Fate/inferno
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ライダー
南極、言わずとも知れた極寒の大地である。
そこに人がと聞かれたら、まずNOだと言いたい。実際、観測基地の従業員を除くと誰もいないはずなのだ。
しかし、その極寒の大地に少女のような人影が見える。
「…寒い…死ぬ…ここ何処?」
いかにも凍え死ぬ間際の人影だ…
「てか、どうして私こんなとこにいるんだっけ?」
少女はここに至るまでの経緯を思い返すことにした。
***
私は普通の学生だ。いや、だったというべきかな?ある日、知らない女の人にナニカされたんだっけ。そこらへんの記憶が曖昧だ…確かローニとか言ってたっけ?まぁ、今はどうでもいいかそんな事。それから変なタトゥーみたいなのが出てきて…あと、鎌みたいなのも渡され……
彼女は考えるのを止めた。いや、止めざるを得なかった。
「ちょっ!なんなのよ!?」
何者かが彼女を攻撃したのだ。さらに、その攻撃は実弾などの物理攻撃ではなく魔術による攻撃であった。だが、凡人である彼女には理解出来るはずもなかった。
「チッ、外したか!」
彼女から約30メートル離れた場所に時代錯誤のローブを身につけ、フードを目元までかぶった男が佇んでいた。
「とにかく、逃げないと…」
少女は攻撃してきた男から身を隠すべく、今は無人になっている観測基地に逃げ込んだ。
「逃がすか!」
男は、とても人間とは思えない速度で追いかけてきた。
観測基地の中をひたすら逃げる。ふと、背後を見てみると、いつの間にか消えていた。
「逃げ切った…の…?」
「いいや、こっちだ」
激しい痛みが腹部を襲う。男の放った蹴りが腹部に直撃したのだ。
「…ッ!」
声にならない悲鳴が漏れる。
「すまねぇな、嬢ちゃん。マスターからの指示でよ。令呪を持っているからには、殺さなくちゃいけねぇ」
男が何か言っているが、少女はそれよりも逃げる事を考えていた。
(どうすれば逃げ切れる!速度じゃ絶対に敵わない…そうだ、あの女から貰った鎌で…!)
彼女は反撃を試みた。少しでも長く生きるため、とっさの判断で竹刀袋に入れていた鎌を突き出す。しかし、男は難なく手に持つ杖で弾いた。
「ほぅ…いい得物を持ってたじゃねぇか。俺もランサーで召喚されていたら、突きあいに遊んでいたかもしれねぇな。だが今はキャスター、もうちょい遊んでいたかったがさよならだ」
少女は死を悟った。だが彼女は諦めてもいなかった。
(死にたくない…まだやり足りない事が多すぎるのに、こんな所で死にたくない!)
キャスターは気づかなかった、彼女の無言の叫びと、手にしていた鎌により、この瞬間に召喚の儀式が完遂されたことを。どうやら、この聖杯戦争では召喚の儀式についてはじつに曖昧な定義がなされているらしい。
施設の中をまばゆい閃光が貫き、巻き起こる激しい旋風がキャスターの意をついた。
「なん…だとぉ!」
閃光の中から人影がみえる。何が起こっているかわからない少女は、目を細めながらその様子を見ていることしか出来なかった。
閃光の中から男が飛び出して、キャスターに向かって先程まで少女が手にしていた鎌を使い突撃していった。
「ハッ!鎌が得物みてぇだが、あんたのクラスはランサーか!」
応戦しながら相手のクラスを瞬時に理解し対応していこうとしたキャスターだが、男から予想もしない返答が返ってきた。
「いいえ、私のクラスはライダーです」
「あ?何だと?」
ライダーと名乗った男は鎌でキャスターを弾き飛ばた。
「チッ、しゃーねぇー。今回はここまでだ。じゃあな嬢ちゃん。精々殺されねぇよう励めよ」
キャスターは光の粒子となって消えていった。
「…倒したの?」
「いいえ、倒せてはいません。霊体化して撤退しました。」
ライダーはそう答えた。少女は安心してその場に倒れた。
「では、遅くなりましたが契約を…」
そして倒れた直後に疲労と安心で気絶してしまった…
「マ、マスター!?しっかりしてください!ここで寝たら死にますよ!?」
こうして、聖杯戦争の知識どころか、魔術の知識すらない少女…ハ舞ひたぎは、魔術師達の闘争たる聖杯戦争に巻き込まれていった。
後書き
はい、初めましてhollowです。
今回はいわゆる主人公回ですね。ライダーはともかく、キャスターの真名は勘のいい方ならもうおわかりかと思います。今頃、何故舞台を南極にしたのか若干後悔してますが、のんびり続編書いていきますのでよろしくです!
それでは次回お会いしましょう(`・ω・´)
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