夢幻水滸伝
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第八話 東へその六
「金ヶ崎と長島に」
「今から」
「頼むで、攻めへんでええさかい」
綾乃が二人に応えた。
「あんじょう守ってや」
「はい、任せて下さい」
「どっちも絶対に守ります」
「ほな解散やな」
綾乃は二人の言葉を聞いてにこやかにこう言った、そして。
この言葉を合図にしてだ、五人共一瞬でだった。
姿を消した、転移の術や道具で一気に移ったのだ。そうして中里達もだ。
近江との境に来た、そこの城は安土城程大きくはない。だが内外に多くの将兵が集まっていた。その彼等の中に入ってだった。
中里は芥川にだ、こう問うた。
「この軍勢を率いてやな」
「そや、すぐに出陣や」
「そうするねんな」
「先陣は頼むで」
芥川は中里に顔を向けて告げた。
「そっちはな」
「ああ、わかったわ」
「第二陣と右陣、左陣は部将で確かなのに率いさせる」
「それで自分と綾乃ちゃんは本陣やな」
「そや、後詰もあるで」
その軍勢もというのだ。
「そっちも部将が率いる」
「そうなるか」
「あと僕は何かあったらや」
「本陣から動くか」
「遊軍を率いてな」
そうしてというのだ。
「敵を横や後ろから攻める」
「そうするか」
「ああ、もう敵は岐阜城に集結してたけどな」
「出陣してるか」
「そやろ、もう物見出してるけど」
「その動きを掴んでか」
「そこから攻める」
自分達も動いてというのだ。
「そうするで」
「わかったわ」
「ほなもう出撃や」
早速だった、軍勢は城を発った。芥川の言葉通り中里は先陣を率いていたが彼は出陣したその夜にだ。
本陣に呼ばれてだ、芥川に言われた。当然綾乃と主な部将達も揃っている。綾乃はいつもの巫女服で芥川は黒装束だ。
「敵の動きがわかった」
「岐阜城から出陣してるか」
「ああ、それでまっすぐこっちに向かってる」
「やっぱりそうか」
「ああ、ただ近江に入るまでやない」
「そこまでいってないか」
「関ヶ原にも入ってない」
かつて天下分け目の決戦が行われたその場所にもというのだ。
「むしろその関ヶ原で布陣するみたいや」
「あそこでか」
「わかるな」
「ああ、連中はあそこでか」
「僕等を迎え撃ってや」
「それでやな」
「決戦を挑むつもりや」
中里達の陣営にというのだ。
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