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土蔵の宝

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第二章

「結構採れるぞ」
「こうしてか」
「そうなんだな」
「ああ、そうだ」
 まさにというのだ。
「だからこうして採れるんだ」
「そうか、口で言うのは楽だけれどな」
「そうそう出来ることじゃないな」
「獣になりきるとか」
「とてもな」
「出来ないな」
「いやいや、なろうと思えば」
 平四郎本人だけはこう言う。
「簡単だよ」
「いや、簡単と言われても」
「それは御前だけだ」
「そんなことが出来るなんてな」
「とてもな」
「それが出来るから」
 こう言うのだった、しかしだった。
 平四郎は山に入り木の実や山菜、魚を多く手に入れ続けていた。百姓仕事の傍らそちらにも励んでいた。
 そんな平四郎がある日だ、山から帰ると村人達が騒いでいたので訳を聞いてみるとこう言われた。
「庄屋さんのお宝がなくなったらしい」
「そうなったらしいんだ」
「さっき庄屋さんが土蔵を調べたらな」
「そうなったとのことだ」
「お宝がかい」
 平四郎はその話を聞いてまずは首を傾げさせて言った。
「なくなったのか」
「そうだよ、気付いたらな」
「誰かに盗まれていたらしいんだ」
「土蔵には鍵がかけられていてな」
「壁には穴もなかったっていうのに」
「床も穴がなかった」
「天井もな」 
 つまり誰も入られる筈がなかったというのだ。
「それなのに誰かに盗まれた」
「変な話だと思わないか」
「どうにもな」
「確かに。それでその宝は何だい?」
 平四郎は話を聞いていて盗まれたその宝のことも聞いた。
「一体」
「ああ、巻物らしい」
「昔から庄屋さんのお家に伝わるな」
「偉い人が書いた書だとか」
「掛け軸にする様なな」
「凄いらしいぞ、偉いお坊さんが書かれた」
「そんなものらしい」
 そうした書だったというのだ。
「それが誰かに盗まれたらしい」
「何でなんだ」
「庄屋さんも首を傾げさせていてな」
「誰に盗まれたのか」
「不思議で仕方ないってな」
「皆こうして不思議がっているんだ」
「書な。わしはまともに字が読めんからなあ」
 かろうじて読めるが読めない漢字も多い、書を読むこともなくそれで大して苦労には感じていない。
「書と言われても」
「まあ御前さんには縁がないな」
「書だの掛け軸とか言われてもな」
「少なくとも人が入られる場所じゃない」
「庄屋さんの土蔵はな」
「そうだな、しかしどんな土蔵か」
 平四郎は村人達の話を聞いてだ、考える顔になった。
 そうしてだ、村人達にあらためて言った。 
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