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大淀パソコンスクール

作者:おかぴ1129
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色々な意味で予兆
  昼

「これ……よかったら、みなさんでお召し上がり下さい」

 今日、他の生徒さんの誰よりも早く来校した神通さんは、開口一番そう言い、両手で抱えた大きな荷物の包みを開いた。包みの模様が唐草模様なのは、神通さんの趣味なのだろうか。それはまぁいい。

「これは……!!」
「貴公……ッ!!」
「お、美味しそう……です!!」

 俺達の前に神通さんが広げたもの。それは、つぶあんときなこの、たくさんのおはぎだった。

「お口に合えばいいのですが……」
「てことはこれ、手作りですか?」
「ええ……」
「なんと……貴公がこれを……ッ!」
「え、ええ……」
「で、では早速……!!」

 誰よりも早く手を伸ばしたのは、神通さんの元同僚にして友達の大淀さん。こういう時、本人の友達がいるととても助かる。なんせ、最初の第一手は遠慮しがちで、誰もが手を出すに出せない状況に陥るからだ。その点、神通さんの友達の大淀さんは強い。彼女は迷うことなくつぶあんのおはぎに手を伸ばし、両手で上品におはぎを食べ始める。

「んー……」
「……」
「どうですか? 作ったのは久々なんですが……」
「……ん!!」

 ……あ、大淀さんのメガネが光った。続いて大淀さんは、おはぎを口に咥えたまま一度姿を消し、電気ケトルにお湯をいっぱい入れて帰ってきた。そのまま急須にお茶っ葉を入れ、紙コップにお茶を注ぎはじめる。おはぎを口に咥えたまま。

「大淀さん? どうしたんですか?」
「ふぉふぉをふぅんふぃふぃふぁふぇふぇふぁ! おふぁふぃにふぃふふぇいふぇふ!!」

 なんだ……この大淀さんにあるまじき、はしたない光景は……必死に俺達に何かを伝えようとしている大淀さんだが、口におはぎを咥えたままなので、彼女が何を言っているのかさっぱりわからない。

「どうやら神通のおはぎは、こちらもお茶を準備せねば失礼にあたるほど、うまいらしい」
「ソラール先輩、今のが分かるんすか!?」
「では俺も……」

 ソラール先輩もつぶあんのおはぎを手にとって、こちらに背を向けて神通さんの方を見ながら、もぐもぐとおはぎを食べはじめている。

「……うまい! 大淀が大急ぎで今お茶を淹れている理由も分かる。これは、相応の姿勢で望まねば失礼にあたるほどにうまい!」
「そんな……そんなに喜んでいただけるだなんて……!」
「これだけうまいおはぎを作ることが出来るのだから、貴公は料理が上手なんだなぁ」
「そ、そんなこと……」
「まさしく太陽! この温かさこそ、太陽だ!!」
「そ、ソラール先生……ッ!」

 最大限の賛辞を送るソラール先輩と、それを受けて感激している神通さん。それにしても神通さん、ソラール先輩のことがホント好きなようだ。先輩を見るその眼差しがまっすぐで、キラキラと輝いてる。

 そしてそれ以上に、ソラール先輩がどうやっておはぎを食べてるのか、非常に気になる。だって先輩、兜外してない……背中を向けてないで、ちょっとこっちを振り返ってくれませんかソラール先輩。

「こんにち……んーお茶のいい香り……あらぁ! 美味しそうなおはぎ!!」
「ぁあタムラさん! 神通さんがおはぎを作ってきてくれました!!」
「よかったら、お母さんも食べて下さい。いつかもらった、黄金糖のお礼です!」
「こんにちは……おや。みなさんでおやつのお時間ですか」
「モチヅキ殿もぜひ! 神通のおはぎは最高だ!!」
「いいんですか? では私も……」
「こんちはー! ぉあ! おはぎ!! みんなでおはぎパーティーですか!!」
「岸田さんも、ぜひお召し上がり下さい!!」
「やっほい!!」

 続々とやってくる生徒さんたちも交えて、授業が始まる前に、ちょっとしたおはぎパーティー。いいね。こういうのどかな時間。以前の職場では考えられない時間だ。

「ん! ちょっとこのおはぎ……!!」
「うまい! うちのかみさん以上ですよこれは!!」
「きなこを! もっときなこを!!」

 岸田のヤロウを含めた、他の生徒さんにもおはぎは好評なようだ。改めて神通さんを見る。うん。とってもいい笑顔。

「素晴らしい! 神通! 貴公は、太陽のように輝いている!!」
「そ、そんな……!」
「これでは、太陽もメダルを5枚ほど進呈せざるを得まい……!!」
「こ、光栄です!!」

 うん。なーんか褒め方がずれてる気がするけれど……まぁ本人同士が嬉しそうなのだ。俺が突っ込む必要はない。

「うまうま……うまうま……」
「おっ……このままじゃ……」

 もはやおはぎ摂取マシーンと化した岸田のヤロウに取られない内に、俺はきなこのおはぎを一つ取った。ぅぉぁああんと口をあけ、手に取ったきなこのおはぎの半分をかじる。

「んー……おいしっ」

 香ばしいきなこを纏うちょうどいい硬さのご飯に包まれた、こってりとした甘みのあんこ……きなこの香りとあんこの甘さ……んー……パランス完璧。大淀さんが入れてくれたお茶の苦味が、甘さを綺麗さっぱりと消してくれて……そしたらまたおはぎが食べたくなって……これは絶頂の連鎖。人に幸せしかもたらさない、幸福の永久機関だ。んー……神通さん、ホントにおはぎつくるのうまいなぁ。

「カシワギさん、どうですか?」

 いつの間にやら俺の目の前に、神通さんが立っていた。優しく微笑む彼女の眼差しは、まっすぐに俺を見ていた。

「おいしいですよ! すごくおいしい! お店で食べるものよりも、ずっと美味しいです!!」
「ありがとうございます。……私も、よく出来てると思います」
「ですよね! すんごい美味しいです!」
「そうですね」

 いや、実際、自信を持っていい出来ですよこれは!! ……あれ? そういやさっきは自信なさそうなことを言ってたような……? まぁいいか。とりあえずもう一個ずつ、取られないうちにきなことつぶあん確保っ!

 そうして、急遽とり行われた大おはぎパーティーで、神通さんが準備してくれたおはぎのすべてを平らげた俺達は、甘いものをたくさん食べた幸せでホクホクのまま、授業に入った。

 しかし、神通さんのおはぎ……ホントに美味しかったなー。きなこのやつはもちろん、つぶあんのやつもめちゃくちゃ美味しかったもんなぁー……しいていれば、俺はきなこのほうが美味しく感じたけれど。でもつぶあんのやつも美味しかったもんなー……。なんて考えてたら。

「……」
「……?」

 神通さんが、意味深な微笑みを俺に向けていた。……なんだ? 何か言いたいことでもあるのだろうか?

「先生! そろそろ授業を!!」
「ぁあ、岸田さんすみません……」

 しびれを切らした岸田のアホに呼ばれ、考えることを一時中断する。そうだ。今日は岸田のアホを見なきゃいけないから、ソラール先輩と神通さんの授業をじっくりと見ることは出来ないな。

 ソラール先輩曰く、今日の神通さんはExcelで作ったデータベースでの、抽出と並べ替えを学ぶらしい。ソラール先輩いわく、ここで大部分の生徒さんが日本語のドツボにはまるそうだ。

 確かに、俺もプログラミングを学び始めた時は『〇〇以上』と『〇〇より大きい』の違いとか、『〇〇かつ××』とか『〇〇または××』とか、よく分からなかったもんなぁ……がんばれ神通さん!!

 一方岸田のヤロウは、今日はWordのスタイル設定というものを学ぶ。大淀さんが、同人活動を行っている仲間に相談した結果、『シナリオ全体が俯瞰出来る機能がありがたいんじゃない? 知らないけど』とひどくめんどくさそうな返答を受けたそうだ。それを元に大淀さんが考えたカリキュラムが、スタイル設定を学んで、アウトライン表示とナビゲーションウィンドウを自在に扱えるようになってもらう……というものらしい。

 俺は岸田のヤロウの隣りに座り、テキストを開いた。スタイル設定……確かこの辺に……あった。

「では岸田さん。授業をはじめます」
「はい。今日もよろしくー。今日はしっかり頼むよ先生っ!」
「はい。で、岸田さんのご要望の件ですが、とりあえずカリキュラムを組んでみました。それで……」
「それで?」
「小説全体を俯瞰出来るような機能はどうだろうかと思いまして。スタイル設定と、その活用方法を重点的に学んでいただきます」
「なるほど」

 おっ。今日はずいぶん素直だ。この前はやたらとこっちに突っかかってきたのに。

「それで、まずはスタイル設定から学んでいきます」
「あ、それでさ。俺、自作の小説持ってきたんだよ。女の先生に電話をもらってさ」

 ……ほう。すでに大淀さんが手を回してくれていたのか。それなら話が早いな。今から新しいファイルを作らなくて済む。

「承知しました。ありがとうございます。では岸田さん作の小説を使って、機能の説明をしていきますね」
「あいよー」
「んじゃ、まずはそのファイルを開いて……あいや、ぐばってして下さい」
「はいー」

 本当はさ……『開いて下さい』って言いたいんだけどさ……なんかめんどくさいことになりそうだからさ……

 岸田さんはUSBメモリを胸ポケットから取り出し、それをパソコンに差し込んで、中にある『殉教者の魔弾』というWordファイルをダブルクリックして開いていた。なんだか妙なタイトルだなぁ……開いたファイルはやはり小説らしく、中々のページ数と文字数を誇っている。Wordファイルでページ数168とか文字数17万字とか、初めて見た……。

「ちなみにこれ、ネット上で公開してるんだよ」
「へー。評判はどうなんですか?」
「聞かないでよ……」
「貴公……」

 web小説界隈の詳しい話は知らないが……聞けば、続編でリベンジしたいんだとか。ぜひともがんばっていただきたいっ。

「それはさておき、岸田さんのこの作品、各話で区切ってますよねぇ? たとえば、『第一話:べっぴんな夜戦バカ』とか」
「うん。確かに」

 気のせいか……俺の背後から神通さんの熱い視線が向けられている気が……

「んで、執筆中に前の方の文章を確認したくて戻る時、普通にスクロールしてます?」
「うん」
「それ、例えば12話の文章を書いてて『6話の内容を確認したいッ』て時に、バシッと6話に戻れたら便利だと思いません?」
「そら便利だねぇ」
「それが出来るのが、スタイル設定なんですよ」
「ほほう」

 スタイル設定てのは……文字列に対して、『タイトル』や『見出し』といった属性を持たせてやる機能だ。そうすると、Wordは『これがタイトルなんだったら、タイトルらしい書式設定にしてやるわ』と自動的に書式設定を行ってくれる。

「もっと深い意味があるんですけど、とりあえず今はそう覚えていて下さい」
「なるほど」
「一回やってみましょうか。ちょっとタイトルの『殉教者の魔弾』てところ、ズリズリと選択してみてくれますか?」
「音読しないで……なんかちょっと恥ずかしいから……」
「す、すみません……」

 少し顔を赤くしながら、岸田さんはタイトルの文字列『殉教者の魔弾』てところをズリズリと選択していた。赤面はしてるが、鋭い眼差しで真剣に画面に向かい合っている。

「えぐしっ!?」
「風邪?」
「し、失礼……ずずっ」

 なんか鼻水出てきた……

「選択したら、『ホーム』タブの右の方に『標準』とか『索引』とか並んでるとこがあるでしょ」
「あるね」
「その中から『表題』てのを見つけて、クリックしてみて下さい」
「はいはい……ないよ?」
「隠れてるんです。下向き三角クリックしてみて下さい」
「えー……あ、あった。……うおっ!?」

 岸田さんがスタイルの中の『表題』を見つけてマウスでポイントした途端、サイズが大きくなりフォントも変わった『殉教者の魔弾』。

「ぇあ!? なにこれ!?」
「岸田さんが『ここはこの小説のタイトルだよ』とWordに教えたんですよ。そしたらWordが気を利かせて、タイトルっぽい書式設定を自動でやってくれたんです」
「いやでも! 文字大きくなんかしなくていいし、書体も変えなくていいのに!!」
「もちろんスタイル設定したあとでも、書式は変更出来ますから。フォントサイズとフォントだけ元に戻してみましょうか」
「めんどくさ……戻すなら、やらなくていいんじゃないの……?」

 スタイル設定のキモはね。書式が自動で変わるところじゃないんですよ岸田さん……。

「いいんです。『タイトルだよ』って教えたことに意味があるんです」
「ほーん……まぁいいや。書式を設定しなおせばいいのね?」
「はい」

 口をとんがらせ、ちゅーちゅー言いながらフォントサイズと書体を元に戻している岸田さん。なんかムカつくな。この『ほら、俺、男なのにこんなカワイイ癖があるんだよ?』みたいなところが。本人そんなつもりじゃないんだろうけど。そこがまたムカつく。計算づくでやっててもハラタツ。つまり、ちゅーちゅー言い出した時点でアウトなわけだ。

「はい戻したよ」
「あとは、他の部分もスタイル設定してしまいましょう」
「他の部分って?」
「各話ごとにスタイル設定をしていくんです。たとえば話が前編と後編に大きく分かれてるなら、その“前編”と“後編”に『見出し1』、各話のサブタイトルに『見出し2』て感じで」
「それも勝手に書式変わっちゃうの」
「変わっちゃうんで、あとでまとめて全部、元に戻しましょう。とりあえずは、各話のサブタイトルにスタイル設定をやってみて下さい」
「でもめんどくさ……」
「……」

 ここで俺は、わざと席を立ち、岸田さんから距離を取った。岸田さんが俺に文句を言いたそうにしているが気にせず、向かいのおばあちゃん、黄金糖のタムラさんの様子を伺いに行く。

「タムラさーん。調子どうですー?」
「んー。中々快調ですよーせんせーい」
「いい感じですねぇ。タムラさん上手になりました?」
「いやー、先生がいいから〜」
「そんなことないですって〜」
「う……」

 談笑する俺とタムラさんの様子をしばらく眺めていた岸田さんは、やがて無言でパソコンに向かい、マウスをいじりはじめた。どうやらきちんとスタイル設定をやりだしたようた。

 俺が岸田さんからわざと距離を取り、タムラさんと談笑していたのには、理由がある。この岸田という人は、話を聞いてくれる人がそばにいると、話が止まらなくなるようだ。しかも岸田さんはタチが悪く、その止まらない話の大半は憎まれ口だ。

 で、あれこれ考えた結果、こちらの説明が終わったら、問答無用で距離を離してみようという結論に至った。こちらが岸田さんの話を聞いていると、彼は延々と不平不満をこぼし続け、作業をしなくなる。それは本人も得るものがないし、こちらの精神衛生上も良くない。ならば距離を離して様子を見てみようというのが、俺が出した結論だ。

 結果は上々だ。岸田さんは文句を言うことなく、自分の小説に対するスタイル設定を一生懸命行っている。やっぱり話を聞いてくれる人がそばにいると、色々話しちゃうんだね。んでブーストがかかって、憎まれ口しか出てこなくなる……と。

 しばらく時間を開けたところで、岸田さんの背後からそっと、画面を覗き込んでみる。……うん。操作方法も間違ってない。大丈夫だ。

「出来たよ。全部スタイル設定した」
「はい。んじゃ、ここからスタイル設定の真骨頂を見せます」
「もったいぶらずに教えてよー……」

 くそっ……やっぱり話に付き合ったら、こちらのメンタルを逆撫でしてきやがる……ッ!

「んじゃ『表示』タブの『ナビゲーションウィンドウ』て項目を探して下さい」
「はいー……えーと、これ?」
「そうですよー」

 その『ナビゲーションウィンドウ』てのにチェックを入れると、画面の左側に、普段は表示されないウィンドウが表示される。そこに表示されるのは、今しがたスタイル設定した一連のタイトルと見出しだ。それらが階層で表示される。

「ぉおっ。今スタイル設定したやつのリストが出た!」
「色が変わってるところあるでしょ? それが、今カーソルがある話数になってます。つまり、今自分がどこの話を書いてるのかが一目で分かる仕組みです」
「ほうほう」
「逆に、話を確認したい話数のところをクリックしてあげると、その話数に飛びます。前書いた話を確認したいときとか便利ですね」
「なるほどぉ……」

 そういい、岸田さんはナビゲーションウィンドウに表示されてる見出しを色々クリックしていた。本当に小説の執筆に役に立つかどうかはよく分からないが、文句がないところを見ると、機能そのものには関心しているようだ。

「ついでに言うと、そのリスト、ズリズリっとドラッグしてあげれば順番も入れ替えることが出来ます。しかも本文ごと」
「そうなの?」
「試しにナビゲーションウィンドウの中の話数の順番、ドラッグで入れ替えてみてください」
「ほいほい」

 俺の指示通り、岸田さんはドラッグで話数を入れ替え、本文の確認をしている。こっちに文句を行ってこないところを見ると、興味津々みたいだ。

「おっ。本当に入れ替わった」
「これで、例えば書いてる最中に『二話と三話を入れ替えたいなぁ……』て思ったら、ここでドラッグしてあげれば解決します」
「今までは全部選択して、コピーして貼り付けしてたもんなぁ……」
「それよりはやりやすいでしょう?」
「だねぇ」

 本当はね……長文の見出し確認とかするときに使うワザなんだけどね……。

 次に進む前に、岸田さんにはとりあえずナビゲーションウィンドウを好きにいじってもらうことにした。その間はタムラさんとモチヅキさんの様子を確認しつつ、ソラール先輩と神通さんの授業の様子を見学させてもらう。2人の授業を見学出来る余裕が出来てよかった。

「ソラール先生……“昇順”と“降順”、どちらがどちらなのか、いまいち覚えられません……」

 ああ……分かるわその気持ち……俺も覚えたての頃、その二つがどっちがどっちか分からなくなってたもん……。“昇順”てのは、順番通り。数字で言えば1,2,3の順番だ。“降順”てのはその逆。漢字が“昇ってく順番”と“降りてく順番”てのがまた混乱するよね。

 データベース扱ってるとその辺鍛えられるんだけどね。まだペーペーだった頃は、とりあえず一回昇順のASCで出してみたもんだよ。

「本来は覚えるのが一番だが……覚えられないのなら、とりあえずどちらかを選んでみるといい。間違えていたら、その逆が正解だ」

 ……おっ。ソラール先輩の解決方法が、俺と同じだ。どうせ二択でどっちかは正しいわけだから、だったらとりあえずどっちかやってみるのが一番いい。間違ってたら元に戻せばいいわけだし。

「なるほど……それで自分の思い通りの並び替えが出来なかったら、もう一方に設定し直すということですか?」
「その通りだ。地下墓地と城下不死街……どちらを先に攻略すればいいのか分からなければ、とりあえず地下墓地に突っ込む。それと同じだな」
「確かに……海域攻略中に能動分岐が発生して、北と東どちらに舵を切るか……迷ったら、とりあえず東に突っ込む。それと同じということですね」

 ……二人共、その例え絶対違うと思う。

「まぁ俺は、地下墓地に突っ込んで帰ってこられなくなったんだけどな。あの時は、車輪骸骨と殴りあっては篝火に戻されて、半べそになったもんだ。ハッハッハッ」
「私も、とりあえず東に突っ込んだら、結局その海域のボスどころか、誰とも戦えずに帰還したことあります。アハハハハハ」
「おっ。神通は意外とおちゃめさんと見た!」
「ソラール先生も意外とおっちょこちょいですね!」
「「あっはっはっはっ!!!」」

 ……あえてもう一回突っ込むけど! その例えは間違ってると思う!!

「では神通……次は抽出にはいるぞ……」
「はい……ゴクリ」

 そんな感じで、レコードの並べ替えからテーブル作成とデータ抽出に入ったソラール先輩と神通さんだった。相変わらず魅惑の異世界太陽艦隊戦ワールドを展開していて、見ているこちらとしてはハラハラしてしまうが……説明は間違ってないし、何より二人共楽しそうだ。納得出来ないけど。

「……えぐしっ!?」
「あら先生。風邪なの? 飴あげようか?」
「あーいや結構です。ありがとうございますタムラさん」
「今日も先生の好きな黄金糖よ?」
「んー……すんごく惹かれるけど……大丈夫です」

 んー……くしゃみが止まらん……。岸田さんを見ると、自分の小説の手直しというか……添削を始めたようだ。

「あれ……ここ、誤字がある……」

 アンタ一体何しに来てるんだここに……。まぁいいか。それで作業に静かに集中できているというのなら、こちらがあえて邪魔することもないだろう。そのまま静かに集中して、ぜひとも小説の完成度を高めていただきたいっ。そして、次はリベンジをしていただきたいっ!!

「……えぐしっ!?」
「貴公、風邪か?」
「あー……いや、そんなことはないと思いますが……」
「マスクしといたほうがいいんじゃないか?」
「ですね……あとで買いに行きます」
「残念だ……貴公の力になりたいが、マスクの代わりになりそうなのは、このタリスマンしか……」
「誰がそのカラフルてるてる坊主を欲しいと言った!? ……ズルっ」
「貴公……」 
 

 
後書き
Excel
昇順:順番どおり。1,2,3~ とか あ,い,う,~ とか
降順:逆順。
どっちかよく分からなくなったら、
とりあえず昇順で並べ替えをしてみることをおすすめします。

Word
ホームのスタイル設定を使うと、選択してる文字列に
『タイトル』とか『見出し1』とかの属性を付与出来ます。
属性を付与しとくと、ナビゲーションウィンドウで見出し一覧を見たり、
それを使って章まるごと順番を入れ替えたりも可能です。

作者は大変便利な機能だと思いますが……
 
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