夢幻水滸伝
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第十話 関ヶ原の夜戦その二
「宜しいですね」
「はい、ご命令通りです」
「そうさせて頂きます」
「そして術を仕掛ければ」
「我々はすぐにですね」
「本陣に戻ります」
そうすれば即座にというのだ。
「私も術を使いますので」
「わかりました」
「それではそうしましょう」
「では、ですね」
「これより」
「お願いします」
雅はその官服の上に黒い服を外套の様に着込み夜の闇の中に紛れている。それは他の者達も一緒だった。
そしてだ、術を使うと敵軍が乱れだしたのを見てだった。会心の笑みを浮かべ他の者達を連れて姿を消した。
関西の軍勢は乱れだした、それは最初一部だけだったが。
法螺貝が鳴った、その法螺貝の音は。
「攻めるのか!」
「敵を攻めよというか!」
「既に動いている者達がおるぞ!」
見ればそうだった、既に前に出ている者達がいるがそれが錯乱してでのことであるのは彼等は気付いていない様に見えた。
「遅れるな!」
「わし等も攻めるぞ!」
「敵の本陣は山にある!」
「そこに行くぞ!」
こうしてだ、彼等は一斉に東海の軍勢の本陣に向かった。ここでだった。
坂口は夜目に彼等の動きを空から見てだ、強い声で言った。天狗であるのでそれで空を飛ぶことも出来るのだ。
「はじまったぎゃ」
「はい、敵が来ました」
「こちらに攻めてきましたね」
「陣形も何もありません」
「ただ攻めてきているだけです」
周りの翼人達も言う。
「ではです」
「このままですね」
「手筈通りですね」
「敵を迎え撃つ」
「そうしますか」
「そうするだぎゃ、本陣に戻るだぎゃ」
確かな声でだ、坂口はまた言った。
「そしてわしも攻めに加わるぎゃ」
「わかりました」
「それでは」
周りの者達も頷き彼等は本陣に戻った、そのうえで敵を待ったが。
関西の軍勢の先頭には中里がいた、彼は自らが乗る鵺に対して問うた。山の中を上に上にと向かって駆けながら。
「これからやな」
「ああ、わし等が出鼻挫いてな」
「そこからやな」
「先頭になって突っ込むで」
「わかってる、僕も刀から衝撃波と雷出すけどな」
「わしも吐くわ」
その特別なそれをというのだ。
「そうするわ」
「わかったわ」
「息を合わせてやるで」
鵺は自分の背で既に両手に一本ずつ刀を持ち攻める用意に入っている中里に言った。
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