。ナスとピーマンは仕上げに入れるから、そのままバット等に上げて油を切っておく。
中華鍋の油を別の容器に移し、極力減らしたらにんにく、生姜を炒める。香りが出てきたら牛肉を加えて更に炒める。牛肉の色が変わったらカレー粉と塩を加えて混ぜ、更に炒めていく。
カレー粉の香りが立ってきたら、ナンプラー、オイスターソース、中華スープの素、砂糖、水を加えて軽く煮詰める。水溶き片栗粉を加えてとろみを付けたら、ナスとピーマンを加えて混ぜれば完成だ。賄いメニューだから手早く出来るのも魅力だな。慣れてくれば15分位で出来るぞ。
「さぁ出来たぞ!特製中華風キーマカレーだ」
「おぉ~!」
「これは間違いなく美味しいわね!」
さて、こっからは俺はお邪魔虫だからな、とっとと退場させてもらうぜ。
「あら、どこ行くの提督」
「あ?便所だ便所。ついでにヤニ切らしちまったから、買ってくらぁ」
足柄にそう言い残し、店を出る。そしてすかさずある人物に電話。
数ヵ月後、とあるホテルの大広間。俺を含め、多数の艦娘が着飾って終結している。皆が注目しているのはスクリーン、そこには、足柄と彼氏君が映し出されている。
「足柄さん……いや、足柄」
「え、どうしたのよ急に?改まったりなんかして」
彼氏君、ここで右ポケットから小箱を取り出した。当然『アレ』だよなぁ?
「え、嘘。これって……」
「うん。大分前から手作りしてたんだけどね?漸く出来上がったんだ」
そこに収まっていたのは、ダイヤの指輪。そう、彼氏君は暫く前から足柄に渡す指輪を手作りしていたらしい。当然仕事が終わってからの作業だから寝不足と過労になり、作っているのを気付かれたくないが為に足柄を遠ざけた、ってワケさ。
「足柄さん、僕は貴女を愛しています。結婚してください」
「だって、私艦娘だよ?いつ死んじゃうか解んないし……」
「大丈夫ですよ、あの提督閣下が簡単に沈めるような作戦たてませんよ」
当たり前だ、寧ろ足柄の発言が腹立つわ。
「それに、私貴方よりかなり歳上に見えるよ?」
「そんなの気にしませんよ、それにホラ、俺って草食系だから引っ張ってくれる姉さん女房の方がいいんです」
「ワガママ一杯言うよ?」
「もちろん、頼られてるみたいで寧ろ嬉しいです」
それまで堪えていた涙が、足柄の目から溢れ出す。そしてこのタイミングで、荘厳なBGMが流れ出す。※ケッコンカッコカリのテーマを脳内再生してください
「お前の編集か、青葉」
「どうです?グッドタイミングでしょ!」
えっへん!と胸を張る青葉。悔しいが、GJと言わざるを得ない。
「もう一度言います。足柄さん、僕と結婚してください」
「はい……よろしくお願いいたします!」
足柄が号泣しながら返事をした所で、映像はプッツリと切れた。披露宴会場が再び明るくなり、ウエディングドレスを着たまま赤面し、まな板の上の鯉のように口をパクパクさせながらプルプルしている足柄の姿が見える。
俺は退場したよ?邪魔しないように。でもな、その場を撮影しないとは言ってない。店を後にした俺は、青葉に連絡を入れた。
『ウチの店の隠しカメラを起動してみろ、面白い物が録れるぞ』
ってな。そして全てを察した青葉に協力させて、足柄と彼氏君の披露宴でプロポーズシーンを大暴露する、というドッキリを仕掛けたのだ。フハハハハ。
『足柄さん、結婚おめでとぉ~!』
艦娘一同が声を揃えて祝福の言葉を投げ掛け、クラッカーが鳴らされる。
「んにゃああああああぁぁぁぁぁ!」
という妙に可愛らしい花嫁の絶叫は、皆の声に紛れてしまったようだ。
ページ上へ戻る