レーヴァティン
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第五話 神殿でその十二
「あらためて出発だな」
「馬にも乗って防具も買った」
「これまでよりずっと楽な旅になるな」
「死ぬ可能性は格段に減った」
そうした備えによってだ、言うまでもなく。
「油断せずに行くぞ」
「ああ、死ぬ可能性は減ってもな」
「そうしていくぞ」
「それじゃあな」
久志も笑顔で応えた、そしてだった。
防具を着けて馬に乗ったうえで町を出た、その時にだった。
久志は馬に乗りつつだ、隣で馬に乗っている英雄にこんなことを言った。
「しかしつくづく乗り心地が悪いな」
「馬はか」
「鞍はな」
馬の背に置いているそれに乗っているがというのだ。
「硬くてしかも揺れてな」
「そうだな」
「ああ、随分な」
「そして乗っていてもだ」
「何だかんだで身体動かすしな」
普通に乗っていてもというのだ。
「脚を上下させて辛いものがあるな」
「だからスポーツにもなっている」
乗馬それ自体がというのだ。
「それも結構激しい」
「だよな、これで駆けたりしたら」
「余計にだ」
「運動になるな」
「それが馬に乗るということだな」
「そうだよな、とにかく乗り心地がな」
久志は眉を顰めさせてさらに言った。
「よくないな」
「それは慣れるしかない」
「やっぱりそうか」
「尻を痛めることも覚悟でな」
「つまり痔だな」
「実際になる」
馬に乗っていると、というのだ。
「ナポレオンの様にな」
「ああ、あの痔だったのか」
「そして便秘と湿疹、胃下垂も持っていた」
「持病多かったんだな」
「そのうちの痔と胃下垂がいつも馬に乗っていたからだという」
愛馬の名はマレンゴといった、彼がイタリアで勝利を収めた地の名だ。
「湿疹は戦場で感染した」
「色々と大変だったんだな」
「あの人もな」
「っていうか英雄も痔だったんだな」
「そうだった」
「髪の毛も薄かったしチビだったしな」
「その二つは関係がないと思うが」
英雄は久志に顔を向けて告げた。
「特に」
「まあそうだけれどな」
「ついでに言うがナポレオンは小柄ではなかった」
「あれっ、そうなのかよ」
「当時のフランス人の平均身長より高かった」
英雄は久志にこの真実も話した。
「実はな」
「そうだったんだな」
「当時のフランス人の平均身長は一六〇、ナポレオンは一六四か一六七だった」
それ位だったというのだ。
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