八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百十話 見えないものその四
「身も心も奇麗になる」
「そうですよね」
「だからいい」
微笑んでもいた。
「私も明日は行こうか」
「あっ、いいね」
ニキータさんは井上さんのその案に賛成した、同じことに賛成していても賛成する相手はそれぞれ違っていた。
「それじゃあね」
「うむ、ではな」
「明日は一緒にお風呂に入ろうね」
「一緒にというと何かいやらしいな」
「あれっ、今朝も一緒に入ったじゃない」
ニキータさんは井上さんに屈託のない笑顔で言葉を返した。
「湯舟にも」
「それはそうだが」
「ベッドもそうだったし」
「君が入って来たからだ」
井上さんはバツの悪い顔でニキータさんに反論した。
「仕方がなかったのだ」
「あれっ、そうだたかな」
「全く、酔っているにしてもだ」
井上さんは頬を赤らめさせていた、何かその表情が妙に可愛かった。
「悪酔いだったぞ」
「御免ね」
「私達の仲は清潔だというのに」
「清潔なの」
「普通の友人関係ではないか」
だから清潔だというのだ。
「全く」
「僕もそうした趣味はないよ」
「ならばだな」
「そうしたことまではなんだ」
「そうだ、誤解される様な言葉は慎んでもらいたい」
「気をつけるね」
「頼む、ではいよいよだ」
井上さんは赤らめさせていた表情を戻してだ、そしてだった。
あらためてだ、ニキータさんだけでなく僕にも言ってきた。
「頂点だ」
「そうですね」
ここで観覧車の動きが変わった、これまでは上に上にと上がっていっていたがそれがだ。水平のものになった。
そして下を見るとだ、これがだった。
「凄いね」
「そうだね」
僕は下の景色を見ながらニキータさんに答えた。
「あの広いハウステンボスがね」
「全部見えるし」
「人も見えないね」
「うん、何か一杯動いているみたいな」
本当にそんな感じだった。
「麦粒みたいね」
「麦なんだ」
「お米の方がいいかな」
「まあそれはね」
僕はニキータさんに少し苦笑いになって返した。
「何ていうか」
「日本だから」
「そうなるかな」
このことはだ。
「やっぱり」
「じゃあお米ね」
ニキータさんも訂正した。
「そっちにするわ」
「それじゃあ」
「いや、米粒よりも」
「小さいね」
「点ね」
米粒どころかというのだ。
ページ上へ戻る