八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十話 見えないものその九
「そうするか」
「うん、じゃあね」
「そしてだ」
今度は僕に顔を向けてきた。
「君はどうするのだ」
「僕ですか」
「やはりスーパー銭湯に行くか」
「そうですね」
少し考えてからだ、僕は答えた。
「そうしようかなって」
「決めたか」
「決めてはいないですけれど」
それでもだ。
「今は、です」
「そう考えているのだな」
「どちらかといいますと」
「わかった、ではな」
「僕が選んで」
「そうするといい」
ここでだ、観覧車は下がりはじめた。観覧車が頂点にある時間は少ない。もっともこれは物理法則から言って当然のことだ。
ものを投げるとその限界点まで上がる、そして限界点で止まって落ちる。物理の授業でよく出る話である。
それ故にだ、観覧車もだ。
下がりはじめている、僕はその下がる景色を見つつ言った。
「あと少しで景色も」
「うむ、変わるな」
「そうなるね」
「そうなんだよね」
どう変わるかもだ、僕は言った。
「これまで小さく見えていたのが」
「変わる」
まさにとだ、ニキータさんが応えてきた。
「そうなるね」
「ものが大きくなってくるね」
「見えてるものがね」
「海もね」
そこもだ。
「変わってくるね」
「それが楽しいのよ」
ニキータさんはにこにことして話した、カナリアチームのユニフォームは見れば見る程似合っている。見事なまでに。
「これがね」
「小さくなってまた大きくなる」
「これがね」
「観覧車本当に好きなんだね」
「大好きよ」
実際にというのだ。
「今もこうして楽しんでるよ」
「そうなんだね」
「うん、人もね」
「点からね」
「米粒に戻って」
「戻るんだ」
「見る大きさ的にはね」
そうなるというのだ。
「それでミニチュアからね」
「今度はミニチュアなんだ」
「それが人になるのよ」
「ニキータさん的にはそうなんだ」
「そうした感覚よ」
こう僕に話しyてくれた。
「おかしい?」
「おかしくはないけれど」
それでもとだ、僕はニキータさんに話した。
「面白い表現だね」
「面白いの」
「そう思ったよ」
本人に思ったことをそのまま述べた。
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