レーヴァティン
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第五話 神殿でその十四
「日本よりも過酷なな」
「あっちの冬は凄いからな」
「パリも緯度では宗谷岬よりも北にある」
「そう思うと寒いな」
「だから凍死者も多く出た」
言うまでもなく北欧やロシアはとりわけだ、冬の栄養不足で壊血病になる
「昔はか」
「冬が近付くとその備えも必要か」
「凍死しない為にはか」
「そうだ、注意しないとな」
「何かと注意することあるな」
「この世界ではな、しかし人々の体格がいい」
英雄は再びこのことについて話した。
「食べものは恵まれている」
「少なくとも中世の欧州よりはか」
「十九世紀初頭のフランス以上にな」
「市場でも食いもの多いしな」
「畑もよかった」
村で見たそうしたものもというのだ。
「それを考えるとな」
「食いものがいい分か」
「栄養には困らなくてだ」
「冬も乗り越えやすいか」
「そうだろう、まだな」
栄養を満足に摂取出来る分というのだ。
「このことは頭に入れておくとしよう」
「そうだな、そういえば肉もパンも美味いし」
「胡椒まであってな」
「胡椒なんて中世の欧州にないしな」
これを求めて海に出た程だ、最初はイスラム教徒の驚異を受けて彼等の後ろにいるプレスター=ジョンの国を探して彼等と同盟を結ぶのが目的だった。
「それこそ」
「トマトやジャガイモもな」
「それもなかったしな」
「特にジャガイモだ」
「そうそう、それがあってな」
久志はジャガイモの話が出て英雄を指差して応えた。
「随分とな」
「食うものがいいな」
「あれがあるとないとで全然違うからな」
「痩せた土地でも多く育つ」
「寒い場所でもな」
「この世界にはこれがあるからだ」
それだけにというのだ。
「かなり違う」
「だよな、ジャガイモの存在が大きいな」
「その分この世界の栄養状態はいいな」
「そうだな、じゃあな」
「ああ、そうしたことも頭に入れてだ」
「この世界でやっていくか」
「神殿の後もな」
英雄はこう言い加えた、そうした話をしつつ先に進むのだった。神殿を目指して。
第五話 完
2017・2・3
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