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μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜

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第45話 説教

 
前書き
~あらすじ~

 海未とことり、真姫がいなくなった。
常識人の行方不明となり、一度練習をやめて捜索することになった大地達。誘拐されたかもしれない、という不安を胸に抱きながら一部屋一部屋念入りに探すも、これといったヒントは見つからなかった。しかし、外に出てみると三人は木の下で蹲って……? 

 
 












三人はぶつぶつと、俺らに聞こえない声量で何かつぶやいていた。
何に落ち込んでいるか知らないし、誘拐されたとか怯えたとかそんな様子は特に見当たらない。






 しかし、彼女たちは俺たちの苦悩を知らない。
どうやって外に出たのだろうか俺たちは知らない。



 三人を除いたメンバーは、ほっと安心した顔ぶれも居れば、呆れて何も言えない顔ぶれもいる。というか花陽と凛、穂乃果以外は呆れている。


「アンタが”誘拐”だなんて大げさなこと言うから」
「俺のせいかよ。便乗してのっかってきたのはお前らだろう」
「あんなこと言われたらそうなるに決まってるでしょ」


 それもそうだ。
にこに言われてぐうの音も出ず、いまだにおうおうと落ち込んでいる三人はそうとも知らずに、ただひたすら膝を抱えてため息をこぼす。


「ねぇ海未、一体何があったのかしら?」
「絵里ぃ~助けてくださいー」
「ちょちょっと!?本当にどうしたのよ!?真姫もことりも!?」
「ことりはその名の通り、まだまだことり(・・・)なのです……」
「おかしいわ、私がこんな……」


 この状況はキャラ崩壊という言葉がお似合いであった。
人に滅多にべったりくっつかない海未がうおんうおんとすがりつく光景。ことりの、誰にも伝わりそうもないしょうもないギャグを放つ光景。自分の力を過信し過ぎたお嬢様の項垂れる光景。


……これが、今度のラブライブ!に出場しようとする現在のμ`sの無様な姿である。






~第45話 説教~









「で、とりあえず何があったし」



 あのままでは進むにも進めない為、嫌がる三人を無理矢理リビングに連行し、花陽と希が準備してくれた紅茶で一息ついた俺たち。
 ある程度落ち着いたところで、俺は三人に向けて言葉を放つ。
問いかけに若干の間があったが、最初に口を開いたのが海未。

「実は……スランプになりました」
「……あー、えっと、つまりは?」
「……詩が浮かんできません」

海未は最初の頃から作詞を担当してくれていて、今までの曲の大半を彼女が手掛けてきた。


「えっと、ことりは?」
「衣装のイメージが全然わいてこないの」

 ことりも海未同様に初期のころから衣装案から作成に至るまでの過程を担当してくれていた。振付も最初こそ海未と協力して準備してきたが、メンバーの加入に伴い、今は三年生が担当している。



「真姫は?」
「私は別にスランプでも何でもないわよ!ちゃんと進んでたわよ!」
「その割には譜面真っ白にゃ!!」
「ちょっと!どっから持ってきたのよ!!」

真姫は俺が土下座し、最初の頃から以下省略。



 つまりは、こういうことだ。
新しい曲を作成していくうえで必須な三人がスランプに陥り、お互い相談しようにも三人ともコレなので脱走し、落ち込んでいた。

 どうやって別荘から逃げ出したか今は置いといて。
あまりよろしくない現状を踏まえて、俺は追い打ちをかける。


「まーな。俺たちも三人に押し付けてばかりで申し訳ないなとは思うけどさ、誰にも相談せずに勝手に落ち込こんで、あまつさえどっから逃げ出したのか知らないけど断りもせずにいなくなるのは感心しないぞ」
「それは……すいません」
「わ、私はちゃんと言おうとしたわよ!でもことりが黙っておこうって言いだすから!」
「ふえぇっ!?私そんな事言ってないよぉ~!?真姫ちゃんが『こんな失態プライドが傷つくし、知られるのは嫌よ』って言ったからだよ~!」


 プライドどうのよりそんな押し付け合いしている方が恥ずかしいぞ、と思いながら仕方なく両手を真姫とことりのおでこに差し出す。ことりのモノマネがかなり似ていたのは心に留めておく。

え?という表情をした彼女らに一言添えてから、




「オシオキ執行!!」



ビシィィッ!と、強烈なデコピンをお届けする。かなりピンポイントな当たり方をしたので俺が想像してた以上にいい決まり方だった。


「いったあああぁぁぁっ!!??もうなにすんのよ!!!!」
「ひいいっ!!痛いよ~おでこ痛いよぉ~!!」
「罪の擦り付け合いするからこうなるんだって。今度行ったら希にWASHIWASHIしてもらうからな」



 希のジト目を背後に受けながら、今後どうするか考える。
時間は限られている。今回の合宿の最終目標は”新曲の振付をある程度踊れるようになる”だ。
 既に午後二時を過ぎている。これ以上の時間の浪費を避けたいところ。


「絵里、君はどうするべきだと思う」
「え?ええとそうねぇ。確かに今まで海未達に任せっぱなしだった私たちにも責任はあるわけだし」


 確かにそれもそうだ。
三人があまりにも有能すぎて、逆に素人である俺たちの入る隙が無かったのだ。こうして自然と彼女達に任せ過ぎてしまい、結果がこれだ。
 さらに、今回はラブライブ!出場をかけた新曲である。当然プレッシャーにもつながっているだろう。だからこそ、期待していたのだが……あまりにも負担をかけ過ぎていた事に心の中で反省し、詫びる。

各自が案を探す中、すっと手を挙げるものがいる。
 


「はい!」


穂乃果だ。彼女は、視線が集まったのを確認して絵里に提案する。


「みんなで、みんなで協力して創ればいいんじゃないかな?こんなに人数いるわけだし、みんなで手伝えば何とかなるよ!」
「なるほど……みんなの意見を寄せ集めて、みんなで創っていく新曲。ね。それはいい考えだわ。私は賛成だけど、他のみんなはどうかしら?」



 流石はカリスマ性溢れた穂乃果。
穂乃果らしい提案にすぐさま頷く者もいれば当然、


「しかし穂乃果。それではみなさんの練習時間が減ってしまいますよ」
「大丈夫だよ海未ちゃん!それに新しい曲が無いと何も始まらない。だったらみんなで考えてやった方が時間短縮だよ!」

それでも承諾しない海未に対して穂乃果は、


「穂乃果を心配させたんだからそれくらいの言う事聞いて欲しいなぁ~?」


と、珍しく穂乃果と海未の立場が逆転するものだから海未もこくこくと頷くしかなかった。
ちょっと怖い笑顔だったなと、今更思う。


「わ、わかりました。みなさんよろしくお願いします」





 

 海未が納得(?)したところで、俺たちは次の行動の行動性が見えてきた。
皆がリビングから出ようとし、俺はことりの背中を見てあること(・・・・)に気が付いた。




「じゃあ早速———」
「あー、ちょっと待った」

 俺の声に首を傾げるμ`sのメンバー。
練習始める前に確認しておきたいことがあった俺は、視線を穂乃果からことりへと移す。



「一つ確認しておきたいんだが、君たち三人はどうやって部屋から抜け出したんだ?」
「あー……」

 彼女の苦笑い気味な態度に、海未や真姫も同様に「あっ」とした顔つきになる。
バレたらまずいのか……バレなくてもまずいのか。どちらにせよよろしくない方法で脱出したに違いないのだ。当然そんなの見逃すはずもなく、俺はじわりじわりとことりに攻め寄る。


「何をしたんだ?ことりさん(・・)?」
「だ、大地くん?な、ナニモシテナイノヨナニモ!!」
「なぁことり、既視感って言葉、知ってるか?」


 すでにいつぞやの似非外国人のような片言で否定するも逆効果であった、言わずもコイツは何かしたという確信を得たのであった。
 
 一歩ずつ下がることりをまた一歩追いつめて、距離が狭まった時には完全に涙目で震えあがっていた。そのことりの涙目にとても興奮し、俺は彼女の胸のボタンを一つずつ外していった―――などとRで18的な展開になるわけでもなく、ただ追いつめられたことりの両頬を引っ張る。

もちろん手加減をして。


ひひゃいひょ(いたいよ)~。ひゃにひゅるの(なにするの)~」
「白状したら何もしない。つまり、言いなさい。言わなければこちょこちょするぞ」
「何もしないって、白状する前から既に抓ってるにゃ」


 背後でポツリとぼやく凛の声が聞こえた。
それは確かにそうだ。言ってることとやってることが矛盾していて、俺が手をすっと放したところですぐに彼女は穂乃果の後ろに逃げていった。まるで年上お姉さんに懐いた幼子のように。

「助けて穂乃果ちゃん!」
「んぇ?あーでも、穂乃果もどうやって逃げたのか気になるかなぁー」

 しかし、ここで穂乃果にまでそう言われるとは予想外だったのか、すっと顔色を青くして他のメンバーに助けを求める。が、やはり気になるのメンバーばかりで諦めがついたことりは、がっくり肩を落とした。


「う~これ言ったら絶対怒られるのに~」
「まぁケガが無かっただけでも良かったんじゃないかしら?」
「そ、そうだけど……そんな堂々と言えないよー。私の部屋からロープ垂らして真姫ちゃんと海未ちゃんは逃げ、私がそのロープで降りようとしたら切れちゃって。丁度二階の屋根から飛び降りた(・・・・・・・・・・・・・)だなんて……」








―――二階の屋根から飛び降りた



 その言葉の意味が脳に浸透するまでにたっぷり数秒はかかった。
そして、理解し終えた先に待ち構えていたのは。







「はぁ~っ!?飛び降りたって、はぁぁっ!!??」
「ふぇ~ん!だから言いたくなかったのにぃ~!」


あまりの危険なことりの行動に俺達は先の言葉を失う。


「や、あの。ケガとかは大丈夫なの?相当な高さだったと思うんだけど」
「うん、怪我は全くしてないの。でも、お気に入りの服がぁ……」


 花陽の心配にことりは背を向けて服の被害状況をお知らせする。真っ白のプルパーカーに大きく縦長に敗れているのだ。

 そう、俺がさっきことりの背中を見てあること(・・・・)に気が付いたというのは、まさにこのことである。誰も彼女の背中を見る機会が無かったので気付きやしなかったが、あまりの大きな破れにぎょっとしたのだ。

 おかげで何をして破れたのか理解できた。
ことりの部屋の机が引きずられた跡があったのか。それは机の脚にロープを括りつけて、彼女ら三人の重さに耐えられなくなった結果だろう。
 
 何故あの時開いた窓の先を覗かなかったのか、その時の俺しか知る由もないが、つまりはそういう事だろう。

「それで窓の下の木に引っかかって……枝でビリリッ!って」
「それは運があったからその程度で済んだのよ。そういう危ないことは控えて欲しいわ」
「……ごめんなさい」


 なぜあんなぶっとんだことをしたのか、彼女だけでなく、真姫や海未にも反省してほしい。けど同時にそこまで追いつめていたのか、と考えると俺たちも深く説教する気にもなれずに、ぐすぐすと泣くことりを前に、ただ黙って見ているしかできなかった。







~☆~





「気を取り直してあみだくじをするわよ!!!!!」
「だから唐突すなって。みんなついていけてないだろう」


 しばらくしてことりも落ち着きを取り戻し、ようやく再開することになった。
とはいえ、まだ練習すらまともに始まっていない状態で既に時計は3時になろうとしている。予定ではもうある程度完成していて、練習しているはずなのだが……まぁ、こうなった以上仕方ないとしか言えない。
  
みなも、焦っていないわけではなさそうなので、引き続き元生徒会長の様子を伺うことにする。


「とりあえず、即席だけどあみだくじを作って来たわ。三人一組で真姫、ことり、海未を先頭に準備をしていきましょう」
「はいはい質問です!」


早速手を挙げたのは凛。

「何かしら?」
「大地君はどうするのかにゃって。今までと同じようにご飯とかの準備で良いのかにゃ?」
「そ、そうねぇ~私としてはどこかのグループのアシスタントとして入ってもらいたいところだけど……」

 後先考えると、どちらも重要ではある。
しかし、俺一人にしかできないのはやはり練習後の方である。つまり、もう答えは出ているのだ。


「そっちに三人ずついるわけだし、後のこと考えると俺は飯とか風呂の準備してた方が良いと思うぞ」
「だけど……」

 それでも納得できないのか、絵里は口籠る。何に納得していないのか知らないけど、それだけ不安だとでもいうのか?

「まぁそれでも、俺も心配しているのは確かなんで、合間合間みてみんなの様子見くらいはするよ。これでいいか?」
「……まぁ、じゃあそれでお願いするわ」


 ということで詰まってた案件は片付き、いよいよグループ決めに入る。
絵里が即席で書いてきたあみだくじに、それぞれ自分の名前を書いて隠されたその先を広げて海未、真姫、ことりチームに分かれた。






 海未チームは希と凛が、真姫チームにはにこと絵里、ことりチームには穂乃果と花陽が。
なんとも面白そうな分かれ方をしたところで準備にとりかかることになったのであった。

 






「ん?どうした穂乃果」


 各チーム別々の場所に移動し始めて、俺も別荘に戻って飯の準備に戻ろとしたときに穂乃果に袖を掴まれた。そして穂乃果を見て浮かぶのはひと騒動前のキッチンでのあの(・・)出来事。
 それを思い出してしまい、穂乃果に視線を向けられなくてそっぽを向きながら言葉を放つ。


「もうことりも花陽も川の方に行ったぞ。穂乃果は……行かなくてもいいのか?」
「ちょっと大くんにくっついていたいなって思っただけ」

 ストレートにそう言って俺の手を両手で包み込んでくるもんだから、恥ずかしさのあまり全身の体温がみるみる上昇していく。
ちらりと彼女を見ると—――それはもう大変嬉しそうににこにこ微笑むもんだから。


 こんな華奢な体を抱きしめてしまいたいなんて考えるのは男としての本能だろうか。
抱きしめて穂乃果の温もりを感じたいなんてらしくもなく、それだけが俺の頭の中をぐるぐると駆け巡るのだ。
 穂乃果の頬をそっと撫でて嬉しそうに微笑む彼女をずっと見ていたいと考えるのは病気なのだろうか。どうしてあの一件以来、穂乃果をそんな愛おしい目で見るようになってしまったのだろうか。


―――俺は、彼女に返事を一切していない


 別に穂乃果をそういう対象で見ることができないなんて言ったら、今俺の中で疼く欲求を全否定することになる。
 
 違う、そうじゃない。
穂乃果の気持ちを正面から聞いて、それで意識するようなったのは事実。単純かもしれないけど……まぁ俺も男の端くれ、どう頑張っても足掻けないのだ。

 でも、だけど。
そんな彼女の気持ちに俺は応えられそうにない(・・・・・・・・・)


「ねぇ大くん」
「な、なんだよ」
「ラブライブ!の予選終わったら、どこか遊びに行こうよ?」
「……そうだな、お疲れ様会も兼ねてみんなでどこかに―――」
「二人で、行きたいな」


 生唾を飲み込む。
息が上手くできないのに鼓動がどんどん早まっていくのがわかる。

「まぁ、うん考えとくよ」
「うん!!えへへ~、楽しみ!」
「それはまず、ちゃんと本選に勝ちあがってからな」
「うん、穂乃果……負けないから」


 真剣な瞳とは裏腹に、更にぎゅっと寄り添ってくる穂乃果。
もう俺と穂乃果の距離が恋人関係のソレと変わらないのであった。




そして思うことはただ一つ。




「(やべぇ……穂乃果の胸、あったけぇ……)」



どうかこの気持ち、穂乃果にバレませんように。


そう思いながら穂乃果の胸を堪能しているのであった。

 
 

 
後書き


穂乃果可愛い異論は認めない(パナキチからほのキチに堕ちた壁の図)


読了ありがとうございます。
さて、先日第一話のリメイクを投稿させていただきましたが、もう読んでいただけたでしょうか?今回第一話をリメイクしようと思ったきっかけは、自作品を読み返してちゃんとした小説になってないだとか、以前投稿していたサイトからそのままデータを引き継ぎ、その際生じた文字化けが気になったからです。この二つが理由の大半を占めてますが、一番の目的として”新しい読者を増やす”というのがあります。

 今僕の作品を読んでくださっている方がどういう人たちなのか自分は把握しきれていません。
というか全然知りません。やはりサイトが違うから—――というのが、僕の作品を読んでもらえない一番の理由と言えるでしょう。

あとは話数の量や文の読みづらさとか……

そういった観点から一話のリメイクをし、新たな読者層を掴むことで「ウォールという人間も立派なラ!作家なんですよ」を全面アピールしたいと思った次第です。

今後もリメイク&続話を投稿していくので何ぞとよろしくお願いします。

誤字脱字、並びに話の流れについての矛盾等、お気づきの点がございましたらお気軽にTwitterのDMや感想にてお申し付けください。


それでは。 
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