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風魔の小次郎 風魔血風録

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5部分:第一話 小次郎出陣その五


第一話 小次郎出陣その五

「何だその言い方は」
「だからよ。何でもねえって言ってるだろ」
「我が白凰学園の総長だぞ。その口の聞き方は何だ」
「いえ、柳生さん」
 しかしその姫子の方から言ってきたのだった。そのにこやかな笑顔と共に。
「構いません。学園内でもそうではないですか」
「それはそうですが」
「いや、流石は姫ちゃん」
 小次郎も小次郎でそれに乗るのだった。
「そう言ってもらえると有り難いねえ」
「全く」
 蘭子は苦い顔になる。しかし小次郎は涼しい顔のままだ。そんな彼に対して姫子がまた声をかけてきたのであった。
「ところで小次郎さん」
「何でしょうか、姫様」
「風魔の忍なのですね」
 それを彼に問うてきたのだった。
「確か」
「ええ、その通りですよ」
「風魔の里から連れて来ました」
 蘭子が彼の横で畏まった様子を見せて述べる。
「まだ若いですが力はあるとの総帥の御言葉です」
「そうですか。忍なのですか」
「あれっ、姫さんって」
 小次郎は姫子の言葉を聞いてあることに気付いた。
「忍を見たことがねえのか」
「当たり前だ。忍だぞ」
 蘭子の言葉は釘を刺すような感じであった。
「表に出るものじゃない。それでどうして見たことがあるんだ」
「表に出ない」
「そうだ。さっきのあれも」
 流水剣を使った時のことである。
「目立ち過ぎだ。何を考えている」
「目立ち過ぎも何もよ」
 小次郎はそんな蘭子の言葉を全く聞いてはいない。相変わらずのおちゃらけた様子を続けるだけだった。しかもそれをエスカレートさえさせている。
「俺は忍だぜ。だから」
「何だ?」
「その術を使ってるだけなんだよ」
「術ですか」
「そうなんですよ」
 今度は姫子に対して答えた。彼女の前ではデレデレになっている。
「それでですね。その術が」
「はい?」
「こんな感じなんですよ」
「あっ」
 不意に姿を消した。姫子も蘭子もそれを見て部屋中を探し回る。だが小次郎は何処にもいない。しかしここで何処からか声が聞こえてきた。
「ここだぜ」
「むっ!?」
「ここ!?」
 二人が上を見上げるとそこに小次郎がいた。天井の一部を開けてそこから中に入り顔を覗かせていたのであった。
「そんなところに」
「これだけじゃないですよ」
 驚く姫子に対してまた述べた。
「こんなことも」
 また姿を消した。二人はまた部屋の中を見回すがやはり何処にも姿はない。しかしここでまた小次郎の声が聞こえてきたのであった。そこは。
「ここだってよ」
「!?今度は」
「窓!?」
「よお」
 窓の向こうにいた。白凰の旗の上に座っている。そこから二人に対して手を振っている。
「こういうことですよ、姫さん」
「凄い・・・・・・」
「凄いとかそういう問題ではありません」
 しかし蘭子はそんな小次郎を見ても驚かない。それどころかまた怖い顔になって懐から何かを出してきた。それは。
 小刀だった。それを旗のポールの上にしゃがみ込んでいる小次郎に対して投げたのだった。しかも狙いはかなり正確だった。それを見て小次郎は思わず慌てた。
「うわっ、何しやがる!」
「さっさと戻って来い」
 慌てて首を左に捻ってその小刀をかわした小次郎に対して告げる。
「ふざけるのもいい加減にしろ。姫子様の御前だぞ」
「だからっつってこれはねえだろうがよ」
「五月蝿い、さっさと戻れ」
 有無を言わせぬ口調だった。こうして小次郎を部屋に戻させた。だが何はともあれ小次郎は白凰学園に助っ人して入った。しかしそれを遠くから見ている男がいた。
 
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