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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic28手を取り合えば~Cooperation of a Different Party~

†††Side????†††

列車砲と装甲列車を攻略を任された私たちは、両兵器の防衛戦力だった母クイントや妹にあたるノーヴェ達を撃破、無事に保護した。防衛戦力を失った列車砲と装甲列車に乗り込もうとしたんだけど・・・。磁力による防壁がったこともあって、アリサさんとヴィータ副隊長が列車砲に乗り込んだ。
その間、サイボーグであることで両兵器に近付くことすら出来ない私とスバルとチンク二尉は、射撃魔法の使い手として残ったティアナと一緒に、装甲列車の屋根に備え付けられた砲台の破壊を行い、それを完遂した。
それからアリサさん達からの連絡を待つこと数分。突如として磁力防壁が解除された。それでもアリサさん達から連絡が入ることがなく、私たちは2班に分かれて両兵器への突入を決めた。

「ではギンガ陸曹。私たちは装甲列車を調べる。まずは手前の車両からだ」

「はい!」

私とチンク二尉は装甲列車、スバルとティアナは列車砲の調査を行うことに。列車砲と連結されている車両から突入して、35mとある車両内部を駆けて先頭へ向かう。車内の通路は結構狭くて、ここで挟撃でもされたら身動き1つ難しくて苦労するのが目に見えてる。

「次の車両が先頭だな。警戒を怠るな」

「了解です」

2両の車内を駆け抜け、先頭車両へ続くドアを視界に収めた。ドアの前で一度立ち止まり、私は左腕に装着した“リボルバーナックル”のナックルスピナーを数回転させた。準備万端だ。チンク二尉と頷き合って、一緒にドアに触れるとプシュッと音を立てて開いた。チンク二尉と背中合わせで突入する。

『――教会諸君。そして、我が愛おしき作品・スキュラ達』

先頭車両内の中央付近に在るポッド内に浮かぶのは、衣類を何1つとして着けていない少女1人。背中から複数のケーブルを生やした彼女の面前に展開されているモニターには、歪んだ空間で四肢を拘束された少年・プライソンと、ルシルさんとなのは隊長とフェイト隊長と八神部隊長が映っている。少女が私たちに気付いたけど、プライソンの話に耳を傾けるためか何もしない。

「待て、ギンガ陸曹。しばらく様子見だ」

確保に動こうとした私を制止するチンク二尉。私はそれに従い、プライソンの話に耳を傾けながらも警戒態勢を維持。モニターから聞こえるプライソンの話は、自らの敗北と“スキュラ”というサイボーグ姉妹の抗戦停止を命じるものだった。

『了解です』

少女が頷いたのを見て、これでこの事件も解決したって安堵した直後、プライソンは衝撃的な言葉を発した。ミッドの支配は真の目的を晦ませるための方便で、“聖王のゆりかご”や列車砲と言った兵器による本戦闘は全て、本命の時間稼ぎ。なのはさん達が騒ぎ出す。聞こえて来たのは隕石という単語。それ以上に気になるのは・・・

『そんな・・・話が、違う・・・』

少女がか細い声でそう漏らしたこと。さらにプライソンの真の目的が、不老不死である自分をミッドを道連れに死ぬことだと知った際の表情が唖然としていた。それから“アグレアス”という本命の兵器が齎す被害がミッドの3分の1を吹き飛ばす物だと判って、ルシルさんが単独で転移移動をしたのを見送った後・・・

『嘘だと言ってください! ミッドを支配して、私たちの思うが儘の世界を造るのが目的だと!』

『ベータ・・・』

少女――ベータや他の“スキュラ”姉妹がそれぞれプライソンに反感の意思を示し始めた。

『管理局・聖王教会に告ぐ。ウチは各陸戦兵器統合管制機ガンマ。これより局の艦隊到着までの時間、ウチらスキュラが隕石迎撃を行う。邪魔をしないように。アルファ、ベータ、デルタ。全兵装を再起動。イプシロンは・・・今のところは用がないから適当に』

そしてガンマという娘がオープン回線で、両組織に対してプライソンへ反抗する声明を発した。ベータとアルファも『父さん。ごめんなさい』ガンマに賛同した。と、「屋根から音が・・・?」した気がした。

『チンクと局員。これよりスキュラ一同で隕石の迎撃を開始する。邪魔はしないように』

ベータからそう言われて、私はチンク二尉を見た。チンク二尉は両手の五指に挟んでいたダガーを降ろした。そんな時、今度はドアの奥から物音・・・というよりは「足音!」が聞こえて来た。

「音の数からして団体だぞ・・・!」

チンク二尉が改めてダガーを構えた直後、開いたドアから「LAS!?」が押し合いながらもここに入り込んで来た。ベータも驚いたことで、この襲撃が彼女の意思じゃないことが判った。

「ギンガ陸曹! そちらを頼む!」

「了解です!」

車両の幅は5m程もあるため、ベータのポッドを護るように横に並ぶ私とチンク二尉の間を突破しようと思えば出来なくもない。しかも人数で言えば圧倒的に向こうが多い。

「LASは死体兵器だ。気分が悪くなるかもしれんが・・・!」

「大丈夫です、お願いします!」

私は殴って蹴ってはLASの両脚をへし折り、転倒して床に両手を付いたところでチンク二尉のダガーは両手の甲を貫いて縫いつけた。そしてチンク二尉のスキルである「ランブルデトネイター!」によってダガーが爆破、LASの上半身を吹き飛ばした。腐った臓物が ビチャビチャと辺り一面に散らばる。

『ふふ、ははは・・・ハハハハハハ! アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン! 創造主である俺からの離反! 楽しませてもらったぞ! だが裏切りは裏切りだ!』

途切れることを知らないLASの大群を捌き続けていると、モニターからプライソンの声が流れて来た。ベータが『父さん、そこまでして・・・』悲嘆に満ちた声を漏らした。

『嫌だね。俺は死にたいんだ。いっちょう派手にな。お前たちを道連れにして。そういうわけで・・・先に逝っていてくれ、我が愛おしく、そして最後に弓を引いた愚かな作品たち! さらばだ! 音声認識! ペニテンツィアジテ!』

逝っていてくれ。その言葉に血の気が引いた。これまで私たちの間を突破しようとするだけだったLASが一斉に足を止め、そして右腕を心臓付近に突き入れた。私とチンク二尉は直感的に・・・

――シェルコート――

――ファイアプロテクション――

防御魔法のバリアを展開。もちろん、ベータも効果範囲に入るように。直後にLASが一斉に自爆して、視界が炎一緒に染まる。けれど爆炎はチンク二尉のバリアによって完全に遮断されていて、私のバリアなんて必要ないって思えてしまう。そうして炎の勢いも収まり始めたところで、チンク二尉から『ベータを連れて外に出よう。ここでは派手に立ち回れん』念話でそう提案を受けた。

『了解です! 私が連れ出しますので、一度バリアを解除します!』

『任せた!』

バリアの効果外だったポット上部が砕け、バリア内のポッド下部も砕けたことで満たされていた培養液が全て漏れ出し、漂っていられなくなったベータが機器の上で座り込んでいる。

「逃げます! 背中のケーブルを外してください!」

「・・・仕方がない。装甲列車を放棄する」

ベータは大人しく背中から伸びるケーブルを外した。とは言え、元よりLASの自爆でその先は焼き切れているけれど。とにかくベータを横抱きに抱えて、LASの自爆によって壁に開いた穴へとウイングロードを伸ばした後、チンク二尉に「行きます!」そう伝えてから脱出した。

†††Sideギンガ⇒ティアナ†††

ギンガさんやチンク二尉と別れたあたしとスバルは、装甲列車から列車砲へと続くスライドドアが自動で開いて、スバルに「行くわよ!」と言いつつ、2人で1歩踏み入れた瞬間、「きゃあ!?」ものすごい濃度のAMFによって変身が強制的に解除された。

「きっつ・・・! 何よコレ・・・!」

「バリアジャケットまで解除されるAMFなんて、聞いたことも無いよ・・・!」

この時点で最悪のパターンが脳裏に過ぎる。ヴィータ副隊長とアリサさんもバリアジャケットを解除されて、捕まってしまっているかもしれない、って。とにかくここで立ち止まっていてもしょうがないわ。

「大丈夫だよ、ティア。あたしのサイボーグとしてのスキルは生きてるし。あたしが守ってあげる!」

「っ! 頼りにしてるわよ!」

恥ずかしい事を言われたことで反論しそうになったけど、正直に言うとかなり助かるから素直に返す。嬉しそうに笑みを浮かべるスバルを連れて、狭苦しい通路を中腰で歩く。そしてようやく辿り着いたスライドドアの前で一度足を止め・・・

「行くわよ、スバル」

「いつでも行けるよ!」

頷き合ってさらに1歩と踏み出すとスライドドアが開いた。突入するとそこには「ヴァイータ副隊長、アリサさん!」と、培養液に満ちたポッド内に漂う「デルタ!」が居た。あと1人の少女が床に倒れ伏していた。

「スバル、ティアナ!?」

「お前ら!」

あたし達の登場に驚きを見せたお2人に、磁力障壁が消失したことで連絡の無かったお2人を捜しに来たことを伝えた。

「あぁ、悪ぃ。念話も通信も外部に届かねぇし」

「そこで倒れてるイプシロンのスペアって子、磁力使いらしくてね。恥ずかしい話、たった今まで捕まってたのよ。壁に貼り付けられて。参ったわよ、まさか人間も磁石化できるなんて」

「まったくだ」

アリサさんとヴィータ副隊長が肩を竦めている中、スバルが「でもよく倒せましたね」感心した。確かにそうよね。磁石化されて壁に貼り付けられた状態で勝つなんて。やっぱりすごい人たちだわ。

『違うし。ガンマがやられたから、無人兵器が一時的に落ちてるだけもん』

「「デルタ・・・」」

『久しぶり、スバル、ティアナ。よくここまで来たね』

素っ裸な上に背中からケーブルを生やしたデルタがポッドの内面に手を付きながら、あたし達に声を掛けてきた。あたしはそんなデルタに近付いて、「今すぐ攻撃を中止しなさい」と伝える。

『んべ。嫌だよ~。これはパパから与えられた任務だもん。さぁ、もういっちょ発射ぁ~~~!』

ポッドの周囲にモニターが2枚と展開され、ミッドの全体マップとターゲットサイト2つ、1から0へと変わる数字が表示された。直後、屋外から届く巡航ミサイル発射を知らせる轟音2回。

「やりやがったな、また!」

「もうスペアは機能停止してる! 力尽くでその中から引っ張り出すわ!」

ヴィータ副隊長とアリサさんが臨戦態勢に入ったことで、あたし(現状、一番役立たずだけど)とスバルもそれぞれ構えを取った。デルタがグッと身構えて『さぁもう1発!』そう言うと、ターゲットサイトが西部と南部に移動した。もちろん黙って見過ごすつもりもなく、ヴィータ副隊長たちが床を蹴って一斉にポッドに向かってデバイスを振るった。

「ぐっ!?」「きゃあ!」「わっ!?」

だけど3人とも力そのものの反発を食らったみたく弾き返された。ヴィータ副隊長とアリサさんは一旦壁に着地するっていう1クッションを置いて床に降り立ったけど、「あいたっ!」スバルは床に尻もちをついた。

「このポッドは対物仕様だから、何をされても破壊されないからね』

そう言ってえっへんと胸を張るデルタ。スバルが「振動破砕なら・・・」って右腕に装着された“リボルバーナックル”に視線を移したその時・・・

『あー、コホン。ご機嫌麗しゅう、管理局・教会諸君。そして、我が愛おしき作品・スキュラ達』

あたし達の前にモニターが展開されて、どういう理屈か判らないけど歪んだ空間に四肢を拘束されたプライソンや、デバイスを構えたままのなのはさん達が映し出された。するとデルタが『パパ!』と笑顔を浮かべて、すべてのシークエンスを中断した。
だけどプライソンの口から語られる、隕石と“アグレアス”という兵器を地上にぶつけてミッドを道連れに自殺するっていう、巻き込まれるこちらとしては堪ったものじゃない彼の真の目的を耳にして、「え・・・?」呆けた。

「隕石ってマジかよ・・・!」

「第一波は無人区域に落ちた様ね」

ルシルさんはプライソンを全力で殴った後、転移魔法を使って“アグレアス”へと転移した。プライソンに死ぬのが目的だというのは嘘だと言ってください、って噛みつくアルファやベータに続いて・・・

『そうだよ、パパ! デルタ、そんな事の為に、パパを死なせるために戦ってきたわけじゃないよ!』

デルタも悲痛な声を上げた。イプシロンやガンマって娘も反感を示し始めた。そしてとうとうガンマが、プライソンの目的を挫くために他の“スキュラ”達と一緒に反抗することを決意した。

『デルタ達は、パパに死んでほしくないんだよ』

デルタがそう言うと、ドォン!と轟音と全身を振るわせる振動が2連続で襲って来た。巡航ミサイルの発射を示すものだ。本当にプライソンに逆らうつもりなんだわ。

「っ? 何か来ます・・・!」

スバルがそう言った直後、死体兵器のLASがドッと侵入して来た。室内の機器が漏らす電灯に照らされるその黒い装甲に、ゾワッと背筋に悪寒が走った。

「何よ、コイツら! 一体どこから湧いて出て来たのよ!」

「おい! わんさか出てきやがった!」

「LASがこんなに・・・!?」

「ヴィータ副隊長、アリサさん!」

LASの濁流に飲み込まれる。もみくちゃにされる中での攻撃に備えたけど、全機はあたし達を素通りしてデルタのポッドに向かって行って、籠手から伸びる剣でポッドに攻撃を加え始めた。

「プライソンの野郎! 邪魔だからってスキュラを始末する気か!」

「そんな身勝手、許さないわよ! デルタ、AMFを解除しなさい!」

『う、うんっ!』

強烈なAMFが解除されたことで「セットアップ!」あたし達は再変身。そしてヴィータ副隊長とアリサさんのデバイス一振りでLASは一斉に吹き飛ばされ、勢いよく壁に叩き付けられた。

「シュートバレット!」

あたしはすかさず物理破壊設定の魔力弾でLASの四肢を撃ち抜いて破壊して、身動きが取れないようにした。スバルもLASを殴り飛ばしつつ、デルタに「守ってあげるからね!」と言ってのけた。

『スバル・・・』

「ま、アンタとは知らない仲じゃないし。ちゃんと生きて罪を償わせてあげる」

『ティアナ・・・。べ、別に頼んでないし! 好きにすればいいよ!』

なんてことを言うけど、デルタの表情は嬉しそうに破顔してるし、照れてるのか頬も朱に染まってる。そうよ、あの子をこんな形で死なせるつもりなんかないわ。そんなあたしの決心を嘲笑うようにプライソンが『――音声認識! ペニテンツィアジテ!』そう言い放つと、LASが一斉に大人しくなったかと思えば一斉に胸に腕を突き入れた。

「全員、防御!」

ヴィータ副隊長が叫んだ。あたし達は指示に従って一斉に防御魔法を発動した。その直後、LASが自爆した。バリア越しに満ちる激しい爆炎と黒煙。よほどの威力だったのか、あたしの張ったバリアに少しずつヒビが入り始めた。

――ヴォルカニックスカッシャー――

その時、とんでもない轟音と振動が生まれて、黒煙が一点に向かって流れ始めた。そのおかげで視界がクリアになって、管制室の現状を視認することが出来た。LASは肉片すら残さずに炭と化していて、室内に張り巡らされていた機材やケーブルも丸焦げで使い物にならない感じ。そしてデルタの収められていたポッドも破壊されていて、「いったぁ~・・・」痛みに悶えていた。

「おめぇら、外に出るぞ!」

「スバル、デルタをお願い!」

新手のLASがひしゃげた出入り口に姿を見せたことで、ヴィータ副隊長とアリサさんが足止めに入ってくれた。あたしはスバルと頷き合って、スバルが「デルタ!」を横抱きに抱えて、壁に開いた大穴から外へと伸ばしたウイングロード上を疾走。あたしも後を追うように駆ける。

「外にもLASやガジェットが・・・!」

列車砲の外、そこにはそれぞれ合わせて3ケタくらいのLASとガジェットがこちらに向かって進軍してた。あたしは“クロスミラージュ”のカートリッジをロードして、「デルタは任せるわよ、スバル!」迎撃に打って出ようとした時・・・

「スバル、ティアナ!」

「私も付き合おう」

「ギン姉!」

「チンク二尉!」

ベータって娘を横抱きにしたギンガさんとチンク二尉が合流した。

「ティアナ、スバル。お前たちはデルタを護れ」

「ギンガも、そのベータって娘の護衛ね」

「ザコ共は私たちが引き受けよう」

さらにヴィータ副隊長とアリサさんも戻って来て、チンク二尉と一緒に迎撃を買って出てくれた。“スキュラ”の護衛を任されたあたし達が「了解!」と応じたと同時、ヴィータ副隊長たちが駆け出して、一方的な蹂躙を開始した。

「デルタ。手動モードで隕石の迎撃を開始よ」

「んっ。スバル、ティアナ。しばらくデルタ達は動けないから、護衛お願い」

「ナノズリペアシステムをフル稼働。オルトロスとケルベロスの砲台および機関を修復・・・」

デルタとベータの周囲にモニターや細長いキーボードが展開されて、2人は高速でキーを打ち始めた。モニターには損傷率や稼働率っていう表示が映し出されているけど、それでも「砲塔が・・・」動き出した。砲門が向くのは空。一緒に見上げると隕石と思しき一筋の光が何十個と地上へ向かって落ちて来てた。

「発射!」

轟音と衝撃波を伴ってレールガン2門からミサイルが2発発射された。デルタが冷却システムとか次弾装填とかブツブツ言いながらキーを撃ち続けるのを見守っていると、「スバル、ティアナ!」ギンガさんに呼ばれた。

「列車砲の裏から・・・!」

列車砲や装甲列車の屋根や車体下からLASが何十体と這い出て来て、それがまるでゴキ○リみたいで全身が総毛だった。だけどそんな事を言っている暇も無い。LASが一斉にデルタとベータに向かい始めたから、あたし達も迎撃開始。だけど・・・

「しまっ・・・!」

その物量差が災いして、数体があたし達の隙間を縫ってデルタ達に接近した。追い駆けようにもそのほかのLASが妨害して来る。

「「デルタ!!」」

「ベータ!」

LASの凶刃が目を見開くデルタ達に突き入れられるかどうかって時に・・・

――ストライクイーグル――

――エリアルショット――

――ガンシューター――

――ヘヴィバレル――

直上から砲撃や射撃弾が十数発と振って来て、LASの頭部をピンポイントで撃ち抜いてたり、胴体に大穴を開けたりして行った。上を見上げればそこには・・・

「お母さん・・・!?」「母さん・・・!?」

「ノーヴェ、ウェンディ・・・!?」

クイント准陸尉とノーヴェとディエチ(破壊されたはずの大砲も新たに携えてる)とウェンディの4人が居た。あたし達の元に降り立ったノーヴェ達はチンク二尉に歩み寄って、「チンク・・・お姉ちゃん」そう呼びながら申し訳なさそうに顔を伏せた。チンク二尉は「思い出してくれたのだな」今にも泣きそうな表情で微笑みを返した。

「ギンガ、スバル。大きくなったね。それに強くなった。お母さん、ビックリだよ」

「母さん!」「お母さん!」

スバルだけじゃなくギンガさんもボロボロ泣いて、クイント准陸尉の胸に飛び込んだ。親子と姉妹の再会に水は差したくはないんだけど、「LAS来てるので出来れば後にしてくれれば・・・」今現在、絶賛戦闘中だから・・・。

「あー、ごめんなさい。えっと、ティアナさん? 娘たちがお世話になっているようで」

スバルとギンガさんの頭を撫でながら、あたしにお辞儀しつつLASの腹を後ろ蹴りで蹴り飛ばすクイント准陸尉に、「どうも、です」あたしも思わずお辞儀を返すことに。

「ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ。洗脳されていたとはいえ、犯した罪は消えない。ゆえにしっかりと償え」

「おう!」「はいっス!」「んっ!」

こうして戦力が整ったあたし達は、デルタとベータを護るためにLASの軍勢を相手に戦闘を再開した。

†††Sideティアナ⇒イリス†††

外でセッテとオットーとディードを撃破し終えたわたしとトーレは、“アンドレアルフス”へと突入してブリッジへと辿り着いていた。真っ先に目に入ったのは、アルファと呼ばれる“スキュラ”の長女をすずかが撃破し終えた様だった。だけどすずか達の奥には、素っ裸無状態でポッドに収められたアルファがもう1人居た。

『たかが魔導師に負ける? ありえない、こんなの! 私は、私はスキュラの長女で・・・!』

全裸アルファが悔しげに表情を歪めて、両手で髪の毛がガシガシ掻き毟った。ヒステリーって言うのかな。なんかお近づきになりたくないレベルで恐い・・・。

「すずか、大丈夫?」

「あ、シャルちゃん。うん、大丈夫だよ。すごく強かったけどちゃんと勝てたよ♪」

わたしが差し出した手を取ってくれたすずかを立ち上がらせる。すずかの言うように快勝だったわけじゃないみたいで、頬に切り傷があったり、防護服も結構切り裂かれちゃってる。

「ていうか、なんでアルファが2人いるわけ?」

「スペアボディだな。ポッドに居るのはオリジナルで脳を積んでいるサイボーグ。すずかが撃破したのは、脳ではなくAIを積んだガイノイドだな。人格やスキルまでコピーされている、恐ろしい存在だ」

「ふーん。早い話がデバイスを擬人化したようなものなんだ~」

トーレはポッド内に漂うオリジナルのアルファに向かって「またお前の顔を見ることになるとはな」トーレがそう言うのを背中で聞く。アルファは髪を掻き毟るのをやめて、トーレをギロリと見下ろした。

『ええ、本当に。忌々しい、恨めしい、口惜しい。月村すずか単独に負けるスペアへの失望も相まって狂おしいほどに・・・!』

とにかく、アルファを押さえれば“アンドレアルフス”も攻略完了だ。そう考えて「んじゃ、あなたの負けだし、そっから出て来てくれる?」って、ポッドから出て来るように言ったところで、『あー、コホン。ご機嫌麗しゅう、管理局・教会諸君。そして、我が愛おしき作品・スキュラ達』プライソンからの通信が入った。

「なのはちゃん達だ・・・!」

「プラダマンテの空間干渉で捕らわれてるんだ~。ありゃもう逃げられないね」

『そんな、父さん・・・!?』

歪んだ空間に四肢を拘束されたプライソンや、周囲に佇むなのは達の姿にわたしはホッとした。対するアルファは顔面蒼白だけどさ。100%逃げられないスキルで拘束されていながらも一切悲嘆に暮れていないプライソンから、自分たちの敗北や“スキュラ”達への抗戦停止命令を下した。

(なんとか終わった~。一時はどうなるかと思ったけど、異なる組織がちゃんと手を取り合えばミッド存亡の危機くらい乗り越えられるって証明されたね)

プライソンの野望も挫いてやったぞ、そう思ったのに・・・。奴は最後の最後でピーみたいな真の目的とやらを語ってくれたよ。隕石を使ってミッドを壊滅させ、さらには“アグレアス”という兵器を大気圏外から地表に落として確実にミッドを滅亡させ、不老不死の奴自身も自殺する、なんて・・・。

「ふざけんな、マジでさ・・・!」

しかも“アグレアス”を止めるためには、“エグリゴリ”のレーゼフェアを倒さないといけない。だからルシルはアイリを伴って、転移魔法を使って“アグレアス”へと向かった。

『父さん。嘘、ですよね・・・? 死ぬ事が本当の目的だなんて、嘘ですよね?』

「アルファ・・・」

これまでとは違って本当に弱々しい声でそう訊くアルファや、プライソンの真の目的に納得できないと反感を示す下の妹たち。すずかが「知らされていなかったみたいだね・・・」憐憫に満ちた声色でそう漏らした。父親であるプライソンの願いの為に、世界を相手に戦いを仕掛けた“スキュラ”達も所詮は使い捨ての駒だったわけだ。敵だけどさ、そんな哀れな思いをさせていいわけないよね・・・。

『お前たち、俺の為にその命を懸けることを厭わない。そう言っていたな?』

『確かに、父さんの為なら死んだって良いとは考えてはいます! ですが・・・!』

娘として父であるプライソンの死など納得できないってことで、とうとうガンマっていう娘が・・・

『――これより局の艦隊到着までの時間、ウチらスキュラが隕石迎撃を行う。邪魔をしないように』

本格的に反抗することを決意した。ミッドへ降り注ぎ始める隕石の迎撃を買って出て、アルファも『父さん。ごめんなさい』そう謝りながら、ポッド外周にいくつものモニターを展開した。

『あなた達に破壊された砲台はすでにリペア済み。隕石をすべて粉砕する!』

モニターに表示される9つの隕石にターゲットサイトが向いた。直後にFIREの表示が浮かんで、わたし達が壊して回った砲台(修理済みとのこと)からエネルギー砲が何十発と発射され始めたその時・・・

『なっ!?』

アルファがわたし達の背後を見て目を大きく見開いた。振り返ってみれば「LAS!?」が何十体と出入り口から侵入して来た。考えるよりも早くわたしとトーレは問答無用で迎撃に入る。すずかは念のためにアルファの側に居てもらうことに。何せプライソンは、裏切るのか、なんて漏らしてたし。自殺するのが目的で、それを“スキュラ”達に伝えていなかったとなれば、最早あの娘たちも用済みどころか邪魔者なんだろうし。

(自分を父と慕う娘たちを殺すなんて、そんな真似は絶対にさせない!)

“キルシュブリューテ”に物理破壊設定の魔力を纏わせ、LASの四肢を寸断して床に転がす。AIを積んでるとは言え所詮は死体兵器。それなりの魔力を込めてやれば寸断できるんだけど・・・

「ああもう! キルシュブリューテが腐った血肉で汚れるぅ~!」

でもやっぱり気持ちの良いものじゃないし、何より刃が汚れるわけで。すずかに「シャルちゃん、そっち!」声を掛けられて、即座に「光牙針縫刃っ!」トーレに当たらないように魔力の剣山を周囲に生やしてLASを足止め。

「アイシクルアイヴィ!」

そこですずかの氷の茨が何十本とLAS達に巻き付いて行って凍らせていき始める。んで、トーレと一緒に砕いて完全破壊。順調に対処しきれると思った側から、プライソンは本格的に“スキュラ”を切り捨てるようなことを言い出し、『ペニテンツィアジテ!』って何語か判んないけどそう言い放った。すると新手のLAS達が一斉に自分の胸に手を突っ込んだ。

「(何かの映画で観たぞ、この展開!)・・・トーレ、下がって! すずか、全力防御お願い!」

2人に指示を出しつつわたしも“キルシュブリューテ”のカートリッジをロード。アルファのポッドの側に集まったところで、すずかが氷結の竜巻タイプの防御魔法・「リフリジレイト・エア!」を発動。さらに「パワーブースト・シールディングフォース!」を発動して強化。その直後に「自爆だと!?」驚くトーレの言うようにLASが一斉に自爆した。

「アルファ、あなたとこの艦にダメージは?」

『月村すずかの魔法のおかげでほぼ無傷で済んだわ』

「なら結構。すずか、外の黒煙を排出できる?」

「あ、うん。今発動してる竜巻を出入り口から逃せば・・・」

「ん。トーレ、準備は?」

「問題ない、いつでも行ける」

「よし。じゃあ、すずか。お願い」

「うんっ!」

すずかが右腕を振り上げると竜巻が徐々に上部から前傾し出し、LASの残骸を巻き込みながら凍結させつつ、ここ管制室の出入り口から通路の奥へと消えていった。LASが一掃されたことで暇になるかと思えば、「ねぇ。プライソンってどんだけLASを造ったの?」なんて呆れるほどに新手が姿を見せた。

「そんじゃLAS狩り再開と行きますか!」
 
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