歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
325
若楓
風に戯る
木洩れ日に
叶わぬ恋ぞ
隠しけるかな
青く茂る若い紅葉の下…風に揺れ、足元に落ちた木洩れ日も戯れるかのように揺らいでいる…。
影も光も…ちらちらと何かを隠すかのように…。
あぁ…私のこの叶わない想いさえも、隠してくれているのかも知れない…。
ほんのひとときでも…寂しさを忘れるようにと…。
恋しきと
呼ぶは蛙の
恨めしき
わが言の葉は
夜風にぞ消え
初夏…蛙は相手を求め、ここにいるのだと鳴いている…。
なんと恨めしいことか…蛙さえ憚らず自らを誇示出来ると言うのに、私は口にすることさえ憚られる…。
私も伝えることが出来たなら…何か変わるのだろうか?
彼に会いたい…彼と生きたい…。
囁いた言葉は無情にも…ただ夜風の中へと霧散するばかり…。
ページ上へ戻る