| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百三話 ハウステンボスその十六

「よくね」
「いいお父さんね、何時聞いても」
「そうなるかな」 
 このことは何か親父がイタリアに行ってからよく思う様になった。
「あの親父は」
「だってそうしたこと教えてくれるわよね」
「よくね」
 人生の大事なことをだ。
「何かにつけて」
「しかも借金もないし暴力も振るわないわね」
「それは格好悪いって言ってるよ」
「人として」
「うん、金はあるだけ使うもので」
 そしてだ。
「暴力なんかに訴えるなって」
「人に対して」
「人間性を訴えろってね」
「そう言う辺りもね」
「いい親父なんだね」
「そう思うわ」
「まあね、家にはお金を入れてくれてたし」
 今もそうしている位だ、管理人としてお給料を貰っているからいいと言ってもまだ子供だから気にするなと言って。
「絶対に家に帰ってるし」
「じゃあね」
「いい親父なんだね」
「そこまで揃ってたらね」
「そうなるんだね」
「ええ、けれど経験を重ねていく」
 香織さんは僕が言ったこと、親父に言われたそれを心の中で反芻したみたいだった、そのうえでこう僕に言った。
「大事ね、そのことは」
「そうだよね」
「そして色々なものを知っていけば」
「奇麗なもの、美味しいものもね」
「わかっていくね」
「そうよね、じゃあ私も」
 香織さんは決意した顔で僕に言った。
「経験していくわ」
「そうしていってだね」
「立派な人になっていきたいわね」
「いいものがわかる」
「そうした人にね、まずはね」
 船からの景色を見続けながらの言葉だった。
「この景色見ていくわ」
「奇麗な景色を」
「そうするわ」 
 景色を見続けながら笑顔で言った、夕陽はさらに赤くなり運河の銀色に赤を加えて煉瓦もそうしていた、ハウステンボスは次第に夜に近付いていっていた。


第百三話   完


                        2016・8・10 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧