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魔法少女リリカルなのは ~黒衣の魔導剣士~ 外伝

作者:月神
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黒衣を狙いし紅の剣製 05

 あたしは今翠屋に来ている。
 翠屋と言ってもなのはの両親が経営している地球の方の翠者じゃねぇかんな。ミッドチルダに出来たディアーチェが店長の翠屋だ。
 今日は休みだけど、さすがに地球に行かねぇ……というか、何かあれば呼び出されるから行けねぇって言った方が正しいか。前もって連休とか申請してたら管理局もよほどの事態が起きねぇ限り呼び出したりはしないだろうけどな。

「貴様が来るというか……貴様だけが来るというのも珍しいものだな。迷わずに来れたか?」
「あたしらだって社会人なんだ。いつでも家族一緒ってわけにもいかねぇだろ。つうか、あたしを子供扱いすんじゃねぇ。てめぇよりも遥かに年上だっつうの」

 見た目が昔から変わらねぇというか、人間じゃねぇから成長しねぇけどよ。
 まあ……今更デカくなっても困るんだけどな。この身体に慣れちまってるし。それに……シグナムみたいに乳魔人みたいになっても困るだろうからな。
 昔はバカにするというか、からかったりもした気がするが……シグナムの奴、よくあの胸で剣とか振れるよな。女らしいって点では羨ましいとは思うが、戦闘のことを度外視してもすげぇ邪魔そう。
 まあ……あたしの知り合いは基本的に女らしい奴ばっかだけど。前になのはがフェイトやはやてより胸が小さいって言ってた気がするが、てめぇくらいあれば十分だろうに。
 あたしくらいだったら言ってもいいだろうけどな。
 子供と変わんねぇあたしは、胸がなくても別におかしくねぇ。この成りで胸だけがデカくてもアンバランスつうか変だ。けどなのはの背丈であたしの胸なのは……正直可哀想に思える。周りの連中がデケェのばっかだし。

「実際はそうなのだろうが……貴様は小鴉やショウの妹分という感覚が強いからな。言ってはなんだが、見た目的にも上とか思いにくい」

 それはそうだろう。
 昔のあたしは今よりも考えが子供だったし、欲望に素直だった。まあ今でもその名残りはあるんだが。はやての料理とかショウのお菓子とか見たら食べたいって思っちまうし。

「怒らせてしまったか?」
「いや。別に嫌味で言ってるわけじゃねぇのは分かるし、露骨にガキ扱いされないなら構わねぇよ。……それよりまだか?」
「そう慌てるな。もうすぐ出来る」

 ホントかよ……って、まだ注文してから数分も経ってねぇんだけどな。
 ただここのお菓子はショウにも負けないっていうか、ショウのよりも美味いもんが多い。さすがは桃子さんの弟子って感じだ。
 そんなことを思ってる間に頼んでいたシュークリームとキャラメルミルクが出てくる。
 甘いものと甘いもの……子供じゃないとか言ってなかったか?
 と思った奴、細かいことは気にするんじゃねぇ。あたしは見た目はガキのように見えても社会人として日頃生活してんだ。多少なりとも疲れはある。疲れた時は甘いもんがほしくなるだろ。

「む……!? 思ってた以上にギガうまだな! あたしとしてはショウのよりも美味いぞ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいが、我はこれが仕事だからな。あやつよりも下だとプロとして店は出せんさ」
「まあそれはそうなんだけどよ……今のくらい素直に受け取っても罰は当たらねぇと思うぜ」

 大体そのへんの店よりも美味いお菓子を作るショウの方がおかしいわけだし。
 技術者の仕事がメインとはいえ、魔導師としても仕事してんだし。全部努力の賜物なのは理解してるけど、色んな方面で優れてるってのは凄いよな。あたしなんて魔法関連しか出来る気しねぇし。ゲートボールとかは出来るけど。
 にしても……ディアーチェって日本人でもねぇのに謙虚というか、これだけ美味いもん作れても満足してねぇんだろうな。まあ自分でプロとか言うあたりプライド持ってるんだろうけど。ちなみにあたしはそういう奴嫌いじゃない。むしろ好きだ。

「そういや……はやて経由で聞いたけど、何かショウにストーカー居るんだって?」
「うむ。と言っても……姿を確認できたわけではないがな。居るかもしれんという話だ」
「その話詳しく聞かせて!」

 あたしでもなければディアーチェでもない声が店内に響いた。
 誰かと思って意識を向けると、真剣な顔をしたフェイトがこちらに向かって歩いて来ている。制服を着ているということは休憩にでも立ち寄ったのかもしれない。

「フェイトよ、店に来るなとは言わんが唐突に大声を出しながら現れるな。心臓に悪いではないか」
「え、あ、ごめん」
「まあまあ、仕方ねぇだろ。フェイトがあいつのことで熱くならねぇことはねぇんだから」

 あたしの知る限り、ガキの頃からショウに惚れてるしな。
 だけど……一向に進展しねぇよな。何度か一緒に海水浴とか祭りとかに行った覚えはある。そのときは割と大胆な恰好したりして攻めるのに、あいつを目の前にしたらダメになるからな。
 うちのはやてとはそのへんが大違いだ。……まあはやての奴も肝心なとこまでは行けねぇんだけどな。あっちから来られたら純情なとこが出ちまうし。

「わ、私べべべ別にそういうんじゃ……!?」
「それだけ動揺したら認めてるようなもんだろ。ったく……心配なのは分かるけどよ、あんまり過保護なのも良くないと思うぜ。あいつも子供じゃねぇんだし」

 子供でもフェイト並みに心配性で過保護な奴を相手したら堪らなくなる時があるだろうけどな。
 優しさから来てるものだってのは見てたら分かるんだが。でも人間誰しも機嫌の浮き沈みってのはあるもんだし、あそこまでやられると爆発しちまう時もあるに違いない。

「ディアーチェもそう思うだろ? って……ディアーチェも似たようなもんか」
「こやつと一緒にするな。確かに我も似たようなところはあるが、こやつほど過保護ではない」
「……ユーリやレヴィとかには割と過保護だと思うけど」
「だとしても……貴様ほどではない」

 おいおい、大丈夫とは思うがこっちは休みなんだからもっと気楽に話そうぜ。知り合いの言い争いなんて見たいもんじゃねぇんだし。

「まあ良い。見たところ貴様は仕事の合間に来たのだろう。仕事でヘマをされても困るからな。聞きたいことには答えてやる」
「ディアーチェ……ありがとう。えっと……注文もいいかな?」
「ここは喫茶店だ。高収入の人間が水だけで居座られても困る」

 素直に肯定すればいいってのに……ま、これがこいつらのやりとりなんだろうし気にしないでいいか。ピリついた嫌な感じも一瞬だけだったし。
 そのへんがあたしとは違うところだよな。今ではそう多くねぇけど、シグナムが本気で言い争いになった時は下手したら模擬戦レベルの荒事になるし。はやてとかが仲裁してくれたらいいけど……割とはやても模擬戦なら許すところがあるしな。
 時として譲れんこともある。下手に仲裁するよりも全部ぶつけた方がお互い納得できるやろ。
 みたいな感じで。あたしとしては譲れない時はそうするけど、バトルマニアのシグナムとあんまり模擬戦とかしたくねぇんだけどな。あいつ熱くなりやすいし。隣に居る金髪も似たようなとこあるけど。
 そんなことを思っている間に、フェイトの元にシュークリームとコーヒーが出される。彼女の容姿も相まってはたから見れば実に栄えて見えそうだ。
 話したらあれだけどな。つうか……戦闘中は凛としてんだから普段からそうしてればいいだろうに。まあそれはそれでフェイトらしくなくなるけど。

「それで……何を聞きたいのだ?」
「ショウの周りで起きてること全部」
「何つうか……それだけ聞くとフェイトがストーカーみたいだよな」
「ぅ……今日のヴィータ、何だか意地悪だよ」

 別に意地悪で言ってるつもりはねぇんだけどな。思ったことを素直に口にしてるだけで。
 実際にやってるかもしんねぇしな。街で偶然見かけた時とか自分から積極的に話しかけに行くのは恥ずかしい。でも気が付いてほしい。そうこうしてるうちに尾行して……なんて流れが割と想像できる奴だし。ストーカーとは少し違う気もするけど。

「わりぃわりぃ。でもよ、聞いた話じゃそのへんのことはティアナが調べてんだろ? お前のところには真っ先に報告行くんじゃねぇのか?」
「それはそうなんだけど……今のところ大丈夫ですって連絡来たから何もなくて」
「まあ仕方あるまい。元々居るのかも分からんのだ。それに居ったとしても、あやつも今ではそこそこ名の知れた人物になっておる。調べるとなると時間も掛かるだろう」
「それに……フェイトは下手に報告すると仕事が手に付かなくなりそうだからな。まあ報告がなくてもこんなになってんだからどっちもどっちなんだろうけど」

 そこまで言って気が付いたが……やっぱりフェイトが肩を落としていた。
 意地悪をするつもりはなかったのでまた怒られるかと思ったが、今のに関しては自分でも理解しているらしい。理解しているのなら直せばいいのにと思わなくもないが、簡単に直るのならとっくの昔に直っているだろう。

「そういや……ショウに親戚居たんだってな」
「うむ。確か名前はナハトモーントと言っておったな。父親と娘のふたりらしいが……よく知っておったな」
「つい先日、はやてがそこの娘と会ったみたいだからよ。礼儀正しい良い子って言ってたぜ。見た目も可愛いらしいし」
「そうなんだ。ティアナからは親戚の話は聞いてたけど……可愛いんだ。私も会ってみたいかも」
「ショウの親戚だし、それを抜いても子供好きなのは分かるが……やめといたほうがいいと思うぞ」
「え、何で?」
「だってよ……お前って割とやきもち妬く方だろ。聞いた話じゃそいつショウのことお兄ちゃんって呼んでるらしいし、抱き着いたり好きとか普通に言ってるらしいし」

 まあやきもち妬いてショウに対してツンケンするなんてことはしねぇだろうけど。フェイトはそんなことして嫌われたらどうしようって思うタイプだし。
 ちなみに余談だが、この話をはやてからされた時……あたしは声を荒げたよ。だってよ……

『ヴィータ、何そんな呑気な顔しとるんや!』
『え、いや……何ではやてが慌ててんのか逆に分かんねぇんだけど』
『そんなん決まっとるやないか……ショウくんをお兄ちゃん呼びする子が現れたんやで。しかも愛情表現も素直やし……このままじゃヴィータの居る妹ポジションをその子に取られてまう!』

 なんてことがあったんだ。
 別にあたしはあいつの妹ではないし、そこを誰かと争うつもりもねぇ。あいつから冷たくされたら……それはそれで嫌だけど。これまでの過ごし方があれなだけに兄貴分というか、頼ったり甘えたりしてる部分はあるし。

「べ……別にそんなにやきもち妬いたりしないよ。ヴィヴィオと同じ年代にそんなことしてたら大人気ないし」
「どうだかな。エリオやキャロのことでショウに対して嫉妬してたりしてたし、素質はあると思うけど」
「もう、そんな素質いらないよ。というか、今日のヴィータは本当に意地悪だね。はやてから悪影響受けすぎ」

 いや、別にあたしはからかってるつもりはねぇんだが。だからはやてからってよりは……多分ショウの方だと思うぞ。あいつって身内には割と言葉選ばないところあるから。

「おいおい、そんなにむくれるなよ。もう大人なんだから。それに……あたしはあたしなりに情報提供しようとしてんだぜ」
「え……」
「その娘……クロエとか言ってたな。まあ名前はそこまで重要でもねぇんだが、聞いた話じゃ殴られたような跡があったらしいんだ」

 その話詳しく。
 と言わんばかりにフェイトの顔つきが変わる。事件性があると分かると表情が変わるあたり、一種の職業病だよな。まああたしも任務とか教導ってなったらこんな風に変わってんだろうけど。

「鈍器で殴られた、とかそういうひどいもんじゃなかったらしいが……案外その親子上手く行ってねぇのかもな。母親もいねぇって話だし」
「そっか……でも気になるね。しつけの一環で叩いたりしたのかもしれないけど……あまりひどいようなら保護するべきだろうし」
「まあな。でもよ……ヴィヴィオと同じ年代ってことは思春期を迎え始めててもおかしくねぇ」

 女の子は早熟って言われてるらしいし。キャロは何ていうかなのはに似て鈍感なところもあったし、今もそんなに変わってないみたいだが。ヴィヴィオは大分変ったしな。
 礼儀正しくなったってのもあるが、色恋にも興味持ち始めてるみたいだし。
 まあ自分のよりはパパ達に関することみてぇだが。うちの主も頑張ってるが、いったい誰があいつの隣に居座ることになるんだか。本音としてはうちの主に居て欲しいが……あんまり他人が口出すことでもねぇからな。シャマルみたいに口出しして怒られるのも嫌だし。

「母親もいねぇ環境ならケンカのひとつやふたつありそうだけどな。世の中ヴィヴィオ達みたいに聞き分けの良い子供ばかりでもねぇし」
「それはそうだけど……でもやっぱりケンカは良くないよ。何でも素直に聞いてくれるのは嬉しいけど、もっと我が侭言ってほしいと思ったりするときもあるし」
「フェイトよ、前々から思っておったのだが……貴様は結婚には向かなそうだな」

 尊大な態度や口調だけど良心の塊みたいなあのディアーチェが悪口を……言っちゃなんだが少し面白くなりそうだ。やばくなったら止めるけど、それまでは見守っとくか。

「ディアーチェまで意地悪なの……」
「いや、別にそういう意味で言っておるのではなくてだな。貴様は自分で認めるほどの過保護かつ心配性であろう?」
「それは……そうだけど」
「それに貴様の仕事は時として長く家を空ける。家庭を持つだけならともかく、子供も産めば今よりもあれこれ考えるようになるだろう。専業主婦になれば問題ないかもしれぬが……貴様は力があるが故に仕事をやめることも躊躇うだろうからな。そういう意味で向いておらんと言っておるのだ」

 まあ聞いてた限り正論だな。
 フェイトの仕事で救われる人間は多いだろうし、フェイトもそれを望んでいる。子供が出来たら今以上にあたふたするようになりそうだが、守るものがある人間は強い。そういう意味ではプラスに働く可能性もあるだろう。
 けど……結婚相手が出来た奴じゃないとダメだろうな。
 すれ違いから離婚なんて可能性だってあるわけだし。管理局の仕事は大きな括りでは公務員だろうが、拘束時間が長い仕事もあるし、危険な任務もある。互いに仕事を尊重できる関係じゃないと上手くいかねぇだろうな。
 まあそれに関しては……

「散々あれこれ言ったあたしが言うことでもねぇけどさ、あんまフェイトいじめてやんなよ。結婚に向かないって点じゃなのはやはやてだって一緒なんだから。お前やシュテルとかもだけど」
「我も入るのか……他の者とは使える時間も違うのだが」
「そうだよ。それ以外でもはやてやディアーチェは家庭的だし、シュテルも凝り性なところはあるけど一通りできるよね。なのはも昔はともかくヴィヴィオと暮らすようになってからは家事全般上手くなったし……」
「いや、そういうんじゃなくて……別に能力的には問題にしてねぇよ。ただお前らってはたから見たら美人で性格も良くてエリートだろ? それで怖気づいちまう男も多いだろうし、局で働いてる連中に関しては人間が出来た奴じゃないとすれ違いから破綻とかしそうだしな」
「ディアーチェは? ディアーチェは局員じゃないし」
「ディアーチェはあれだ。口調とかはともかくお前らの中で最も完璧だし、求める理想も高い。まあそれは自分にだけかもしんねぇが、相手側が自分はこれだってもんがないと押し潰される気がする。そういう意味で向いてねぇ」

 何であたしが恋愛相談みたいなことしてんだろうな。その手の経験なんて皆無だってのに。
 慕ってくれる野郎どもはいるが、あれは上司とかに対するやつだからな。まああたしみたいな成りが好きな奴ってそうはいねぇだろうけど。
 それに……人間の姿はしてるけど、人間と違うところも多いしな。怪我をしてもはやてから魔力もらえば人よりも早めに回復するし。まあ……大分ガタが来てんのか、傷の治りも遅くなってきてんだけど。
 でも……それでいいんだよな。
 はやての次の主なんてあたしを含めてヴォルケンリッター達は考えてねぇし。それに……人間と同じ身体になってきてるようなもんだからな。傷の深さで治る早さも変わってくるし、場合によっては死ぬ。兵器として生きてたあの頃に比べたら……いや比べられないくらい幸せなことなんだし。

「まあそもそもの話なんだけどよ……そういうの抜きにしてもお前ら一途過ぎっからさ。他の男も寄りづらくなってるし、寄ってきたところで結果は見えてる。いつまでも今の関係が続くとは限んねぇんだから……まあ後悔のないようにしろよ」
「ヴィータ……」
「今日の貴様は……その、何というか大人だな」
「だから子供扱いすんじゃねぇ」

 お前らよりも遥かに長い時間生きてるっつうの。あの頃を生きてたと言っていいかは微妙なとこだが。
 というか……ふたりにお前らショウのこと好きだろって暗に言った割に反応が薄いな。あたしが普段こういうこと言わないからか?
 それとも別のことに意識が向いてやがんのか……何か今日のあたしはどうにかしてる。はやての味方だけど、何つうか発破を掛けたくなってるし。

「ちなみに……うちの主は時折あいつとデートしてっからな」
「え……ヴィータ、その話もうちょっと聞かせて!」
「べ、別に羨ましいと思ってはおらんが小鴉はすぐ人に迷惑を掛けるからな。今度注意するためにも知っていること全て話せ!」

 え、えっと……このふたり怖ぇんだけど。
 あいつのこと好きなのは知ってるし、はやてに対して思うところもあるのは分かるけど……そんな鬼気迫る顔をしなくてもよくね?
 別にあたしが悪いわけでもねぇし。大体あたしははやての味方なわけだから。見ていらんねから少し発破掛けるような真似したけどよ。でもそれは結果的によりはやてが積極的になればいいかと思ってやったこともであるし。というか

「お、落ち着けよ。別に話すのはいいが……フェイト、お前仕事の合間に来てんだろ? 時間の方はいいのか?」
「……大丈夫」
「ホントかよ?」
「飛ばせば間に合うからもう少し行ける」

 いやいや、お前取り締まる側だろ。飛ばせばって……それは法定速度ギリギリって意味だよな。そこを違反するとかじゃないんだよな。

「そ、そうか……休憩でここに立ち寄るくらいならショウのとこに直接行けばいい気もするが」
「いきなり行ったら迷惑だよ。それに……ショウ達もここで休憩することあるらしいし」

 そういう乙女な顔はあたしの前じゃなくてあいつの前でやれよ。
 昔からそういう顔は何度か見てるかもしんねぇけど、あいつだって鈍感ってわけじゃねぇんだ。お前があと1歩踏み込めば、恥ずかしがってるだけじゃなくてその先の感情まで考えるだろうに。まあその1歩が踏み出せないから現状なわけだが。

「じゃあショウもここに呼ぼうぜ。あたしははやてから聞いただけだし、あいつから聞いた方が詳しいこと分かるだろうからよ」
「あいにくだが、あやつは今日来客があると聞いている。それに割く時間もあるから今日は夜遅くまで研究所から出られんそうだ」

 な……何か外堀を埋められていってる気分だ。
 おかしい。せっかくの休みのはずなのに……全然気が休まってる気がしない。下手したら任務とかよりも精神的に来るものがあるぞ。

「さあヴィータ」
「時間もあまりないし、ちゃっちゃと話して」

 あ、あたし……今日無事に帰れっかな。


 
 

 
後書き
 読んでくださってありがとうございます。ひとつご報告したいことがあって書かせてもらいました。

 この外伝に関することなんですが、今やっている紅剣編はVivid編から1年ほど前の時間軸で書いています。なので紅剣編が終わったらVivid編に至るまでの話をもう少し書いてみようかなと思ってる今日この頃です。
 Vivid編では世代交代もしてますからそこに至るまでの大人組の心情とかを知っていた方が想像もしやすいと思いますので。子供たちの視点で書くことが多いでしょうから。
 なので読みたい話や読んでみたい人物の組み合わせなどがあれば教えてもらえると参考になります。

 
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