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グランドソード~巨剣使いの青年~

作者:清弥
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第2章
2節―運命が許さない旅―
  エレンとルリの実力

「ありがとうございました~」

 ソウヤたちはそういって礼をするガルフの店員を後目にその店を後にした。
 その店とは旅をするのに必須とも言われ、それがないと荷物が運べなく夜も寝れないといわれるほど重要なもの…すなわち馬車を売っている店である。
 旅をするなら…と旅をするのに一番早くソウヤたちが買ったのが馬車と馬だ。
 値段は馬車と馬で合計8万Rで、Bランクほどなら多少無理したら変える金額とレーヌが言っていたのをソウヤは覚えていた。
 旅の支度は役割分担しており、馬車と馬、あと食料を買うのがソウヤとレーヌの仕事でルリとエレンは道具などを買う役目である。

「さて、まず食料だな。どれくらい買えばいいんだ?」
「え~っと…ここから一番近い大きな町に行くとなれば…1週間ぐらいかしら?」

 ソウヤの疑問にレーヌが長らく育てた冒険者の知恵を活かして答えると、ソウヤは「意外と多いな…」と返す。
 その反応にレーヌは呆れた顔をした。

「あのね、普通の旅なら1ヶ月は用意しなきゃいけないところなのよ?」
「俺たちがいた世界では600Kmのところを1時間ほどで行けたからな」

 そのソウヤの言葉にレーヌは驚いた顔をした。
 やはりその時速約600Kmのものに驚いているらしい…とソウヤは思う。

「600Kmってこの大陸の約5分の1じゃない!?」
「つまりこの大陸は3000Kmか…意外と小さいな」

 そうソウヤがつぶやくとレーヌは頭を抱えて「ソウヤの国はどれだけ文明が進んでいるのよ…」と口にした。
 ソウヤはその差をよく理解しているので苦笑いを浮かべる。
 馬車の最高速度が約時速20Kmなので、新幹線のはやぶさが時速300Kmほどなのでその差は約12倍にも及ぶ。
 人の歩く速度が約時速4Kmだとしたら、なんとその差は75倍だ。
 この世界の人間では考えられない速度だろう。

「…食料市場についたな。じゃあ手分けして行くか」
「了解よ」

 ソウヤとレーヌは食料市場につくとそこでいったん解散して、各自食料を買い漁りに行った。
 この世界の町では市場が複数に分かれており、食料・武具・生活用品などの多数の種類が存在している。
 ここまで人がいるのは、その市場内だったら市場の種類限定で小さな店舗を開くことが出来るからで、言うなれば市場はフリマというところだろう。
 ソウヤとレーヌが探しているのは干し肉や干し魚などの長く持つもの…ではなく、普通の野菜やら肉やらの長持ちすることを考えた食材ではない。
 なぜ干してないやつなどを買わないかというと、簡単に言うとソウヤのアイテムストレージに突っ込めば腐りは絶対にしないのだ。
 さすがは元ゲームクオリティーというところだろうか。
 そして1時間ほど経ち、鐘が鳴り始める頃にはソウヤ一行は中央広場に集まっていた。

「さて、みんな準備は出来たか?」
「あぁ」
「出来ました」
「出来たわよ」

 順にエレン、ルリ、レーヌがそう答えてソウヤはうなずくと外に預けてある馬と馬車を取りに行くために町の外へ歩き出した。
 これから旅が始まるのだと、静かにソウヤは胸を高鳴らせながら。
 しかし、そんなことはほとんど出来ないということをなんとなくソウヤは感じていた…。




「なんとなくこうなる事は分かってんだよ…クソッ!」
「なぜこんなところに…!?」
「嘘ですよね…」
「なんで…」

 町を出て6日ほど経った頃、ソウヤたちの小さな丘の上から見えるものは…中級魔族が3人、下級魔族が10人ほどの軍勢だった。
 そして、その軍勢に対抗している少し遠くに存在する大きな街『レーン』の冒険者や兵士。
 それを見たソウヤは悪態を付きながらエレン以外の月文字(ルーン)魔法を解いてメインスキルを巨剣使いに変化させる。
 変更した後にサイレンと黒鏡破を抜き放ち、2振りとも巨刀化させた。

「エレン、レーヌは水魔法で冒険者の回復を頼む。ルリは冒険者たちを安全なところに誘導してくれ」
「了解だ」
「分かったわ」
「はいっ」
「よし…解散ッ!!!」

 ソウヤは簡単なことをエレンたちに告げると、肉体強化による素早さアップで軍勢の中心部分に飛び出した。
 2本の巨刀をそのままソウヤは自らを回転させながら横に振り回す。
 結果、ソウヤを中心とした半径5mの円が出来た。

「なんでこんなことをやらなければいけないんだ…!?」

 そんな疑問を口にしながら襲い掛かる魔物その巨刀により、1振りで10匹死に至らしめる。
 そうソウヤが大量の魔物を相手にしている間にエレン、レーヌは冒険者の回復、ルリは冒険者や兵士の誘導をしていた。
 さすがにそんなことをされれば魔族たちも面白くないので、ソウヤの元に中級魔族が3人、下級魔族が4人向かっていた。
 残りの下級魔族は2人ずつその者達の元へ。
 下級といえど、その強さは魔物を20匹集めたような強さを誇っている、それが2人も向かうのだからエレンたちの負けは確実と言えた…普通の人なら。

「エレン、ルリ、レーヌッ!そっちに下級魔族が6人行った!頼むっ!!」
「了解したッ!!」

 ルリ、レーヌの代わりにエレンがそう答えるとその身に光属性を纏った雷を纏う。

「レーヌ、回復とこっちの支援を頼む」
「…大丈夫なの?」
「侮るな…。私は二つ名持ちだぞ?馬鹿にするな」

 ソウヤによってエレンの強さが隠れてしまっているが、エレンの強さはシルフの中では最強クラスに入る。
 しかもその強さに職がランクアップとなり希少能力(ユニークスキル)を手に入れていることで、比較にならないくらい強くなっているのだ。

「じゃあ行ってらっしゃい」
「安心して待ってろ」

 エレンはその場を後にして下級魔族たちに向かって走って行った。
 一方、ルリの方もソウヤの言葉が耳に入っていた。

「君っ!あとは自分たちでみんなを誘導するから行ってきてくれ!」
「えっ?あ、あの…」
「早くッ!!!」
「あ、はいっ!お願いしますっ!!」

 ルリは冒険者の1人に頭を深く下げるとその場所を後にした。
 それを見ていた隊長であった兵士はその冒険者の背中をたたき、ニッと笑う。

「お前冒険者ばっかりに良い顔させねぇぜ。おいてめぇら!この町を守る兵士が役目を忘れてどうするッ!?魔物があいつらから飛び出たら速排除だッ!良いなッ!!」
「「「「「「「「「「了解いたしましたっ!!!」」」」」」」」」」

 その場所はもう、4人の者たちによって団結し始めていた。




 ルリは背中から聞こえる冒険者や兵士の巨大な声に、安心しながら目の前に着実に存在している下級魔族に向かっていた。
 周りの光景が見えないほどのスピードでその下級魔族に近づくと、右手に持つ黄金固地(ウォポルグ・ビプドミズ)を下級魔族の1人に向かい振るう。
 角の生えた下級魔族はその一撃をもろに食らうとその場でよろめき、体制を崩す。
 ルリはその場で地面を削りながらその速度を緩めて止めると、下級魔族2人を睨みつける。

「…ソウヤさんはそんなことをしても……たとえ10万の軍勢でも死にませんよ。ヴェルザンディ」

 すると、どこからともなく女性の声が聞こえてくる。

「あら、女神に見守られし者。言うようになったじゃない。昔は無知でギャアギャアと泣いていた癖に」
「昔は昔ですよ。それよりヴェルザンディ。あの方の許可は貰っているんですか?」
「貰っているわけないじゃない。あの方が許すとでも?」

 ルリはその場で小さく溜息を付いて、剣と短剣を構えると下級魔族を再び睨みつける。

「まぁ、そんなことではソウヤさんは死にませんし私たちも死にませんから安心する事ですね。では…」

 ルリはその場でそれだけ告げると、一気に走り出す。
 角を持った下級魔族は唸り声を上げるとその手に持つ大剣をルリに向かい振り下ろす。
 それをルリは右手の剣で滑らせることでその大剣の角度を微妙に変えるとその懐に飛び込み、左手の|音速白銀(サイレント・ミニット)をその下級魔族に振るう。
 ありえないくらいに研ぎ澄まされたその短剣はいとも容易くその下級魔族の皮膚を気付付けた。
 その場から脱出したルリは次のフードをかぶった下級魔族に狙いをつけようとしたが、次の瞬間目の前に広がった炎に速度を上げることでなんとか対処する。

「危なかったです…」

 フードをかぶった下級魔族はさらに炎を構築していくのが目に入る。
 ルリは額に浮かぶ汗を腕で拭ってから剣を再び構えて、フードをかぶった下級魔族に向かって走リ始めた。
 ルリも口に小さく呪文をつぶやき、フードかぶった下級魔族が炎を放つのと同時に魔法を放つ。

「その風に乗り舞え剣よ『竜巻剣舞(グラデイス・ソーガライ)』」

 ルリはそうつぶやき迫りくる炎を気にせず、地面に右手をたたきつける。
 そしてその反動で飛び上がりフードをかぶった下級魔族の後ろに着地して、クスリと笑った。
 その声に反応して下級魔族は振り向いた…いや、振り向いてしまったのがその敗北の原因だという事だろう。

「チェックメイトです」

 その言葉で角が生えた下級魔族とフードをかぶった下級魔族は、後ろから迫りくる剣が舞う竜巻の中に閉じ込められたのだった…。
 そしてその場が静かなところにもどり、ルリはエレンが居る方へ顔を向ける。

「流石エレンさんですね。私の倍いるはずなのに仕事が早いです」

 エレンのところの状況は分かっていないのにそうつぶやくルリ。
 その言葉は間違ってはおらず、エレンたちのことをよく理解している事が分かった。

「あとは…ソウヤさん……はもう終わりますね」

 ルリは振り上げられる地獄を思わせる青い炎を纏った2振りの巨刀を見てそう呟いた。




 ルリがちょうど戦い始めたころ、エレンも戦いを始めていた。

「では行くか…我に光電の力を『光電の力(フォッツ)』」

 すると、エレンの身体に光を放つ雷が纏う。
 光電を纏った状態でエレンがその場所で小さくぶつぶつと呪文をつぶやき始める。
 それを有利に取った下級魔族たちは一斉にエレンニとびかかるが、光電に当たり下級魔族ははねのけられてしまう。
 1分ほど呪文を唱えていたエレンは、やっと呪文を唱え終えたのか口を開く。

「冥土の土産だ。教えてやろう、私が二つ名を手に入れるまで呼ばれていた二つ名を……」

 エレンはそこでスゥッと息を深く吸うと、天を見上げて魔法の名をつぶやいた。

「降りかかれ天上の雷…『雷神の鉄槌(イクスゼウス・プロクテスロ)』」

 そう唱えた瞬間、空高くから真っ白で超巨大な雷がエレンのもとへ迫り、その手にとどまる。
 エレンはその手を地面に置き、そして嵐前の静けさが表れる。
 そして…雷が地面からとどろくその瞬間、エレンはそう口にした。

「『雷神の使徒』だ、覚えておくが良い」

 そう言い終わる頃には周りのものはすべて消し飛んでいた。
 そしてエレンの二つ名に『雷神の使徒』が追加されたのも…この時だった。
 エレンは周りを見て、うんと1つうなずく。

「ルリもソウヤももう終わるな。私の出番もこれで終わりか…。」

 そう呟いてエレンは元居た場所へ戻っていく。

「…それにしても、先ほどの魔法は初めて使ってが魔力の消費がひどいな…」

 その身に魔力の莫大な消費によって体を疲労しながら……。 
 

 
後書き
雷神の使徒(ライズンゴット・ラーディー)― 二つ名
雷のあまりの凄まじさに周りの人々が付けた二つ名。光雷魔法を使えるようになり、条件を満たしたことで出現した。
能力…光電魔法威力×5 全ステータス×2

 
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