Blue Rose
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
最終話 薔薇は咲いてその十一
「貴女も」
「元は男の子でも」
「そうよ、私もそれがわかったから」
「あそこでお話してくれたのね」
「けれど。馬鹿よね」
自嘲を込めた笑顔でだ、優子はこうも言った。
「考えてみれば私も」
「えっ、どうして馬鹿なの?」
「だって言うまでもないことだから」
「私のことは」
「そう、女の子になるだけでね」
優子にさらに話した。
「貴女は貴女だし性別が変わるなんて滅多にないだけで」
今はそう思っていた、その考えに至ったのだ。
「何でもないことよ」
「そうなの」
「そのことがわからなかったなんて」
「どうだっていうの?」
「馬鹿だったわ」
自嘲した笑みでの言葉だった。
「本当にね」
「馬鹿だったって」
「それで貴女と無事にやっていけるか」
「あの時は考えていたのね」
「苦しかったわ」
悩んでというのだ。
「本当にね」
「そのことはよく聞いてるけれど」
「貴女貴女なのにね」
「そのことに気付かなかったって」
「いつも言ってるでしょ」
「ええ、確かにね」
「それが馬鹿だったっていうのよ」
優花は優花だと気付いていなかった、そのことがというのだ。
「本当にね」
「自分ではそう思ってるのね」
「女の子になっても貴女は貴女だってね」
「けれど姉さんは」
「貴女の傍にいることを決めたからっていうのよね」
「そうしてくれたからいいと思うわ。龍馬もね」
彼にしてもというのだ。
「私と一緒にいてくれてきたから」
「やっていけた」
「そうよ、私一人だったら今みたいになっていないわ」
「どうなっていたかわからないっていうのね」
「全く見えない、いえ考えるだけでも怖いわ」
優子も龍馬もいない、そうした状況だったならというのだ。
「果たしてね」
「生きていられたかも」
「わからなかったわ、だから姉さん達の決断が今でも嬉しいの」
「決めるまで迷っていたけれど?」
「誰でも何についても迷うわ」
「何についてもなの」
「そう、あらゆることでね」
優花のことだけでなくてというのだ。
「人はどうしようか迷うものだから」
「私があの時迷っていたことも」
「気にすることじゃないと思うけれど」
「そう言ってくれて嬉しいの」
優子は今度は純粋な微笑みで言葉を返した。
「私もね」
「そうなのね」
「そうよ。本当に嬉しいから」
だからだというのだ。
「私は貴女に感謝しているわ」
「感謝しているのは私だけれど」
「私も感謝しているの」
「そうなのね」
「今もね。それでだけれど」
「植物園に行って」
「青薔薇を観ましょう」
その薔薇達をというのだ、優花の新しい門出の場所になったその園へとだ。優子は彼女と共にそこに行くことにしたのだ。
ページ上へ戻る