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風魔の小次郎 風魔血風録

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44部分:第五話 メッセージその二


第五話 メッセージその二

「さあ、これが貴様にかわせるか」
「かわす必要はないよ」
「何っ!?」
「だって。こうすればいいから」
 言いながら右手を前に出してきた麗羅だった。
「さあ行くよ」
「むっ」
「これが風魔九忍麗羅の炎」
 右手の甲のところに赤い炎が沸き起こってくる。それは次第に大きくなりやがて巨大な赤い火球になったのだった。
「風魔朱麗炎!」
「何だとっ!」
 赤い炎は麗羅の腕から放たれるとそのまま一直線に飛ぶ。そして紫炎の夜叉紫砲炎の火球を殆ど消し飛ばしそのまま紫炎に向かう。自身の炎を消され呆然となっていた彼はその炎を避けることはできなかった。胸に炎を受けることになってしまった。
「ぐっ・・・・・・。しまった」
 ガクリと左膝をつきながら呻く。
「この私の炎を上回るとは」
「炎の強さ自体は互角さ」
 麗羅はその紫炎に対して言う。
「互角だと」
「そうだよ。貴方の炎は幾つかに分かれていたけれど僕の炎は一つだった」
 麗羅が言うのはそこであった。
「だから破ることができたんだ。力は分散しているより一つにした方が強いからね」
「抜かった・・・・・・」
「けれど。貴方も見事だよ」
 ここで麗羅は紫炎を褒めるのだった。
「戯言を。私は敗れた」
 しかし紫炎は首を横に振ってその賞賛を拒む。
「最早闘うことはできぬ。止めをさせ」
「そのつもりだったけれどそれをできなくしてくれたからね」
「何っ!?」
「ほら、これ」
 麗羅は己の右手を見せた。見れば肩のところが焼けている。
「さっきの紫砲炎の一つが当たったんだよ。それでね」
「そうか。吹き飛ばされなかった炎でだな」
「思ったより傷は深いみたいだから。僕も闘えないよ」
「そういうことか」
「それに」
 麗羅は後ろを振り向いた。項羽は右膝を着いたままだ。
「項羽さんも心配だし。勝負はこれでね」
「・・・・・・わかった」
 紫炎は麗羅のその言葉を受けて頷いた。
「項羽さん、大丈夫?」
「済まん」
 麗羅は彼を右から立ち上がらせた。肩に担ぐ。
「傷は深いね。蘭子さんのところじゃ薬はなさそうだ」
「どうするつもりだ、それで」
「一旦里に戻りましょう」
 麗羅はこう彼に提案した。
「そこで治しましょう、それでいいですよね」
「里か」
「それでどうですか?」
「御前に任せる」
 項羽はそれを断らなかった。
「だが。気をつけろ」
「気をですか」
「御前もわかった筈だ。流石は夜叉八将軍だ」
 彼が言うのはそれだった。
「やはり手強い。小龍にも伝えておいてくれ」
「わかりました。それじゃあ」
「紫炎」
 項羽は最後に紫炎に対して言ってきた。
「俺は一旦これで里に帰る。だが」
「また戻るというのだな」
「そうだ。その時こそ」
「わかった、思う存分相手をしてやる」
「楽しみにしていろ」
 項羽は麗羅に助けられ姿を消した。後には紫炎と倒れ伏す白虎が残った。ここで白虎が何とか立ち上がり呻く声で呟くのだった。
「項羽め、この白虎に止めをささなかったのか」
「目覚めたか」
「その声は紫炎か」
「そうだ」
「貴様が来てくれたのか」
 言いながら声の方に顔を向ける。すると白虎は思わずその顔を強張らせてしまった。
「・・・・・・俺を救う為にそこまで」
「済まん、白虎」
 紫炎は彼に謝罪の言葉を述べた。
「私はこれ以上闘うことができぬ。だが項羽も戦線を離脱した」
「項羽がか。よくやった」
「また戻って来るだろうがそれでもだ」
「そしてその傷は誰にやられた」
「麗羅にだ」
「あいつも来たのか」
「そうだ。不覚を取った」
 苦い顔で彼に語る。
「そのせいで御前に迷惑をかける」
「そして麗羅は何処だ」
「項羽を風魔の里に連れて行ったそうだ」
「むっ、それでは」
 白虎はそれを聞いて悟った。
「今風魔の忍は二人共いないのか。よくやった」
「私を褒めてくれるか」
「後はこの白虎に任せろ。貴様の健闘無駄にはせぬ」
「やってくれるか」
「俺の力は知っている筈だ」
 立ち上がって言った。
「この白虎の力をな」
「では。頼む」
 紫炎は白虎を信じ彼に告げた。
「私もこれ以上の闘いは」
「無理をするな。姫様も喜んで下さる」
「姫様も」
「そうだ。だから下がれ。後は俺一人で風魔を一人でも多く倒してやる」
「頼むぞ」
「うむ」
 こう言葉を交えた後で紫炎はその炎の中に消えた。白虎は一人になるとまずは。紫炎のことを呟いた。
「御前に言った通りだ。後は俺が」
 その右手を顔の前に掲げる。すると。
 その顔が項羽のものになった。そのうえで不敵に笑ってみせる。
「これでよし。あの二人が戻って来るまでに風魔の忍を全滅させてやる」
 こう言って何処かへと姿を消した。彼は紫炎の健闘を受け自らは再び戦場に向かうのだった。夜叉八将軍としての誇りを胸に。
 
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