グランドソード~巨剣使いの青年~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第3章
1節―最果ての宮―
ダンジョン
前書き
これより、本編が始まります。
ここまでの道のりは全て本編へのプロローグ、ここからが本番です。
※ここら辺から徐々に文章が変わることが多くなります。
「ん、んぅ…?」
ソウヤは、パチリッ!という音が似合いそうな早さで目を開けた。
あの寝起きにある眠気の欠片も感じなく、身体がスムーズに動くのをソウヤは感じている。
「…見慣れない、天井だな。――本当に」
ソウヤは、天井に目を向ける。
いつもの宿にある温かみある木の天井でもなく、エルフの城の白い光沢のある天井でもなく。
ソウヤの目の前に映っている天井は、黒く霞んでいる…そんなところだった。
そして、ソウヤは呆然と顔を横に向ける。
そこにはこの世界にはとても貴重な紙が残されているのがわかった。
―なんだ…?
ソウヤは楽に動くのに、節々が痛いのを感じながら身体を起こすとその紙に手を伸ばし閉じているので開いてみる。
そこには、手紙が書いてあった。
下に目を向ける。
それはルリ宛のようだった。
―ルリが…俺に対して……?
とにかくソウヤは見てみることにした。
-------------------------------------------------------------------------------
ソウヤさんへ
きっと、目が覚めたらこの手紙を見つけていると思います。紙はとても貴重で高価ですが今までためてきたお金でやっと買えました。ですが、何かを伝えるのはこれしか無いと思い、買いました。
さて、さっそく伝えたい内容を伝えましょう。
まず1つ目、ソウヤさんが今いる場所ですが…そこはこの世界最悪最強の”ダンジョン”。最果ての宮です。蔓延る魔物もすべて最低でも上級魔物以上、上層へ行けば最低でも中級魔族以上の敵が出てくる場所です。ソウヤさんは今、そこの100層の内の50層のセーフティエリアに居るはずです。そこからはもう中級魔族以上しか出てきませんから、頑張ってください。
2つ目ですが、それはソウヤさんがここにいる理由です。多分、記憶が軽く飛んでいると思うので、書いておきます。エルフの国に襲来が合ったのでソウヤと私達は襲来を撃退しましたが、ソウヤさんが空間魔法を使って急いで戻ったんです。ですがそこはもう血の海で…。ソウヤさんはガーフと言っていた魔族を倒し、ソウヤさん自身も死にそうになっていました。しかも、増援が来そうな雰囲気だったのでソウヤさんに元々行かせる気だったこの場所へ転移させました。
3つ目です。ソウヤさんはきっと、目が覚めたら意外と身体が本調子になっているでしょう。それはソウヤさんの呪いが治るまで寝ているよう魔法をかけたからです。1週間ほどして起きても意味はありませんから。ですが、これからは『亡霊開放』は使わないようにしてください。この場所で呪いなんかにかかったら、セーフティエリアに帰るまでに殺されてしまいます。
次は4つ目、ここから出る方法ですが簡単に言えば100層に到達することです。このダンジョンは上に戻れない仕様になっていますので、100層まで行くしか無いのです。このダンジョンはその鬼畜さゆえ、周りに街や村は無いですし、挑む人もいないと思うのでゆっくり休んでください。
5つ目。このダンジョンは横にも縦にも大きくありません。ここで巨剣、または巨刀を使うのは自殺行為に等しいと思います。ですので極力使わないでください。
最後に…このダンジョンをクリアするのは容易くないですし、私に聞きたいことも多いと思います。ですが、ソウヤさんなら必ずクリアすると信じています。何年かかるかわかりませんが、いつでも待っています。これは大きな賭けですが、必ず戻ってきてください。そうすればきっとソウヤさん、あなたは#&$*>#%(消してあってよくわからなかった。透かしても見えない)を手に入れられるでしょう。
ルリより
-------------------------------------------------------------------------------
ソウヤはそれを読み終わると、大きく深呼吸をして手紙を折り直してそっと地面に置く。
―まずは、状況整理。
ソウヤはそう思うと、座って背中を壁に預けると集中し始める。
―ここは最果ての宮というのは多分、ルリのいうことだから本当だろう。確かにルリに何故一々ここに転移させたのかは不明だが、まずはここから出ることが最優先だ。
ソウヤはそう思うと、立ち上がる。
「ここが、セーフティエリアだとして…」
ソウヤはそう言うと、近くにあった木製の扉に近寄る。
確かにその扉からは魔力が漏れだしており、魔物を寄せ付けていない術式が貼られているのがわかった。
―この扉の先には中級魔族以上の魔物が雑魚として現れる…か。正直、俺らをここまで連れてきたあの男はここを作って何をさせたかったんだろう?
ソウヤは考えるだけ無駄だと思い直し、その場から動くことにする。
―ここにいても何もできないだろうしな。
ソウヤは、そう思うと扉を思い切り開いた。
「…っ!!」
その瞬間、ソウヤはゾクリと背筋を凍らせた。
一瞬でわかる…わかってしまう死の空気の匂い。
ここに居たら死ぬ…そんな恐怖感がソウヤの身体を後ろの部屋を潜らせようとしている。
―それでも…っ!
ソウヤは、ゆっくりとダンジョンの中を歩き始める。
通路の中は半径6mほどの正方形型で、とてもではないが巨剣を使うことは無理そうだった。
通路の壁に一定間隔で松明が置かれているが、それもただ真っ暗なのを薄暗くしている程度に過ぎない、そんなものである。
ソウヤは黒鏡破を取り出すと、薄暗い通路の中を歩き続けた。
しばらくすると魔物の気配を感じる。
瞬間、背筋が寒くなるのを感じてソウヤは咄嗟に後ろにジャンプした。
「がぁっ!」
目の前から急に何かが現れソウヤの一寸先の空気を切り裂いた。
ソウヤの前髪が少し斬れる。
「っく…!」
ソウヤは苦し紛れに声を絞りだすと、左手を地面につきバク転を行う。
無事、着地したソウヤは攻撃してきた相手を睨みつけた。
攻撃してきた魔物は、二足歩行する蜥蜴…つまりリザード種だったようだ。
しかし、その持っている曲刀は名刀であることが一目でわかる代物で、身にまとっている簡素な防具もそうである。
リザードマン自体も只者ではない、すくなくとも中級魔族位はありそうなほどの威圧を漂わせていた。
―リザードマン…エリートってところか。まぁ、エリートで済むなら良いんだけど。
リザードマンエリートは、自身の得物の曲刀を構えた。
ソウヤも黒鏡破を構える。
「シャァっ!!」
リザードマンエリートが先に動き、ソウヤに曲刀を振るう。
ソウヤはそれに対応しようと横にステップしようとするが、壁があるのに気付き急いでバックステップする。
しかし、リザードマンエリートはそれ以上深追いをしようとしない。
「っち。やはり誘いには乗らない…か」
ソウヤは、舌打ちすると再び黒鏡破を構えリザードマンエリートに突っ込む。
黒鏡破を上段に構えると勢い良く振るう。
しかし、それにリザードマンエリートは対応し曲刀で軽く受け流してきた。
「っぐ…!」
ソウヤは小さく呻くと、足を地面にすべらせると回転してその回転運動を足した黒鏡破をリザードマンエリートに叩きこむ。
それにも対応したリザードマンエリートは曲刀で防御しようとするが、一瞬で破壊され術無く真っ二つになった。
ドサリ…そんな音がしてリザードマンエリートは地に倒れた。
「はぁ…はぁ…」
ソウヤは少し息が荒いのを感じながら、感じたことを考える。
―正直、リザードマンエリートはヤバイ。装備しているものは業物だし、何よりあいつ自身がもっともヤバイ。ステータス的に圧倒的に勝っているはずなのに、すべて剣術で避けられ、全て対応してきた。
経験の差なのだろうとソウヤは考える。
そしてなにより、ソウヤは足りないものに気付く。
―俺が危なかった原因は…経験不足、最終的にゴリ押し、そして…剣術、か。
ステータスでは剣術は王級までいっているが、ステータスでの剣術は剣を壊しにくくなったり、鋭くなったり、剣を扱いやすくなるというだけだ。
他に技が増えるだけである。
つまり、本当の剣術というのをソウヤは持っていないのだ。
今までは我流…というのも恥ずかしいほどのゴリ押しを続けてきたのだから。
―このダンジョンでは巨剣はまず使えない。頼りになるのはステータスと経験、そしてこの狭い空間でも戦える動きだ。
ソウヤは、リザードマンエリートの死体を一旦ストレージに突っ込む。
後々、食用と武具の材料にするためである。
「一旦、帰るか」
ソウヤはそのまま帰ることにし、きた道を戻っていく。
一応、ここまでは一本道だったのでそのまま戻るだけである。
―目標、ダンジョンから脱出する。やるべきこと、剣術を戦いから学ぶ…多分リザードマンエリートなどから真似したほうが効率がいい。あとは…戦いの経験、だな。
ソウヤはやるべきことを考えながら、セーフティエリアの扉を開けた。
ページ上へ戻る