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グランドソード~巨剣使いの青年~

作者:清弥
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第1章
4節―茨の旅の決意―
  クラスC

「それでは、本日の試験を始めたいと思う!」

 ギルドの奥にある闘技場のようなところでガチムチグルフがそう並んでいる人ら3人―ソウヤ、ルリ、あと細い体の男―にむかってそう告げる。
 ガチムチグルフはソウヤたちをジロリと一睨みすると、視線を戻して声を出す。

「では内容を話そう!君たちは順番に1人の管理人と戦ってもらい、力量を図ってもらう!戦いのルールは準備室に置いてある装備品だけで戦うこと!戦うとき、魔法は使ってもよし!どちらかがまいったというか、気絶させたり、管理人が終了といった時点で終了だ!質問はあるかぁ!」

 シーン…と周りが一気に静かになり、質問はないことが見られる。
 なので、グルフは深く溜息をついてから、「では準備してこちらにこい!」と言ってから、ソウヤたちは準備室にこもっていった。

「この中から選ぶのか…」

 ソウヤは準備室の中から大量の武具を見ながらそんなことを考えていた。
 その種類は、武器ならば『木製の長剣』などの木製の武器が立てかけられており、防具は『革の軽鎧』などの鎧系は革製で『麻のコート』などの麻製だった。

「じゃあこれとこれと…これと……」

 ソウヤはそうやって武具をそろえて行き、結局的に装備をしたところこうなった。

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ソウヤ 17歳 種族…ヒューマン 性別…男 2つ名『均等破壊(バランスブレイカー)』
職…戦士 達人級 装備品…木製の長剣、木製の長剣、麻のコート、革の籠手、麻のブーツ
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 これぐらいだろう…とソウヤは考えて、立ち上がると、その拍子に薄い灰色のコートが揺れて、バサリ…と音を経てた。
 それに少しいい気分をソウヤは感じながら準備室を出ていき、闘技場へ向かう。
 闘技場に到着すると、ほか2人が闘技場のベンチで座っており、ソウヤもそこへ向かうことにした。
 ルリの装備は『木製の短剣』と『木製の長剣』のソウヤの思った通りの二刀流で、『革の軽鎧』の部分の肩部分と脛部分を『麻の服』に着こんでいる。
 その他にも『革の籠手』に『革のブーツ』も履いており、ソウヤのような完璧な素早さ重視の戦士ではなく、ある程度まで防御力を入れた軽装の戦士の姿であった。

「ソウヤ!遅いぞ、最初はお前だ!」
「分かりました」

 ソウヤはズンズンと歩いてきたガチムチグルフの言葉にうなずいて、闘技場の中心部へ向かう。
 そこには、1人の痩せたような男が経っていた。
 装備は『木製の長剣』に革系の装備を一式揃えており、静かにソウヤを見ていた。

「今回は僕が相手をする。よろしくね」
「お願いします…」

 ソウヤはそれだけ言って、腰に差してある2本の長剣のうち、1本だけ片手で抜いた。
 そのままソウヤは半身になり、長剣を地面と平行に立てるという少し変わった構えをする。

「では…はじめ!」

 その声を聴いた瞬間にソウヤは動き出す。
 いつもとは違い、重量をかけているはずだが、考えていたより重量がものすごく重たく感じたが、そのまま突撃して管理人の目の前まで詰めると、そのまま突きを放つ。
 しかし、それは管理人に避けられて管理人は下段からの切りを放った。
 それをソウヤは身体を捻って避けようとしたが、思うように身体が動かずに硬直してしまう。
 向かってくる長剣をソウヤは見て、身体に鞭を入れると無理矢理身体を反転させて横に転がる。

「君、さきほどの攻撃を見極めましたか…。さすがですね」

 ソウヤは管理人を見ながら何故だ…と思う。
 少なくとも重量的には簡単に操れるはずだ…とソウヤは考えてから思い当たる節があった。
 ソウヤはそうであるように…と祈りながら、未だ抜いていない長剣を鞘ごと落とす。
 すると、今までの身体の重さが嘘のように取れて身体が軽くなるのが分かった。

「…っ!」

 声のない気合を出して一気に飛び出して管理人に近づく。
 やはり、身体は元の場合より幾分も重たく感じるが、先ほどの重量より軽くなったようでさきほどより早く管理人に近づくことが出来た。
 そのままソウヤは長剣を横に払うように斬りかかる。
 管理人は先ほどよりも早くなった動きに一瞬目を奪われていたようだったがすぐに動き始めて、スローペースで近づく長剣を軽々しく受け流す。

「動きがまだ単純ですねっ!」

 管理人はそう言って長剣を中段に放ち、ソウヤは自らに向かう長剣を直視して、そして…飛んだ。
 ソウヤは自分と同じぐらいの高さで跳躍すると、蹴りを放つ。

「くっ!」

 管理人はその跳躍に驚いたが、そのまま半身になり蹴りをかわして長剣を上へと向かわせる。
 ソウヤはこちらへ向かってくる長剣を見ると、もとに戻してあった自分の長剣を放った。
 パンッ!と木と木がぶつかり合う音がすると、そのまま2人は鍔迫り合いに入る。

「はあぁッ!」
「ッ…!」

 鍔迫り合いは、やはりソウヤは体制が悪いせいか押せることは全くないが、それでも押されない。
 そのままそれが続くと思われたが、次の瞬間…ソウヤの口から放たれた言葉によって勝負は決した。

「…負けました」

 シーン…と一瞬にして静かになる闘技場、管理人も驚いてその場で固まっている。
 その中でソウヤは長剣を地面に落とすと、サッと両手を上げて参ったのポーズを取った。
 その中で、ガチムチグルフがこちらへズンズンと近寄ってきて、こちらを静かに見て言う。

「…なぜ降伏した?」
「あの鍔迫り合いは、俺の方が不利。しかも長剣はもともと力押しをするための武器ではなく、俺は力を備えていませんから」
「ほう…。ならなぜその手首に巻いてある…」

 そこまでガチムチグルフが言った瞬間、ソウヤはガチムチグルフを見据えてガチムチグルフやルリにしかわからないほどの薄く、そして強烈な殺気を放った。
 ガチムチグルフはその殺気にまともにあてられて、硬直してしまう。
 それを確認したソウヤは、殺気を鎮めないままガチムチグルフを静かに見て呟く。
 ガチムチグルフには、ソウヤの目はいくつもの強敵をくぐりぬいてきた威圧感があるように思えた。

「…それはギルドに逆らうとみて良いと…?」
「いや、済まなかった。では、お前のランクを決める」

 ガチムチグルフはソウヤの言葉に素直に謝ると、真剣な表情に顔を戻してソウヤを見る。
 その中でガチムチグルフは考えていた、ソウヤのランクの事を。
 正直に、さっきから考えてAの高ランクを渡すか…さきほどの試合を見てCランクを付けるか…という問題をだ。
 しかし、それは一瞬にして崩れ去っていった。
 なぜなら、さきほどの手首に関してのことに対しては一瞬にして殺気が溢れだしたからだ。
 ガチムチグルフは身体から見て脳筋と思う人も大量にいるだろうが、このグルフはしっかりと頭は回る。
 なので普通のランクを授けることに決定した。

「お前のランクはCだ」

 そういうと、ソウヤは殺気を沈めて小さくため息をつく。
 ソウヤも正直不安だったのだ、このグルフが殺気の強さでランクを決めてしまうことを。
 それと同時に、このグルフも正直不安だった、この決定にソウヤが良いと言わなかったらどうしようか…と。
 その両者の不安も無駄な行為となり、その次々に流れていくのだった。




「良かったな。無事ルリもCになれて」
「良かったです」

 闘技場が終わった後、ソウヤとルリは無事にランクがCになることが成功する。
 ルリの戦いは素早さだけに頼らない戦い方で、ある程度の斬撃は避けてたまに型部分の鎧で受け流して攻撃に重ねていくという攻撃方法だった。
 しかし、ソウヤはこれからの事の戦闘が心配になり始めたので、あの鍛冶屋に急遽いくことに決定した。
 その心配事とは、ズバリは盾役が居ないということである。
 ソウヤは完全に素早さからの攻撃で、ルリは避けてたまに防御による受け流しからの攻撃が主流だった。
 つまり、これ以上の強い敵に合って防御したくてもそれが巨剣を出せるほどの広い場所なのかどうか…がソウヤの不安要素だったのだ。

「ルグド…いるか?」
「あぁ?あ、ソウヤか。なんだ?」
「ちょっと…な。お前いまどれくらい作れてる…?」

 ソウヤはそう聞くと、ルグドはうなずいて『鋼鉄の剣』2本に『鋼鉄のピック』10本ほど出してきた。
 仕事の速さにソウヤは感心すると、ルグドを見て言葉を発する。

「もう1本の鋼鉄の剣はまだだよな?」
「あぁ」
「なら注文を変えていいか?盾に」
「盾か…別にいいが盾って言っても色々種類あるぞ?」
「あぁ。丁度身体がすっぽり入るほどの大きさの盾がほしい。形は…」

 と、ソウヤはルグドに事細かく教えて装備の情報を整え始める。
 それを教えると、ルグドは「ふむ…」と少し唸ってから、コクンとうなずいた。

「なるほどな。身体が全体を覆うほど大きくて長方形型、手に持つ用と腕に装着する両方のタイプ。材料は中級レベルの材料の角部分を使い、盾に横に細長い穴を開けておいて丁度お前の目に合うように作る…か。良いんじゃねぇか?」

 ルグドはそう言ってニカッとソウヤに笑いかけて大きくうなずく。
 ソウヤもルグドの言葉に安心したのか、小さくため息をついて材料を出しはじめる。
 基本的にソウヤは中級レベルの角系をお願いしたのだが、それだけだと柔らかすぎるので盾の厚みの中に上級レベル―瞬死の森産―の角も織り交ぜたいと言ったのだ。
 それとソウヤは2万Rを入れた『金結晶』を取り出してルグドに払う。

「2万…!?お前、本当にどこのボンボンだよ…」
「悪いが俺はボンボンじゃない。それは全部魔物の材料を売り払ってためた金だ」
「どれだけ狩ったんだよ…」

 実際には、『瞬死の森』の魔物をソウヤは1000体は倒しており、材料も本当なら1200は譲らない数なのだが、当然入りきるわけでもなく、50ほどだった。
 そして売り払った数もそのうちの5個ほどで1つの平均額が約10Rという巨額だっただけなのだ。

「で?やるか…?」
「もちろんやるにきまってんじゃねぇだろうが!」

 そう言って材料をかき集めて一気に大量の材料を後ろへ持っていくルグド。
 言うのが遅かったが、ルグドは火の妖精ガルフの一員であり、ガルフは基本的に力持ちでしかも火の妖精なので火を扱うのが上手い。
 なのでガルフはギルドで活躍するか、鍛冶をするかの2つに分かれている。

「そういやソウヤよ、あの武器の事なんだが…お前はどんな武器がご消耗なんだ?」
「あ…すまない。長剣がいいな、やはり」
「しかし、材料が異様に多いんだが?」
「それすべて1つにまとめてくれ。最高品にするために…な」

 そう言ってソウヤは薄く笑う。
 長剣を作ってもらうために異様に材料が多くしたのは、確かに最高傑作を作ってもらうためもあるのだが、もう1つは材料が少ないと”巨剣に変化”できないのである。
 どうしてそれをするのかというと、ソウヤの巨剣、グラギフトは村の救済のあと真っ二つに折れてしまったのだ。
 初めはソウヤも直そうと思っていたが、またあのような強敵が現れた時にまたまっぷたつに折れてもらっては困るので、もうこの際に新しく作ろうとなった。
 グラギフトはもともと巨剣だったので空間魔法を使ってもなにもおこらなかったが、昔、『瞬死の森』で鉄の剣を巨剣化してみたところ、一瞬で刃折れしてしまったのだ。
 そこから仮定してみると、どうしても耐久が持たないようなのである。

「まぁ…ソウヤのことだから考えがあるんだろうけどさ」
「まあな」

 ソウヤはそれだけ言うと鍛冶屋から外に出て、ソウヤは静かに空を見上げた。

 ―なんとか。俺の仲間だけでも守れる力が欲しいから…。
 ―だから…いつまでもここに立ち止まるわけにはいかない…。この装備が整ったら、ほかの大陸に出かけよう。ここじゃ、俺が居候してた国が出回ってるだろうしな…。

 ソウヤは本格的に旅に出ることを決意して、ルリと共に歩き始めた…。 
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