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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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廃校阻止のために

 
前書き
この世界では女子野球が今よりも普及している状態で進めていこうと思ってます。 

 
満開の桜が咲き誇る春。胸元に水色、赤、緑と学年ごとに識別されたリボンを絞めた少女たちが歩くその道を、青年は一人歩いていた。

「先生!!おはよう!!」
「あぁ、おはよう」

不運なケガ、そして少女との出会いから一年と半年が経った。彼は少女との約束ともつかない言葉を胸に懸命にリハビリにあけくれたが、足が完全に治ることはなかった。

(せめて腕とかなら動かなくてもよかったのによぉ)

負傷した場所の悪さに苛立ちが込み上げてくるが、ぐっと飲み込む。彼は夢だったプロ野球選手への道は閉ざされたが、ならば自分がその目標を達成できる選手を作ろうと、教師になった。しかし、そんな彼にも一つだけ誤算があった。

「まさか女子高に配属されるとは・・・」

野球部の顧問に、できるならば監督なりたいと思っていたところでのまさかの出来事にため息が出そうになる。しかも、最近は女子高校野球が盛んになってきている中で、配属された国立校は野球部がない学校だそうだ。

「まぁ、ゆっくり行くか」

新任一年目、これから先何年も勤めていくであろう教師の仕事。しかも、今勤めているその学校は、近々廃校になると先日理事長から話があったこともあり、青年は経験を積むという意味合いの教員生活の開始と考えていた。


















そんな時だった。その少女たちから誘いを受けたのは。

ガラガラガラ

職員室でその日の授業で使うプリントをコピーしようと、印刷前に最後の確認をしていた朝の時間。職員室の扉が開く。その行動事態は決して珍しいことではない。朝から熱心な生徒はわからない教科を質問しに来ることもあるし、教師もバラバラに入ってくるので、自身が席についた後に人が出入りするのはごく当たり前のことだ。
だが、その来客はいつもとは違っていた。

「「「失礼します!!」」」

やたらと大きい声で職員室へと入ってきた少女たち。彼女たちが向かったのは、パソコンと睨み合っている天王寺の元だった。

「天王寺先生!!おはようございます」
「あぁ、おはよう」

挨拶され、パソコンから目を離し少女たちの方を見て返答する。彼の前にやって来たのは、オレンジ色の髪をサイドテールにした少女と、彼女を中心とした並びで右側に灰色の長い髪を右側で束ね、頭の上にトサカのようなものが乗っている少女。そして、左側には青色の長い髪をした少女が立っていた。

「君たちは二年生の・・・高坂さんと、南さんと園田さん・・・だよね?」
「はい!!」

担任というわけではないが、小規模の学校であるため生徒たちの名前は全員把握しようと、毎日顔写真とにらめっこして暗記した青年は、三人の名前を言い当てることができて安堵する。ちなみに言うと彼は彼女たちのクラスに数学を教えているため、間違えたらそれもそれで問題なのだが・・・

「どうしたの?わからないところでもあった?」

二年生に教える用の数学の教科書を取り出し質問に答える用意をし始める。しかし、その時彼は気付いた。少女たちは一切勉強に使えるような道具を持ってきていないことに。

「今日は質問があってきたんじゃないんです」
「私たちは先生にお願いがあって来たんです」
「お願い?」

取り出しかけた教科書を机へと置き、三人の方に体を向ける。

「先生!!私たちの部活の顧問になってください!!」
「「お願いします!!」」

突然頭を深々と下げる三人。その声の大きさに職員室中の視線が集まり、急いで頭を上げさせる。

「待て待て、色々と突っ込みたいところはあるけど、君たちは何部なんだ?」

なぜ生徒たちから顧問になるようにお願いが来るのか、今の顧問は何をしているのかとか、まだまだ聞きたいところはあるが、まずは最初に何部からやって来たのか確認するべきだと考えた。手芸部や吹奏楽といった部活に誘われても、ただ保護者のような形になるとしか思えないからだ。

「はい!!野球部です」

真ん中の少女から言い放たれた部活動に眉がピクッと動いた。だが、すぐにある疑問が脳裏をよぎる。

「うちに野球部なんかあったっけ?」

今でこそそれなりに知名度はあるが、まだまだ女子野球部がある学校は少ない。この音ノ木坂高校もそのタイプの学校だったはずなのに、目の前にいる少女たちはないはずの部活動の名前を挙げてきたのである。これには誰であっても、驚かずにはいられない。

「実はですね・・・」



















遡ること一日前・・・

「ウソッ・・・」

その日の全校集会で突然告げられた宣告。それを聞いた少女・・・高坂穂乃果は大きなショックを受けていた。

「廃校って・・・」
「つまり、学校がなくなるということですね」

彼女と幼い時から同じ時を共有してきた南ことり、園田海未も同様にショックを受けている。しかし、二人よりも高坂穂乃果が受けたダメージは大きなものだった。

「あぁ・・・」

あまりにもショックを受けすぎた彼女は、その場に倒れてしまう。

「穂乃果!!」
「穂乃果ちゃん!!」
「私の輝かしい、高校生活が・・・」

突然倒れた彼女を心配し、懸命に彼女に声をかける海未とことり。だが、その呼び掛けもむなしく、彼女は意識を失ってしまった。
















「入学希望者が定員を下回った場合、廃校にせざるを得ないって言ったよね?」

それから数時間ほどすると、穂乃果は無事意識を取り戻し、さらには自らの勘違いで高校生でいられなくなると誤解していたことを知った彼女は、普段の明るさを取り戻していた。
しかし、このままでは自分たちの後輩である一年生たちが、ずっと後輩のいない高校生活になってしまう。自分たちもこの学校が好きだから、何としてでも廃校を阻止したいと考えた彼女は、何とかするための作戦を考えることにした。
入学希望者が定員を上回れた廃校を阻止できる。ならばと学校のよい点を見つけてアピールしようと考えた三人だったが、出てくるのはどれも中途半端なものばかり・・・

「はぁ・・・全然ダメだ・・・」

結局いい案が思い付かないまま、その日の学校も終わり帰宅した穂乃果は深いため息をする。落胆した彼女が居間へと入ると、そこにはファッション誌を広げた妹、高坂雪穂が寝転んでいた。

「おかえりぃ」
「ただいま・・・」

力ない挨拶をしてから鞄を置いてテーブルの前へと腰掛ける。それからあんこがなんたらかんたらで一悶着あったが、母に怒られた彼女はさらにションボリとしながらテレビを付ける。

『東京都春季高校野球大会、選抜出場校東日本学園は初戦となる東江戸川高校戦を12対0の5回コールドで突破しました』

テレビから聞こえてきたのは現在東京都で行われている春季高校野球都大会のニュースだった。それが聞こえた途端、ファッション誌に視線を落としていた妹が顔を上げる。

「やっぱり東日本強いよねぇ」
「雪穂知ってるの?」

頬杖をつきながら先ほどのニュースの感想を述べる妹に、何も知らずに問いかける姉。だが、その言葉は妹のハートに火を付ける。

「お姉ちゃん知らないの!?東日本学園っていったらUTXと同じくらい人気がある学校なんだよ!?」
「ご!!ごめん!!」

彼女からすればUTX学園のこともイマイチわかっていないのだが、そんなことはお構い無し。

「東日本学園は進学校ってイメージが強いけど、部活もいい成績残してるんだよ。特に野球がずっと強くてね、ほとんどの部活で都大会優勝のUTXが唯一勝てないと言われてる高校なんだよ」

熱弁を振るう彼女にタジタジの穂乃果。それからしばらく語られるのを聞いていると、妹から信じられない言葉が告げられる。

「UTXもいいけど、東日本もいいかなぁ?でもちょっと遠いかな?」
「えぇ!?雪穂音ノ木坂じゃないの!?」

代々音ノ木坂高校へと進学していた家系の中で、当たり前に妹も自分の後輩になると思っていた。それなのにそんなことを言われたら、驚かない方がどうかしている。

「だって音ノ木坂なくなっちゃうじゃん」
「それは・・・」

返す言葉もないと、押し黙ってしまう。静かな時間が流れていたその時、神が舞い降りた。

『また、本日行われました女子野球特別強化試合では、注目のUTX高校の綺羅さんが――――』

ガタッ

机を強く叩きつけその場に立ち上がる。いきなりどうしたのかと驚いた雪穂は目を点にしている。

「ねぇ、女子野球って有名なの?」
「え?まぁ、最近はすごい人気らしいよね。全国大会だとテレビ放送されることもあるらしいし」

甲子園大会と時期が被っているためあまり注目が集まっていないが、近年は地方大会も行えるほどに出場校が増えており、この日のニュースでもあるようにレベルアップのための強化試合なども組まれるほど、現在力が入れられている。

「これだぁ!!」


















「で、廃校を阻止するために、女子高校野球で学校を有名にしようと」
「はい。そこで、正式な部活動として申請したいのですが、なにぶん野球をやれる人数も揃っていない状態ですので、先に顧問の先生を見つけてから申請してみてはと思いまして」
「考え方が悪どいな」

顧問がいれば、生徒会や学校側も断りにくくなる。しかも詳しく聞いてみると選ばれた理由が「どの部活の顧問でもないから」と言われ、苦笑いをするしかない。

「まぁ、別にいいけど」
「「軽ッ!!」」

断る理由もないし、何よりまた野球に携わるチャンスができたと内心喜んでいる天王寺。しかし、自分の素性が知れるのを嫌った彼は、ある条件を提示した。

「ただし、俺は部員集めには協力できないぞ」
「えぇ!?なんでですか!?」

耳鳴りがするほどの大きな声に耳を塞ぐ。頭が落ち着いたところで彼はその理由を話し始める。

「教師から圧力がかかったなんて言うのが知れたら学校の印象が悪くなるし、何より君たちがどこまで本気なのか知りたい」
「本気・・・ですか?」

厳しい環境で戦ってきた人間だからこそ、試してみたいと思った。何より、彼女たちの目が真剣だったのを見抜いていたから、すぐにでも人は集めてみせるだろうと、期待もしていたからだった。

「わかりました。必ず九人集めてみせます」
「期待してるよ」

その言葉を残し職員室を後にする三人。彼はその背中を見届けると、平静を装いながら、心の中では色々なことを考えていた。

(野球で廃校を救う、か。なかなか面白いことを考えるよな。もっと既存の部活で何かしようとか思うのが普通・・・あれ?園田って弓道部に入ってたような・・・)

次々に沸いてくる疑問に頭を悩ませている剛。その直後・・・

キーンコーンカーンコーン

「やベェッ!!プリント印刷してねぇ!!」

やらなければならなかったことが抜け落ちていたことに、大慌ての主人公であった。



 
 

 
後書き
ちょっと雑な気もしますが、メインは全員揃ってからの野球なので部員集めは重きを置かない方向で行かせてもらいます。 
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