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その日はいつかやって来る

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 バキッ ゴトッ、ゴトッ

 私の眠りを覚ますのは誰だ? 盗掘者なら呪いをかけてやろう。

「ふぅー、やっと開きましたですジャー」
「チッ、これだから金持ちってのは嫌なんだ」
「でも綺麗ですね… まるで血の色みたいだ(ゴクッ)」
「ねえっ、この蓋ってルビー? 頂戴っ、あたしに頂戴っ!」

 やはり盗掘者だ、全員殺してやる。

「やめなさいっ、全く君は、いつもいつもお金の事ばかり、ここは神聖な墓所なんですよっ」
「ええ、後はどうやって目覚めてもらうかだけです」
「そうでござる」
「ええ~~っ! でもこれって売ったらいくらぐらいになるのかしらっ? やっぱり王宮って最高~  他にもこんな宝物で一杯なんでしょっ? ご褒美に一個頂戴~~」
「あんたってやっぱり最低なワケ」
「バカ」

 今、聞き覚えのある声が聞こえた。 夢の中に何度も出て来て、いつも冷めた物言いをしていた奴の声が……

「だめです、どうしてもって言うなら、中の人に聞いてみなさい」
「ホントッ? 女王様っ! アンタッ、何があってもこれだけは貰うのよっ!」

 嫌だ。

「目が覚めないなら~、ショウトラちゃんで~、ペロペロしてあげましょう~~」
「それもだめです、最初にペロペロする人は決まっています」
「あっ、そうですよね。 やっぱりこう言う時って、「王子様のキス」ですよね~」
「ええ…」
「では「勇者どの」どうぞ」
「やだなあ神父、俺、勇者じゃないですよ」
「正確に言うと、今は魔王ですね。 お願いします」
「はあ… 女王様」

 懐かしい声が聞こえてから、顔に吐息がかかり、唇に温もりが伝わった。 その暖かさは私の凍っていた時を溶かし、この悪夢に終わりをもたらした。

「これで、目覚めるんですか?」
「そうです、目を逸らさないで、よく見ていて下さい」
「はい」

 ゆっくりと目を開くと、目の前でマヌケな顔をした男が私を覗き込んでいた。 懐かしいあの人と同じ顔が。

「ワルキューレ」

 私を覚えているのか? 思わず目頭が熱くなって、抱き付こうとしたが… 周りを見回すと、他に何人も私を見ていた。 そして、その比率は圧倒的に女が多かった(怒)。

 キュッ
「ヒッ!」

 もちろん抱きしめた音ではない。 喉笛を締め上げてやった音だ。

「グハッ! ハー、ハー、ハーッ! いきなり何しやがるっ」
「分からないなら教えてやろう、何故最初にここに来なかった? 人間界に生まれたのなら、こいつだけは先に封印を解いてやっても許してやる。 だが他の女は何だ?」

 今の名前は知らないが、あれだけ淋しがっていた奴だ。 タマモにだけは先を譲ってやってもいい。

「おまーなーっ、この条件どれだけ厳しいか分かってないだろっ! ここ浄化されたままなんだぞっ! 魔族も人間も入れない聖地に入って、その上、魔王にならないと封印解けないんだっ! どうやって開けろって言うんだっ?」

 確かに… 私自身も堕落していたからこそ、この中で生きていられたのだ。 もう一度最初から闘って、ここに入って魔王になったのか?

「一人では大変だと思いましたから、仲間の皆さんが一緒に生まれて来るよう、召還しておきました」

 泣きながら笑っているルシオラが、この状況を説明した。 そうか、あの人の求めていた答えはここにあったのだ。

「クッ、クククッ… くっ」
「おい、何笑って…、泣いてるのか?」
「うるさいっ」

 それは禁忌を平然と破る者が行使する天上の力。 魔族でもない、神族でもない、愛情と言う言葉の意味を知ってしまった私と、あの人の間に産まれた子供が起こす奇跡の力、それが全ての答えだったのだ。

「これで、これで良かったんですよね…」
「そうだ… これ、で…」

 このバカ娘も必死に闘っていたのだ、自分の夫であり、血の繋がっていない父のために人生の全てを犠牲にして。

 完敗だ、あの人が千年かかって成し得なかった事を、こいつは生まれてからたった数十年で成し遂げたのだ。 女王の座は譲ろう。

 あの人もこうなる事を知っていたのだろうか? いや、そんな迂遠な計画を練る人ではなかったな。 悪く言えば… そう、マヌケな人だった。 だが、ちょっと待て?

「一つ聞いていいか?」
「え? ああ」
「この地域の魔王になるには、前の魔王、つまりルシオラを倒さなければならない。 どうやって闘った?」
「へっ?」

 これは何か、やましい事がある時の表情だ、女の勘を侮るなよ。

「いや、この人数で押しかけたから、すぐ降参って…… なあ」
「ええ、女王様って最初から優しかったですよ。 この街から出発する時も、装備やお金を下さったり、人間界や天界に行く時は、逆天号を貸して下さったり」
「そうか… 「勇者ヨコシマ」が16歳の誕生日の時に、女王に謁見して「仕度」までしてもらったんだな」
「ど、どうしてそれを?」
「顔に書いてある」

 だから顔を拭くな、そうじゃない。 百年も一緒に暮らして、何を考えているか分からなくてどうする。

「そうですよ、最初に謁見した時、「女王様っ、好きじゃーっ!」って抱き付いてくれましたから、そのまま寝室に誘って、初体験から怪我をした時の回復まで、全部面倒を見させて貰いました」
「「「「「何ぃいいいいっ!」」」」」
「ヨコシマ殿… 私とは前世からの約束があったのでは無かったのか?」
「あ~っ、それ私にも言った~~っ」
「ひどいですっ、ヨコシマさんっ」
「せ、先生… 拙者と言うものがありながら…」
「初めてはわたしで~。 回復はショウトラちゃんがいいって言ったのに~~」
「ポチ、やっぱりルシオラちゃんともしたでちゅね」
「そうか… 最後の戦いも、寝室に引き込んで、朝まで闘ったんだろう? 宿屋の主人か召使いに言われなかったか? 「昨日はお楽しみでしたね」って」

「あっ、それ、あたしの時」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 人間界のボスキャラだったのだろう。 タマモのセリフで女達のスイッチが入った。

「シャドー」
 シャキーン!

 まずメフィストが魔装した。

「やっぱり、アンタを殺して私も死ぬわっ」
「そんなっ、早まらないで下さいっ メフィストさんっ」
「ポチは悪くないでちゅ、悪いのはルシオラちゃんでちゅ」
「そうだな、こいつさえどうにかすれば、他の女は簡単だ」
「「「「ひっ!」」」」

 ベスパのセリフで辞退者が数人出た。 そうか、こいつらまで、この場所にいられるほど堕落させたんだな、またベッドの中で。

「ふふっ、最後に魔王の座を賭けて決闘を申し込んだ時も、最初とは比べられないぐらい立派でしたよ。 何度も「もう許して」って降参したのに、朝どころか昼になっても許してくれなくて困りました」

「お前…、言う事はそれだけか…?(怒)」
「ええ、おかげでこんなに沢山契約ができました」

 ルシオラが契約書を開いて、宙に浮かばせて我々に見せた。

1、結婚及び、重婚と浮気の禁止。
2、1日10回以上「愛してる」と言う事。
3、毎日夕日の見えるバルコニーで見つめ合って、その日の出来事を語り合い、日が沈む瞬間には必ず抱き合ってキスしている事。
4、食事のスタイルは、乙が甲の膝の上に交差するように座り。 食べ物は自分の手では食べず、お互いの手を使って口に運ぶ事。 尚、飲み物は口移しとする。
 (中略)
255、目が覚めた時はお互いの夢を報告し合って、愛する私がどんな状況で登場したか、どれだけ愛しているか報告する事。
256、寝る前と、朝起きた時と、昼間。 1日3回以上必ず(ぴーー)する事。

 それらを全て実行するには、1日が36時間以上あっても不可能だった。

「ですからもう、皆さんの出る幕なんか無いんですよ~、オホホのホ~~」
「お前… 性格変わったな」
「でちゅ……」

 昔の姉妹にまで呆れられ、白い目で見られるルシオラ。 そこで私は棺の縁に掴まって立とうとした。 フラフラする、足の筋肉が弱っているのか? 違う、直立しても全然身長が足りないっ!

「まあ~~、ワルQちゃん、もう「たっち」ができるんでちゅね~~」
「なんだと…?」

 そう、今の私の体は、赤ん坊のように小さくなっていた…

「前の体はでちゅね~、千年以上生きて痛んでたから~、ママが産み直ちてあげたんでちゅよ~~」
「ま、ママッ?」

 さっきから赤ちゃん言葉で喋っているムカつく奴はルシオラだ。 しかしこいつは私の娘だったはずだ。

「どうやって? それにこの蓋は、魔王でないと解呪できないのでは無かったのかっ?」
「は~い、前の魔王で~す、最近は毎日カパカパ開けてました~~」

 そうだ、確かにこいつはヨコシマとは言わなかった。 魔王なら誰でも開けられたのだ。

「ち… 父親は誰だ?」
(ニヤリ)

 この笑いは…… まさか?

「昔、「パパのお嫁さんになる~」って言った、あどけない娘を本気のグーで殴った母親がいまちたね~~、今度はそんな事言ったら、グーじゃすみまちぇんよ~~」
「クッ…」

 あの人に出発の準備をしてやった時、私を孕んだのか? それであの人が帰って来る前、つい最近、私は産まれたのだろう。

「可愛い赤ちゃんだね。 プリンセスとお呼びした方がいいかな?」
「貴様っ!! 何故ここにいるっ!!」

 そこでベスパの後ろから出て来て、私を抱き上げたのは。 見間違えるはずがない、アシュタロスだ。

「私も「妹の」ルシオラに救われたからですよ。 失った民もここに召還され、過酷な外とは隔離されて、皆幸せに暮らしています」
「私が誰だか分かっているだろうっ、それで何故笑っていられるっ!」
「これが彼からの伝言ですから、「全てを忘れよう、お互いを許し合い、愛し合おう」と」
「それで、それで良いのか…? お前は忘れられるのかっ?」
「もう苦しい思い出も、魔族の角も無くしました。 貴方も忘れて下さい」

 こいつが言う通り、私も目覚めてから急激に記憶を失っている。 まるで悪夢を見ていたかのように、何もかも……

「姉上、いえ、プリンセス。 お怒りになると体に毒ですよ、お休みになって下さい」
「ジーク……」

 大きく見えている弟に抱きかかえられると、また眠くなって来た私。 このまま全てを忘れてしまうのか?

「さっ、行きましょうか、ア・ナ・タ」
「はい… 女王様」
「もう~ そんな呼び方はやめて~ 私の方が~「愛の奴隷」なんだから~~ん」

 ルシオラが壊れた… そして他の女達も。

 シャキッ! カチャ! ヒュウウウン! ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「私の太刀の切れ味、自分の体で試してみたいようだなっ!」
「待ちなさい、こいつを殺すのは私よ」
「ポチ、観念するでちゅよ」
「先生~~っ!」
「ヨ~コ~シ~マ~さ~ん~~」
「ヒャクメ…、これから私は竜に変化して暴れます、逃げなさい」
「そっ、それだけはだめなのね~~っ」

 ご丁寧に転生した神族までご一緒か? もう好きにしろ…

「はわわ~~~~っ!」
「「「「「「待てーーーーっ!」」」」」」
「いややーーーっ!!」

 あの人もルシオラと一緒に翼を広げて飛んで行く。 白でもない、黒でもない、煩悩と美しい心が同居した灰色の翼を広げて。

「はははっ! 相変わらず困った小僧じゃのう」
「ええ、カオスどの」
「バ~カ、私が一番綺麗になるって知ってるくせに、あんな「力だけ」みたいな女に手を出すから」
「ふんっ、もうヒーリングしてあげないからっ」
「私も~、ショウトラちゃん貸してあげない~~」
「これも青春よねっ」
「やっぱりあれって、私の勘違いだったんだ… お隣さんだったからって、優しくしてもらったけど、私なんかの手の届かない、雲の上の人だったんだ…」
「小鳩っ、泣いたらあかんっ、泣いたらあかんのやっ!」
「あの、実は私も最近、料理をしてると気分が悪くなったり、酸っぱい物が欲しくなるんですけど」
「「「「「えっ…?」」」」」

「アシュ君には~、アタシがいるから、いいわよねっ?(チュッ)」
「いいかげん子離れして下さい、母上……」

 ベスパに抱き付かれ、青い顔をもっと青くしているアシュタロス。 こいつに掛けた新しい呪いとはこの事か?

「これでピートはアタシだけのモノってワケ」
「それは関係無いと思いますよっ、エミさんっ」
「神よ、哀れな子羊を赦したまえ…」
「なあ、タイガーよ、俺ら忘れられてないか?」
「そうですノー、「運命の恋人」でなくてもいいですケン、デートか合コンしてみたいですノー」
「「じゃあ、私達でどう?」」

 グレートマザーと隊長に、優しく肩を叩かれている二人。

「「か、勘弁して下さい」」

 こうしてまた、私の時間も動き始めた。 時に記憶は人を苦しめ、生は苦痛をもたらす。 忘却は穏やかな眠りを与え、死は新たな誕生と喜びの始まり。

 私も怒りと苦渋にまみれた記憶を捨てて、新しい人生を生きて行こう。 暖かい家庭で笑顔に包まれながら育って行こう。 軟弱と呼ばれてもいい、堕落したと蔑まれてもいい。 例え永遠ではなくても、この素晴らしい一瞬を大切にしよう。 あの永遠の一秒を……


「むか~し、むかし、ある所に何の力も無い男がいました。 何年か経って「お友達」に力を分けてもらっても、その男は誰の願いも叶えられず、一つの魂も集められませんでした。 それから何百年経っても何もできなかった男は、月に隠れて友達に似せた人形を作り始めました」
「だぁ」
「ワルQちゃんは、このお話が好きねえ。 でも私が昔、タマモママに聞いた時は、もっと怖い話だったのに、今はこうなってるのね」
「教育上、良くないんだろうな」

「ねえアシュ君、アタシもまた赤ちゃん欲しいな。 今度は女の子もいいかも」
「母上、私の膝の上に座るのはやめて下さい。 それにどうして息子に相談するんです? 私は再婚相手を紹介されても驚きませんよ」
「アシュ君はアタシを触媒にして産まれただけって言ったでしょ? だ~か~ら~、アタシとは血が繋がってないし、ポチもお父さんじゃないのよ。 さあ、話の続きはベッドの中で(ニヤリ)」
「うっ、うわああ~~~~っ!!」
「もうっ、アシュ君ったら、照・れ・屋・さんっ(ハート)」
「アシュ様、かわいそうでちゅ…」

「ねえ、ベスパ」
「何だ、ルシオラ?」
「出てって」
「えっ?」
「今までは妹だと思って置いてたけど、あれじゃアシュ(にい)が持たないわ」
「でも…」
「アシュ兄って、今は私のお兄ちゃんなの。 ダーリンが前世で造った上級魔族は私と二人だけ。 だからこの世に一人しかいない、お兄ちゃんが苦しむ姿は見てられないのよ」

 パチンッ!
「ああっ! ベスパちゃんっ、足元に魔法陣がっ!」
「待てっ! 話せば分かるっ!」
「さよなら、ベスパ(ニヤリ)」
「うわああっ! 絶対戻って来てやるっ! アシュ君はアタシのもんだ~~っ!!」
(ひ、ひどい、あいつらの時と一緒じゃないか… ベスパも外に放り出されたのか…)

「何事だっ? それにアシュタロスが真っ青な顔をして走って行ったぞ」
「いつもの事でちゅよ……」
「それより女王、またメフィストの軍勢が障壁を破ろうとして、ボーリングマシンを繰り出して来たぞっ」
「オホホホッ、いくら来ても全部塩の柱に変えて、こっちに召還してあげるわ。 私の味方が増えるだけよ」
「しかし、ジーク殿の情報によると、奴は既に旧王国の領土を制覇したらしい。 全兵力1500万を号し、サタンに匹敵する魔体を建造しているとも聞く、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫よ神無ママ、あの「バカ」にはダーリンの魔体は倒せないんだから」
「その、ママと呼ぶのはやめて貰えないか? 私はまだ子供を産んだ事も無いのだ」
「いいの、前世では可愛がってもらったから、朧ママと一緒にずっとここにいてね。 でも、メフィストとかエミって人を見てると、何だか凄く腹が立って来るのよ」
「………」

「ばぁぁ、う~~」
「はいはい、続きね」
(何か外が凄く騒がしいんですけど… 首輪、外してくれないかな…?)

 ルシオラの聖地、神聖結界の外。
 ギュオオオオオンッ! ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「オラ~~!! さっさと結界ブチ破れ~~!! ルシオラの首持って来~~いっ!!」
「あ~んっ、今日のメフィストちゃん怖い~~っ!」
「ピートはあの中よ~~っ! ほら、そこっ! サボってたら命が無いワケ」
「アシュく~~~ん!! すぐにアタシが迎えに行くからね~~~っ!!」
「先生~~~っ!!」

「(また一人増えたな……)なあ大将、あれじゃあ死人が増えるだけだぞ… 境界近くで作業してるだけで、ほとんどの奴が塩の柱だ」
「何? 私に口答えしようって言うの、雪之丞?」
「いや、そうじゃなくて… 別の方法考えないか?」
「ワッシもヨコシマサンを助け出すなら、もっといい方法があると思うんジャー」
「あの契約を破棄させるには、ルシオラを殺すか、契約書を破壊するしか無いのよっ! ほらっ、逆天号っ、いつまでチャージしてんのっ? これだけ生贄がいたら十分でしょ!」
『了解… 断末魔砲発射……』
 ギャアアアアアアアアッ!!
「文句があるんなら、あんたらも一回死んでみる? 良い生贄になるわね」
「「いえっ、すぐ作業にかからせて頂きますっ!」」
(この女… 最初からこれが目的だったのか…… 悪魔めっ)

《なあ、キーやん。 あいつらってアシュタロスより怖ないか? それに摩擦どころか、あそこだけプチハルマゲドンや》
《そうですね、それに世界が5つに分かれたのは、斉天大聖が天界で暴れて以来ですから、また破滅が近付いています》
《さよか、ほんなら実は「勇者ヨコシマ」は双子やった言うオチでどないや?》
《ベタですが仕方ありません、昔、彼が志願した時のように、また分離させても良いでしょう。 それと人間が生まれなくなって滅びかけている人間界と月神族は、ルシオラの創った世界と統合と言う方向でどうでしょうか?》
《せやな、あんじょう頼むわ。 良かったらそっちに混ぜたって》
《いえ、あの世界は、ヨゴレすぎているので、もう天界に迎えるのは不可能です》
《…………》

《進化した人間達は、宇宙に旅立ってしまいましたから、摩擦も我々も不要なのですが、彼らはあれで楽しんでいるのでしょうか?》
《アシュやんと横っちは、基本的にM(マゾ)やからええんやけどな、そろそろ手仕舞いにして、最初からやり直そか。 ブっちゃんもアーちゃんも出張って、太陽系で綺麗事教えたったらええねん。 また勝手に変な解釈して、面白いほど殺し合いしてくれるで》
《そんな時期ですか、私もそろそろ現世に降りる準備をしましょう》
《頼むで~、ズビシッ! と決めたってや》
《…分かりました》

 神聖結界内。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ! キューン、ズバーーン!!
「うわぁ、あのへんって地獄ね… バカ犬も追い出されたし、やっぱりどっちも鬼か悪魔ね」
「何か言った? タマモママ」
「う、ううんっ、何もっ…」
「ほら、私の体ってコスモプロセッサーじゃない? うっかり口にしたり、指を鳴らしたりすると、願いが全部叶っちゃうのよ。 だ・か・らぁ、変な事言うと、体がどこか知らない次元に飛んでっても知らないからね(ニッコリ)」
「うんっ、分かった、分かったから追い出さないでっ」
(あのプライドLLLのタマモが、俺も逆らったらどうなるんだろう……?)

「ばぶぅ」
「はいはい、続きね。 それから長~い時間が過ぎて、その男は、やっとお友達と再会できました。 そして大きなお城でお姫様と結婚して、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。 お・し・ま・い」
(ちょっと違うと思うんだけど…)

「あぅぅ~」
 その日は、来た……
 
 

 
後書き
旧作の骨董品に連日250アクセスありがとうございます。
技術不足でお恥ずかしいような、誤字を訂正していても、拙い話ながら切れ味と言うかキレ方だけは当時のほうが強かったように思います。

そう言えば当時、追い出された後に「続きはどうなりましたか?」と感想メールを頂いて、その方にだけのブツ切れの後半と最終話までお送りしました。
昔で内容は忘れましたが「キャラを分かって頂けて」と言った内容の、上から目線?で返信が有り「は?」と思いましたが、もし原作者様に読んで頂けたとしたら幸いです。
あれほど原作愛に溢れた、今は亡きedithさんに逆のメールが行っていないように祈るばかりです。

当時は確か、「サイボーグ犬が主人公」とか、ご自分のコメントでも「行くな、そっちは砂漠だ」と仰っておられましたが、絶チルとかでキツい週刊連載にまで帰ってこられました。
今にして思えば、死んだ友人の能力使いとか、兵部さん的かな?とも思います、関係ないと思いますが。 
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