Sword Art Online 無限の剣製
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プロローグ2
電脳世界の天空に浮かぶ巨大な鋼鉄の島。
その名も、浮遊城アインクラッド。
俺ことプレイヤーネーム《シロウ》はこの仮想世界に浮かぶ1から100までの層で構築されているという巨大な島の、第1層にいた。
ここはVRによる、仮想世界。
現実のどこにもありはしない、幻の島。
そんな島にそびえたつ、歪な城。
なぜ俺が今、こんな場所にいるかというと、それは二か月前に遡る。
「ソードアート、オンライン?」
聞きなれない横文字を、聞き返す。
「ええ、そうよ。ほら、衛宮くんってそーいうの好きそうじゃない」
向かいの女は慣れないスマホいじりながらいう。そーいうのってどーいうのさ。
「いや、待ってくれ。俺は桜よりかは詳しいって程度で、ゲームなんかはてんで素人だ。それに、VR? とかいう最新でハイテクなのは触れたことさえないぞ」
「はぁ...そんなだから士郎は視野が狭いってよく言われるのよ」
「それをよく言うのは、俺の知る限り1人しかいない」
「......あら、そうだっけ?」
そんなふうにあからさまに首をかしげる少女の名は遠坂凛。
ちなみにここは俺の家。
当たり前のように人の家の茶の間にいる事実が、本当に当たり前になってきたことにそろそろ危機感を感じるべきなのか否か。いや、是だな。考えるまでもなく。
「そんなことより遠坂さん。今日は桜と約束があったんじゃないんですか?」
どうやらスマホゲームをしているらしい遠坂に話しかける。
「あぁ、それなら大丈夫。暇なら弓道部見にこない?ってだけだから」
「なら行けよ......」
どうせ俺の家に来てダラダラスマホゲーしてるだけなんだから。桜を優先してくれ。
「.........ねぇ、士郎」
スマホを置いた遠坂が、上目遣いでこちらを見る。
遠坂は性格がかなりアレで目も向けられないが、見た目だけは、その、端整...なせいで、そんな顔をされたら、困る。
もちろんそんなことは言えないため、いつも通りの平静を装う。
「ん?」
すると遠坂ははァァとため息をついて、
「おっどろいた。士郎、なんにも気づいてないんだもん」
この女、失礼なことをしれっと言う。
「いや待て。遠坂はイライラとか割と顔に出るタイプだぞ?」
だから、遠坂が不機嫌な時は大抵わかる。今がまさにそうだ。
「......勘違いの方向が斜め上だし、失礼極まりないわね、士郎」
遠坂がにっこり笑う。
わかりやすく激怒してらっしゃる。
と、ここで
「まぁーそーいうの士郎に期待する遠坂さんもどうかと思うけどねーー!!」
そんな怒声とも嬉声とも取れる大音量スーパーボリュームを撒き散らして我が家に突入してきたのは、.........もう説明はいらないかもしれないが、藤ねぇだ。
「藤村先生。どこから?」
遠坂が笑う。
どこからってのはなんだ。どっから出てきたのかって意味なのかどこから聞いていたのか、ということなのか。
「めぎつねが出たした辺りからかなぁ?」
藤ねぇも笑う。
ふむ。状況はさっぱり分からんが後者のようだ。
「あら、藤村先生ったら。今来たばかりなんですね。」
暗にめぎつねなど出していない、と主張する遠坂。それに対し、
「士郎、って呼び捨てにしたあたりかな」
「はぁぁ?」
藤ねぇはバッサリと切り捨てた。おい、遠坂、一応先生だからな。
というか、藤ねぇもそんな回りくどいやり取りしてないでほぼ最初からいたって言えばいいのに。
「士郎の事を士郎って呼んで、何が悪いんですか?」
遠坂の声が低くなる。
「なら、どうして最初は衛宮くんって呼んでたのかしら?」
藤ねぇの声も低くなる。
というかやっぱり士郎って呼ぶ前からいるし。
「そ、それは別に......深い意味はありません」
「あんれれー? そーいえば遠坂さん、前士郎が風邪で寝込んで看病してた時もずっと士郎だったのに、その後完治したら衛宮くんにも戻ってわよね??」
「なっーーーーーーーーーーー」
遠坂が絶句する。いや、俺も驚いてる。いたのかよ藤ねぇ。
遠坂の感情の揺れを見逃さず、藤ねぇが畳み掛ける。
「だいたい、学校の皆の前では衛宮くんなのに家だと士郎って言っちゃう時点でおかしいと思うなーーーー」
「だ、だから、それ、は......」
遠坂が押し黙る。
遠坂が藤ねぇ相手にこんなにしてやられるとは。どーいうことだろうか。心なしか顔も赤い気がする。
「遠坂、熱でもあるのか?」
そう言い、ブツブツ独り言を言っている遠坂に手を伸ばす。
「衛宮くん!!!!」
しかし、あと数センチで触れるという距離で、遠坂はガバッと顔を上げ、
「桜によろしく言っておいて!!!」
......そんなことを叫んで、すたこらサッサと衛宮邸を猛ダッシュで駆けていった。向かう先はもちろん玄関だろう。
そんな姿を見ていつもの藤ねぇなら「遠坂さんに勝った......!!」なんて感傷に浸っていてもおかしくないはずなのに、今の藤ねぇときたら「また挑んでこい」とでも言いたげな、悲しさと誇らしさを織り交ぜたような表情していた。
「藤ねぇ。どういうことか、説明はしてもらえるのかな」
ダメ元で聞いてみる。
「するわけないだろう小僧」
即答。
「ですよね......」
それっきり藤ねぇは自分でお茶を入れ、ズズっと遠い目をして飲み干したのだった。
「.....................なんでさ」
「と、いうことが昨日あったんだが」
「で? 衛宮はそれを僕に言ってどんな反応を求めてるんだよ」
「いや、どんなって。ただの世間話だろ?」
「はぁ? 待てよ、衛宮。それは天然か?それとも狙ってわざとやってんの?」
「待つのはお前だ慎二。急に何の話だ」
「あーあー羨ましいね!。衛宮レベルになると、今の話が『ただの世間話』になるんだもんなぁ! 」
「なにを言ってんだお前」
お昼時。
学校の屋上で弁当を一緒につっついていた級友、間桐慎二に、昨日のことを話すと、こんな反応をされた。こいつが羨ましいなんて単語を使うのは非常に珍しいことだったりする。
「衛宮、さぁ。 もしかして、だけど」
「だから、なんだよ」
「桜の気持ちに気づいてない、なんて言う気じゃあないだろうな?」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?」
素で聞き返す。
「だから、桜のーーーーーーーー」
「待て待て慎二!遠坂の話から桜の話になるまでの過程をすっとばすな!」
ミートボールが詰まりそうになっちゃったじゃないか。
「だって、衛宮の遠坂に対するソレが天然なら、桜だって例外じゃあないだろ?」
「いやだから、遠坂の話をしてる時にさも当然かのように桜の話題を出すのをやめてくれ」
「驚いたね。やっぱり衛宮、天然モノだったんだ」
慎二はバカにしたように、蔑むように、そして、少し悲しそうに、言う。まるで、期待していたものに裏切られたような。
しかし、これには俺も異を唱える。
「慎二。俺は、桜の、その......気持ちってやつに、気づいてないように見えるもんなのか?」
「見えるから言ってんだろ。それともなんだよ。わかってる、ってのか?」
慎二は、真っ直ぐ俺の目を見る。いつものふざけた様子じゃないことは
一目瞭然。正直なところ、この話をするのは、避けていた。やっぱり慎二の実の妹だし、俺にとっても可愛い後輩だったから。
だから俺も、睨むように慎二を見つめる。
桜の事が好きだ。俺も慎二も。
だからこそ、言わなければいけない。
「桜の気持ちは嬉しいけど、俺は、今は誰ともそういう関係には、なれない」
ハッキリと、言い切った。
ハッキリ言わないといけないと思った。
誤魔化すなんてもってのほか。気づいてすらいないなんて、大馬鹿野郎だ。
桜の思うやつが大馬鹿野郎なんて、桜に対して失礼だ。
「ふーん。あっそ。なら、別にいい」
慎二はウインナーを口に放り込む。
きっと、俺がそう言うだろうと、予想していたのだと思う。
強引に桜の話題を出したのも、いつかこの話をしておかないといけないと、慎二も思っていたのだ。
全く、この男と来たら、普段桜に対して厳しかったり素っ気なかったりするくせに、これでけっこう妹思いなのだ。
「まぁでもそのセリフ、僕に言ってる時点でどうかと思うけどね」
「それには返す言葉がない」
その後はお互い言葉を交わさず、黙々と弁当を食い進めて行った。
けど、途中、慎二の横顔がどこかすっきりしたように見えたのは、気のせいじゃ、ないだろう?
「って、おい慎二。遠坂の話は」
「っち。やっぱ衛宮って鬱陶しいよね」
後書き
この小説、Fate原作における士郎の名言?というかかっこいいセリフなど丸パクリはもちろんないんですけど、一部引用していく予定であります。
むしろそのために士郎を主人公にしたまである。
あと遠坂さんとの話の変わりようがえぐい。これが女子。
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