監獄ロック
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「悪いことをしたとね」
「思ってですね」
「そうした顔になってるんだよ」
「じゃあ社長が俺をここに行かせたのは」
「こうしたことを見てもらいたい為でもあったんだ」
犯罪者といっても色々だ、ああした人達もいることをだ。
「それでだったんだ」
「そういうことですね」
「うん、そしてね」
「それで今から」
「歌ってもらうよ」
「はい」
俺はここでは確しかな声で答えた、そして。
受刑者の人達の前にギターを持って出てこう言った。
「はじめまして」
まずは俺の名前を名乗ってだ、そこからだった。多くは言わないで演奏をはじめた。そして予定の曲を全部歌い終えたが。
そこからだ、俺は受刑者の人達に聞いた。
「もっと聴いてくれますか?」
「もっとですか?」
「聴かせてくれるんですか?」
「そうしてくれますか?」
俺はこう聞き返した、逆に。
「皆さんに」
「あの、しかし」
「わし等はその」
「こうした場所にいますから」
「そんな人間ですから」
「構わないです」
卑屈になっている人も多かった、どうして卑屈なのかもわかっていたからあえて明るく言った。
「俺が聴いて欲しいんです」
「そうですか、わし等に」
「だからですか」
「歌ってくれるんですか」
「聴かせてくれるんですか」
「そうです」
その通りだと答えてだ、もう一度聴いた。
「聴いてくれますか?」
「はい、よかったら」
「お願いします」
「聴かせて下さい」
「歌って下さい」
「わかりました」
俺は笑顔で頷いた、そしてだった。
実際に歌った、それもマネージャーに無理を言って二曲多くだ。しかもあえて明るい曲ばかり選んだ。
そうして歌ってだ、俺は受刑者の人達に言った。
「また来ていいですか?」
「ここに」
「そうしてくれるんですか」
「刑務所に」
「こんなところに」
「はい」
是非にとだ、俺は受刑者の人達に笑顔で答えた。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあ」
「またお願いします」
「そうしてくれるんなら」
「是非」
受刑者の人達は信じられないといった顔で頷いてくれた、その人達の声援を受けてそうしてだった。
俺は仕事を終えて刑務所を後にした、そして帰る車の中でマネージャーに話した。
「また行かせてもらっていいですか?」
「いいよ」
マネージャーは微笑んで俺に答えてくれた。
ページ上へ戻る