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歌集「春雪花」

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 過ぎゆくは

  老いしわが身の

   思い出の

 花ぞ散りなむ

    夏来たりける



 ただ時は過ぎ行く…それを遮る術などない…。

 人は刻一刻と老いてゆくもの…それは私とて同じなのだ…。

 時は思い出となり…誰も居なくなった家に静かに積もる埃のように…胸の奥底へと積もってゆく…。

 ふと見れば…春の花は散り去り、その葉を深い緑へと染めている…。

 あぁ…また、夏が来るのだな…。


 彼に会うことのない夏が…また…。



 返らざる

  恋そ思いて

   小夜更けて

 独りかたぶく

    月を見しかな



 想っても想われることのない恋…。

 溜め息をついて見上げれば、星空に淡い月…。

 彼は…たまには私のことを思い出してくれるだろうか…?

 山並みのないこの土地…彼との接点の切れた土地…。


 為す術のない私は一人…ゆっくりと傾いてゆく月を…ただ、静かに眺める…。



 
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