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風魔の小次郎 風魔血風録

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9部分:第一話 小次郎出陣その九


第一話 小次郎出陣その九

「ちゃんとスタンバイしている」
「武蔵もいるか」
「あの二人がいるのなら安心だな」
 三人の中の一人は彼等の姿を認めて不敵な笑みを浮かべるのだった。
「この試合ももらった」
「我々の勝利だ」
 彼等はそれを確信しつつ戦いに赴く。彼等にとってサッカーの試合も闘いであった。それは今グラウンドに現われた小次郎にしろ同じであった。
「いやがるな」
 誠士館の方にいる三人を見据えて呟いていた。
「あの時の連中か。性懲りもなく」
「小次郎さん」
 呟く小次郎に対して姫子が声をかけてきた。
「んっ!?姫ちゃん」
「小次郎さんはセンターフォワードですよ」
「そうなのか」
 それを聞いてはじめて知ったような顔であった。
「それならそれでな」
「ええ。御活躍を期待しますね」
「わかってますって。じゃあ」
 間も無くキックオフだった。それぞれポジションに着く。
「いっちょやりますか」
 三人を見据えての言葉だった。こうして試合がはじまった。
 ホイッスルが鳴ると同時に激しい試合がはじまった。三人がボールを持ちドリブルする小次郎に対して一斉にタックルを仕掛けてきたのだった。
「あの時の風魔だな!」
「ならば容赦はせん!」
 彼等は口々にこう言いながらタックルを仕掛ける。だが小次郎はそのタックルに対してボールを両足首で持ってそれと共にジャンプした。それで彼等のタックルをかわしたのであった。
「なっ、我等の攻撃を」
「かわしただと!?」
「そんなのすぐにわかるんだよ」
 小次郎は着地してから彼等に告げた。その間に彼等も立ち上がる。
「気配でな」
「ふん、同じということか」
「我等とな」
 三人はそれを聞いても悪びれずに小次郎に対して言い返してきた。
「忍同士ということか」
「なら話が早い」
 そしてまた言ってきた。
「ここで潰してくれる」
「覚悟しろ」
「へっ、夜叉だからって容赦はしねえぜ」
 小次郎は平気な顔で三人に対して顔を向ける。表情は余裕のままだった。
「むしろ。徹底的にやってやるからよ」
「ならば・・・・・・来い!」
「叩き潰してやる!」
 あらためて宣戦布告となるのだった。試合は前半は小次郎と三人の死闘の様になった。
 小次郎が攻めれば三人が守り三人が攻めれば小次郎が守る。試合は一進一退の攻防であった。
 その工房の中で話が進む。小次郎がシュートを出そうとするとそこに三人組がタックルを仕掛ける。
「今度こそ!」
「死ねっ!」
 叫びながらタックルを浴びせる。しかし小次郎は彼等を見ても不敵な笑みを浮かべていた。
「来やがったな」
「何っ!?」
「俺はな。この時を待っていたんだよ」
 不敵な笑みを浮かべたままでの言葉だった。
「待っていただと!?」
「そうさ。まんまと来やがったな」
 シュート体勢に入ったまま言葉を続ける。
「これで・・・・・・ケリをつけてやるぜ!」
「くっ!」
「しまった!」
 三人が気付いたその時にはもう遅かった。小次郎は三人がタックルを浴びせるよりも早くシュートを放っていた。それはゴールを狙ったものではなかった。
 三人の顔を狙っていた。しかも正確に。まずは一人の頭を吹き飛ばす。
 それが跳ね返りもう一人に、続いて最後の一人に。それを受けて三人は大きく後ろに吹き飛ばされた。
「ぐうう・・・・・・」
「攻撃仕掛ける時には注意しろよ」
 小次郎は吹き飛ばされ地面に叩き付けられた三人に対して告げた。ボールはその間も動きキーパーのガードをかわしてゴールに入っていた。これでまず一点だった。
「守りが薄くなり易いからな」
 また不敵な笑みを浮かべる。小次郎はゴールを決めると共に見事三人を倒したのだった。
 それから試合は有利に進んだ。小次郎はもう一点入れた。それを見て誠士館側に焦燥の色が浮かんできた。
「おい、まずいぞ」
「このままじゃ」
 観客席の方からそんな声があがる。それは武蔵と壬生も聞いていた。
「三人がやられただけじゃない」
「あいつか」
 二人は小次郎を見ながら語っていた。彼等も既に小次郎のことは見抜いていたのだ。
「このままあいつを自由にしておくと試合に負ける」
「だが三人はもういない」
 武蔵は小次郎を見据えながらそれを壬生に対して告げた。
「それで。どうするのだ壬生」
「案ずるな武蔵」
 しかし壬生は武蔵のその問いに対してクールに笑うだけだった。
 
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