その日はいつかやって来る
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あれから「お供え」を見せられて、狂喜乱舞している美神の幽霊。 派手な服装が信条だったはずだが、幽霊になった途端、白い和服のジャパニーズトラディショナルスタイルになっている。
「キャ~~ッ! 金塊よっ、ゴールドよっ! お金無いなんて嘘ばっかりっ、一杯あるじゃないのっ!」
『お帰りなさいっ、オーナー』
数百年前、人間の錬金術は完成し、金は製造可能になった。 つまり置物以外の価値は無いが、哀れなので言い出せない。
「令子、金なんて、もう漬物石ぐらいの値打ちしか無いのよ、やめなさい」
「えっ?」
「隊長、それを言っちゃあお終いですよ」
「ああっ、すみません「ご主人様っ」、私のような「奴隷」が余計な口出しをしてしまいました、お許しをっ」
隊長があいつの足に縋り付いて何か言っている、何の芝居だ?
「ママッ、何してるの?」
「ごめんなさい令子、 今の私は横島君の「所有物」なの。 世間で言う「異常な関係」で、「飼い主と家畜」の関係なのよっ」
「なっ、何ですって~っ!」
これも言っている内容は嘘では無い、隊長はこいつが作ったアンドロイドで所有物だ。 しかし、本当の奴隷なら、主人を窮地に陥れるような発言は慎むはずだぞ。
「貴方がいなくなった後、生きる気力が無くなった「ご主人様」を慰めている間に、ずるずるとこんな関係に… 本当にごめんなさいっ(嘘泣き)」
隊長がこっちを見て、口を押さえて笑っている。 確かこいつのプロフィールに「娘を騙して遊ぶ趣味」があったはずだな…
「あ、あれから何があったの…?」
「最初は、おキヌさんが貴方の後釜に座って、奥さんになったわ」
「ひっ! あんた~、何て事を~~」
「まだよ、よく聞きなさい、その後タマモちゃんは愛人になったわ」
「な~ん~で~すって~~」
「まあまあ、落ち着けよ」
ミカミに憑依されても笑っているあいつ。 吸引されても何とも無かったから、幽霊に精気を吸われるぐらい平気なのだろう。
「それにシロちゃんは「ペット」、つまり「愛犬」になったわ」
「いや~~っ!」
穢れた単語を並べられ、耳を塞いで聞こうとしないミカミ。
「現実から逃げちゃだめよ、ちゃんと聞きなさいっ(ビシッ、ビシッ)」
幽霊の胸倉を掴んで、頬を叩いている隊長、器用な奴だ。
「そ、それから…」
「ええ(ニッコリ)、愛子さんは「愛机」に、冥子さんは「愛式神」に、小鳩さんは病気のお母さんのためにお金で買われて肉に、魔鈴さんは魔女狩りから匿ってもらうために(ピーー)に、エミさんはピート君に断られて、やさぐれている所を拾われて縄に、夏子さんも、アンヘルシングさんも、おキヌさんのそっくりさんも…………」
「いやああ~~~~っ! 聞きたくないっ、もう聞きたくないっ!」
「落ち着きなさいっ!(ビシッ、ビシッ)ゼエ、ゼエ…」
娘の幽霊が泣き叫んで嫌がっている所を見て、嬉しそうに笑っている隊長、鬼だ。
「じゃあ……、ひのめは?」
ただ一人残った女性の知り合い、自分の妹の名前を出して、震えながら待つミカミ。
「ひのめは初恋を実らせて、横島君が「初めての人」になったわ」
「いやああっ! もう死なせてっ、死なせて~~~っ!」
「落ち着け、お前はもう死んでいる」
身も蓋も無い言い方だが、今は神無が正しい。 ミカミはこれ以上無いと言うぐらい、キッパリと死んでいる。
「うっ、ううっ、こ~ろ~し~て~や~る~~」
気を取り直して、またヨコシマに向かって行くミカミ。 だんだん怨霊らしい表情になって来たな。
「そうか、残念だな。 今、寄付もできないような汚い金を集めてる所だけど、捨てるしかないか」
「えっ? いくらあるの?」
金の話になると真顔に戻ったミカミ。 あいつもミカミが戻って?からは、妙に嬉しそうにしているので、月神族も私と同じような表情で睨んでいる。
「ほら、これだけある」
ミカミの前に現れたウィンドウに、14桁ぐらいの数字が現れ、今も徐々に増えている。
「ねえ…、これって円? それともドル?」
「今は通貨じゃないんだけど、説明しにくいな。 逆天号、権利にしてどのくらいある?」
『はい、日本が2つ分、自由にできます』
「えっ………… やっぱりあんた、大好きぃ(ハ~ト)」
やはりそう来たか、文字通り「現金な奴」だな。 当時も確か、こいつにも両親と同じ会計の能力や、脱税のための法の抜け道を探る力があると知ってからは、恋仲になって二度と放そうとしなかった。
「男だもんねっ、ちょっとぐらい浮気したって~、家にお金さえ入れてくれれば~、男の甲斐性って言うか~、あはは~~」
ちょっとで済まない思うぞ、母親と妹まで食われているのに…
『逆天号Aより入電、通信を許可しますか?』
「ああ、隊長、ちょっと令子とシルクをお願いします」
「ええ」
「お金っ、お金~~~~っ」
天文学的な財産の目録を見せられ、溶けながら隊長に連れて行かれるミカミの幽霊。
しかし、ベスパの奴、本気か? 戦闘している自覚は無いな。 まあ、こいつも遊び半分だから、大勢に影響は無いだろうが。
「ポチ、何のつもりだい? 偉そうにアシュ様の真似なんかして、ペットのくせに飼い主より偉くなったつもりかい?」
間に合ったのはいいが、なぜ奇襲をかけない? なぜ姿を消したまま異界から出現して断末魔砲を撃たないのだ? 正々堂々名乗りを上げて戦うつもりか、だとしたらこいつは艦長失格だ。
「久しぶりだなベスパ、でも背景ぐらい変えたらどうだ、こっちとまるっきり一緒だぞ」
「お前が真似したんだろうがっ、背景を変えるならそっちだっ!」
「そう言う意味じゃない、お前がいる場所が逆天号なのが丸分かりなんだ。 喧嘩を売るなら船に乗る前とか、外に出てからとか、もう少し考えてくれよ、でないと面白くない」
「何だって? ポチのくせにっ! すぐにそっちに行って勝負してやるよっ!」
頭に血が上ったら先が読めなくなるようだな。 こいつは戦士としては申し分無いが、指揮官としては無能だ。
「お前じゃ相手にならない、そっちにワルキューレ返してもいいぞ」
「ふんっ、お前に支配された、裏切り者なんかいらないね」
「おいおい、無線鬼でいじらしいぐらい報告してたのに、その言い方は無いだろ。 禁止したのは俺達を殺す事ぐらいだ、何ならお前も支配してやろうか?」
「やれるもんならやってみなっ!」
やめろ、挑発に乗るな、私の送っているサインも分からないのか?
「そうか、さっき「何のつもりだ?」って言ったな。 じゃあ目的を教えてやろう、これは儀式だ、アシュタロスを復活させるための儀式なんだよ」
「えっ?」
交渉相手の前で、そこまで取り乱すんじゃない、口を閉じろ、よろけるな、震えるのを止めろ。
「ど… どうしてポチが、アシュ様を復活させる必要があるんだい? あたしを支配… いや、ルシオラを復活させて欲しいのか? でも… アシュ様は許されたんだろ?」
「両方の指導者が許しても俺は許さない。 俺と同じ苦しみを、たっぷり味あわせてやるよ」
「やめろっ! そんな事して何になるっ!」
「その辺りは、お前の心がけ次第だ。 復活した後はアシュタロスの恋人になるも良し、母親になるも良し」
「恋… 人……」
馬鹿め、その程度で涙を流すな。 もう駄目だな、ベスパもこいつの思いのままだ、他の乗員を放り出されて寝返られたら、逆天号が2隻… 悪夢だ。
「ポチ、ベスパちゃんをいじめちゃだめでちゅよ」
そこで画面の下からパピリオが現れた。 しかし、こいつならもっと簡単に支配できそうな気がする。
「よう、お前は神族になったんじゃないのか?」
「ポチのせいで「でたんと」が終わって呼び戻されたでちゅよ、せっかく「サル」と遊んでたのに」
「あんまり変わってないみたいだな。 神族みたいな二枚舌になってたら、一枚引っこ抜いてやろうと思ってたのに」
「ムキーッ! ポチのくせに偉そうでちゅ~~っ!」
「その棒、如意棒だろ、それに頭の輪っか、どうしたんだ?」
「ハ… サルから貰ったでちゅよ… 「せんべつ」だって言ってたでちゅ」
持ち物を指摘されると、急に顔色を変えるパピリオ、お前も弱すぎる。
「そうか、ハヌマンも転生するのか、もう死んだのか?」
「ハヌマンは死なないでちゅっ! まだあたちなんかよりっ」
「弱くなっちまったんだろ、また石に封じられたのか? それとも」
「ちっ、違うでちゅっ!」
そこまで言うと、顔をくしゃくしゃにして泣き始めたパピリオ。
「それなら斉天大聖の名は、お前が受け継いだ。 早く俺を倒しに来い、待ってるぞ」
「ぐすっ… ポチなんか、ハヌマンの技ですぐにギタギタでちゅ」
「どいてなっ、パピリオッ、あたしは何をすればいいっ? お前の事だから、あたしの体が欲しいのかい? それともルシオラやアシュ様を産めばいいのかい?」
哀れなほどに、自分から譲歩して行くベスパ。 お前も私の仲間入りだ。
「ふっ、自分の体を売ってまで、あいつを生き返らせて欲しいのか? 俺があいつの父親? お笑いだな。 だけどそんな下らない方法で痛みを浪費するのは嫌だ」
「じゃあ何をして欲しいっ?」
もうベスパも、隣にいるパピリオを殺せと言われれば、間違いなくそうするだろう。 チラチラと目線を送って、隙をうかがっているのが見える、しかしこいつの要求は多分…
「死ぬ気で俺と戦え、こっちの逆天号を沈めてみせろ! そうすればアシュタロスはお前のものだ。 復活の儀式はもっと時間がかかるけど、それぐらい待てるだろ?」
「わかったよ、どんな方法でもいいんだな?」
「撃ち合いになって負けるより、体当たりさせて自分で乗り込んで来るつもりだろ? やっぱり分かり易すぎるよ、お前は」
「くっ、仕方無いだろ、こっちの逆天号はもう死にかけてる。 アシュ様だっていないから、断末魔砲だってほとんど撃てないんだよっ」
指揮官が自分から弱点を全部晒すか? それとも、もう支配されたのか。
「真っ向勝負か? どっちの逆天号の角が強いか、アシュタロスと俺の角、どっちが硬いか試してみるか」
「ああ、アシュ様の逆天号の力、見せてやるよっ!」
そこで通信が切れた、不自然な切れ方だったから、異界に潜行したんだろう。 ベスパにしては上出来だ。
ザンザンザンザンザンッ!
暫くすると、巨大な船が空間を押し分けて進む音が聞こえて来た。 音と言うより、空間が震動する感触だ。
『警告! X1時、Y4時の方向に異界震動、異界より接近する物体あり! 迎撃します!』
「よし、でも程々にしてやれよ、俺の楽しみが無くなる」
『了解、艦載機全機発進、スモークディスチャージャー展開』
逆天号から、探知を妨害する煙幕が張られ、虫のように何千機ものアンドロイドが飛び立って行く、魔界でこの光景は見たく無いものだな。
『警告! 断末砲魔発射! 衝撃に備えて下さい』
バウンッ、バウンッ、バウンッ!
断末砲魔とは? 昔、妙神山を破壊した兵器と同じか? 異界の中にいる敵まで攻撃できるのか。
ドンッ! ズズズズズズッ
近くの空間が盛り上がり、逆方向に押し出される。 宇宙には慣れたが、こんな奇妙な感触は初めてだ。 昔は直撃だったから、こんな悠長に観察する暇は無かったが、今はベスパがあの感触を味わっている所だろう。
「ベスパちゃんっ! 異界の中なのに攻撃されたでちゅっ、これ… 断末砲魔でちゅよっ!」
「くっ、ポチの奴、偽者だと思ってたのに、どうやって逆天号を作ったんだ? 魔体まで作ったなんて、まさか」
「このままじゃ、近付く前にやられまちゅ!」
「我慢しなっ、外に出たら断末魔砲の撃ち合いになって一発でやられる。 このまま行ける所まで行くよっ」
「うんっ」
『尚も接近中、第二波発射、断末魔砲チャージ』
「また来たでちゅ!」
「深深度潜行…、いや浮上っ、緊急浮上だっ!」
ドウンッ!! ズズズズズズズズッ!
正面の星がゆらめいて、ベスパの逆天号が浮かび上がって来る。 そこでこの船を揺るがす程の爆発と震動があった。
「ベスパにしては良い判断だな、まぐれか? それとも戦士の勘か? まあいい、出て来た所を撃ち抜いてやれ」
『了解』
「浮上したらすぐに断末魔砲発射っ、装甲をこじ開けた所に角を突っ込んでやれっ!」
「うんっ!」
宇宙でこの距離は目と鼻の先だ、昔は隊長の時空転移能力で、時差を作って自滅させたんだったな。 今は新旧の逆天号同士で… いや、千年の時差がある同じ船が撃ち合っているのかも知れない。 今にして思えば、乗員の増減は、儀式が壊れ始めている印だったのだろう。
『警告! 断末魔砲発射!』
「撃てっ! パピリオッ!」
「やっ!」
ギャアアアアアアアアア!!
嫌な発射音が二つ重なり、私は耳を塞いだ。
『被弾しました、右主翼大破、魔力シリンダー損傷、航行に支障あり!』
「撃たれたでちゅっ! 動きまちぇん、もうだめでちゅ!」
「あきらめるんじゃないよっ! このまま突っ込めっ!」
宇宙なので落下もせず、爆煙と破片を撒き散らしながら、真っ直ぐ突撃して来るベスパの逆天号。
『回避します、断末魔砲チャージ、艦載機により攻撃開始』
こちらは回避する余力があるのか。 勝負は着いたな、どれか一つでも攻撃が決まれば、ベスパの逆天号は沈む。
「いや、真っ向勝負だ、こっちも直進、ラム(衝角)戦だ」
『了解』
「馬鹿なっ、もう決着はついた、こちらが危険を負う必要は無いだろうっ」
神無の言う通りだが、これも儀式の一つなのだろう、今度は何が目的だ?
「逆天号とアシュタロスの魔体は、この世に2つ存在してはならない、だからこの煙から出るのは一隻だけ。 俺達が交代する時、あいつも沈む、重なって影となって消える時だ」
「何の事だ…?」
知らない振りをしながらも、聞いてはならない言葉に怯えている神無。 ではベスパとパピリオも消えるのか?
『警告!! 逆天号Aと衝突します! 船体に重大なダメージを負う可能性極大! Gキャンセル最大、耐ショック姿勢を取って下さい!』
「ぶ、ぶつかるでちゅっ!」
「突っ込めっ! アシュ様の力を見せてやれっ!」
ズンッ!! ドドドドドドドッ! ドンッ!
今までで最大の衝撃が襲い、船内の照明が消え、非常灯が点灯した。 モニターが消える前に、ベスパの逆天号が横を向いていたが、何がどうなったか、どっちが上なのかも分からない。
「ふう…、酷い目に遭ったな」
遭ったんじゃない、お前が遭わせたんだ。
「神無、朧、大丈夫だな」
「あ、ああ…」
「うん…、でも生まれてから一番怖かった」
「逆天号、ワルキューレ、生きてるか?」
「ああ、生きてて悪かったなっ」
『自己診断中、復旧まで少々お待ち下さい』
逆天号も生きているらしい、こんな宇宙のど真ん中で放り出されたら、全員のたれ死にだ。
「あ~ん~た~、何やってるの~~」
「おお、令子はちゃんと死んでるな、よしよし」
「ああんっ、そんなとこ触らないで~~」
なんて言い方だ。 暗闇にモワッと現れたミカミだが、二人とも嬉しそうに笑って、とても戦闘中とは思えない。
「そうか、お前には言ってなかったな、俺ってアシュタロスだったんだ」
「へ? 何の話? さっぱり分からないわよ…」
それは私も聞いていないぞ… どう言う意味だ?
「隊長にどこまで聞いた?」
「え… あんたが怨霊を全部昇天させちゃったから、私みたいな霊能者は必要ないって… 私なんか、この世にいなくてもいい存在だから、さっさと消えちゃえって… うえ~~ん、ママが苛める~~っ」
これなら娘の性根が腐っても仕方無いと思える、何て親だ。
「よしよし、除霊は無くなったけど、金ならあるから、今度は武器商人でもやろうか?」
「えっ? いいの? 私なんかがこの世にいてもいいの?」
「あたりまえじゃないか、こいつぅ」
「やぁん、あんた~~(ハート)」
「そんな場合じゃないだろうっ、さっきの言葉はどう言う意味だっ」
思わず聞いてしまったが、その答えは聞いてはいけないような気がする。
「ああ、どこの誰だか知らないけど、俺達を切り分けた奴がいる。 中身も外見も、やりたい事も使命も、全部逆にして「生まれて来てごめんなさい」にした奴が」
「違う、お前は人間だ、アシュタロスじゃないっ」
口では否定して、絶対に認められないが、今までの事件を見れば、人間にはできない事ばかりだ。 だが上層部は全て知っているのだろう、そしてこいつらを切り分けたのが、神族の最高指導者だと言う事も。
「それにお互い顔を合わせたら、相性最悪だから必ず殺しあう。 そうするようにプログラムされてるんだ」
「ちょっとあんた? 自分が何言ってるか分かってるの?」
「ああ、俺は魔神の半身、だからお前も俺に忠誠を誓え、魔界に行けば魔族の体とメフィストの名前を返してやろう」
「は、はい…」
もうヨコシマに魅入られて、私達と同じになったミカミ。 こいつには特別に、元の魔族の体が与えられるらしい……
「ぺっ、ぺっ、さすが千年前の船だ、凄い埃だね。 パピリオ、生きてるかいっ?」
「生きてまちゅよ、でも、どうなったでちゅか?」
「分からないよ、ハニワ兵っ、現状報告」
「あ… もう胴体が折れてまちゅ、逆天号はしんでまちゅ…」
「じゃあ、向こうも殺してやる、行くよパピリオ」
「うんっ」
『動力、復帰… マリア型人工知能、再起動… 魔力障壁、復元… 生命維持装置、照明、復帰…… 艦載機よりの映像、投影します』
正面モニターには、角が折れ、損傷した所から船体が折れているベスパの逆天号が映し出された。 こちらはそこまでの被害は無いようだが、融合? いや、吸収している。
こっちの逆天号は近代船だとばかり思っていたが、こいつも兵鬼だったんだな。 さっき言っていた通り、古い逆天号は影になるのか?
「さあ、お出迎えしてやらなくちゃな、あいつらが乗り込んで来る」
「では今度こそ私も行く」
「ああ、でもどっちも神無の敵じゃない。 寿命の延びたあいつらは弱い、パピリオの相手をしている間、押さえておいてくれ、殺すなよ」
「分かった」
そう言って、また脇腹を撫で始めるあいつ、雪之丞と言う男の遺言が残っているのか?
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