もう友達じゃない
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第一章
もう友達じゃない
高校に入学してからだった。間自由と桜庭真子は同じクラスに同じ部活だった。部活は吹奏楽部だ。
その中で一緒にいた。そうしてだった。
お互いに助け合った相談していた。自由から見て真子はとても頼りになった。それで帰り道に一緒になった時にだ。彼女によくこんなことを言っていた。
「御前が一緒のクラスで一緒の部活でな」
「よかったっていうの?」
「ああ、かなりな」
笑ってだ。こう言うのだった。
「お陰で助かるさ」
「そうね。それはね」
「御前もかよ」
「ええ。だって間ってね」
名字でだ。彼を呼んでだった。
「意外としっかりしてるから」
「意外とかよ」
「そう、意外とね」
そうだというのだ。
「頼りになるのよね」
「何で意外なんだよ」
自由は真子の言葉に苦笑いで抗議する。その引き締まった頬に顎がそう綻ぶ。見れば一重の鋭い目もその上の濃い感じの流れる様な眉もしっかりとした小さめの唇もだ。
苦笑いの形になっている。そして癖のある黒髪をかきながら真子の顔を見た。
真子は伸ばした細めで絡む感じの黒髪を持っており口は大きい.。鼻の形はしっかりしている。眉は細くアーモンド形のやや吊り上がった奥二重の目を持っている。顔は白というよりか透けて紅が見えている感じだ。背は女の子としては普通で自由よりも十センチ程低い。スタイルは結構目立つ。制服から見える脚が奇麗だ。その彼女の顔を見ながら言うのだった。
「そこでな」
「だって。間って言い方とかがね」
「いい加減だっていうのかよ」
「そう聞こえるのよ」
こう言うのだった。真子は。
「けれど実際はね」
「意外とかよ」
「しっかりしてるから」
「一応褒めてるんだよな」
「そう聞こえるのならそうでしょうね」
「だといいけれどな。まあそれを言うとな」
自由はまた真子に対して言った。
「御前だってそうだからな」
「私もなのね」
「ああ。桜庭意外と気がつくぜ」
真子と同じ感じのことをだ。本人に返した。
「だから助かるぜ」
「だといいけれどね」
「まああれだな」
「あれっていうと?」
「頼りになる友達だよな」
それがだ。真子だというのだ。
「それもかなりな」
「意外と、とかなりじゃ結構違うと思うけれど」
「そうか?俺の中じゃ同じ感じだぜ」
つまりだ。意外と、というのも結構、というのもその範囲が広いというのだ。言葉の範囲というものはその都度変わり動くものなのである。
だからだ。自由はこう言ったのである。
「まあそういうことでな」
「ええ、それじゃ頼りになる者同士でね」
「友達でいような」
「そうしましょう」
二人はお互いに言いながら下校していた。今の二人はお互いを友達だと思っていた。確かに頼りになる者同士としてそうした付き合いだった。
そのまま一年を過ごし二年生になった。二年になるということは後輩ができるということだ。それは彼等のいる吹奏楽部でも同じだ。
新入部員達に楽器のことを教えたり体力練成の為にランニングをさせたりといったことを二人もしていた。無論彼等も新入部員達と共にそうしている。
そしてその部活の休憩中に二人になったところでだ。自由はこう真子に言ったのだった。
「一年でいいのは」
「荒木君?」
「あいついいだと」
「あと井端さんね」
「あの二人がいい感じだよな」
「そうね。中学の時から吹奏楽部だったっていうし」
経験者、これが大きいというのだ。
「慣れてるしね」
「だからあの二人は大丈夫か」
「そうね。けれどね」
だがそれでもだとだ。真子は自由に返した。二人は部活のジャージ姿で一緒にいて話をしている。その中でのやり取りだった。
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