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レーヴァティン

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第七話 炎の剣と氷の刃その十

「別にいいか」
「そう言うか」
「ああ、戻れないって思ってたからな」
「それは俺もだ」
「だからどうなるかってな」
「不安だったか」
「そうだったけれどな」
 実際に二人共覚悟していた、二度と今自分達がいる世界に戻ることが出来ないのではというのだ。だが、だった。
「こうしてな」
「戻れるならか」
「安心出来るな」
「そうだな、俺もだ」
「御前もか」
「そうだ、それならいい」
 英雄はほんの微かに微笑んで久志に話した。
「俺もな」
「安心出来るか」
「安心して二つの世界を楽しめる」
「ああ、楽しむか」
「そうだ、どちらの世界も現実としてな」
「現実?」
 英雄の今の言葉にだ。久志は。
 その顔をすぐに顰めさせてだ、英雄に問い返した。
「おい、現実ってな」
「この世界でのことでか」
「あっちの世界は夢のことだろ」
「夢は現実でないか」
「夢だろ」
 それに過ぎないという返事だった。
「違うか?」
「いや、起きている時と夢の中にいる時は同じだ」
「同じか?」
「江戸川乱歩によればな」
 日本が生み出した偉大な推理小説家だ、もっとも推理小説というよりは活劇や怪奇と言った方がいいかも知れない。少なくとも少年探偵団のシリーズにはそうした趣が強い。
「夢の世界はこの世界の半分だ」
「起きている時の世界が全てじゃないか」
「アボリジニーも同じことを言っている」
 オーストラリア大陸の原住民である彼等もというのだ。
「そんなことをな」
「そうなんだな」
「そしてだ」
 英雄はさらにだ、久志に話した。
「俺達はこの二つの世界にいてだ」
「そうしてか」
「生きているのだ」
 こう言うのだった。
「今はな」
「そうか、それじゃあな」
「二つの世界を楽しむか」
「ああ、そうするな」
 久志は英雄に顔を向けて彼の言葉に応えた。
「俺もな」
「よし、それならな」
「ああ、これからはな」
「そうしていくとしよう」
「そうするな、いや中々面白いな」
「二つの世界を行き来することはか」
「そう思った、じゃあこっちの世界も楽しんで」 
 久志は顔を上げた、正面を向いているその顔は実に明るいものだった。 
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