ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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74部分:血の絆その三
血の絆その三
「パパパ、パティ、貴女今何て!?」
いつも大人しいラナが何時に無く驚いている。
「どうしたのよ、そんなに慌てて」
逆にパティの方が驚いている。
「今何て言ったのよ!?」
「えっ、だからジャムカ父様達がアグストリアへ行って五年かあっ、て」
「そそそそそそれで貴女のお母様って・・・・・・・・・」
「ブリギット母様の事?」
「じゃじゃあ私と貴女はいといといと・・・・・・」
「糸がどうかしたの?」
「従姉妹なの!?」
「うん、そういえば・・・・・・・・・って!?」
「私の母様と貴女の母様は双子の姉妹なのよ!」
「嘘っ!?」
これにはさしものパティも驚いた。
「本当よっ!」
二人は飛びつき合いその場を回りだした。従姉妹同士の思いも寄らぬ対面だった。この話は瞬く間に解放軍中に知れ渡った。同時にパティ、ディジーに兄がいる事も解かりとりわけパティの兄は十二神器の一つ聖弓イチイバルを継承している事も知られた。またパティが自分の従兄妹である事を知ったレスターの驚きようは大変なものであった。その時は危うく落馬しそうになり慌ててディムナやスカサハに助けられた話は後々までの語り草になった。
解放軍が和気藹々(?)と進んでいた頃フリージ軍には一つの問題が生じていた。
無数の天幕と旗が林立する中フリージ家の者だけが使う事を許されている緑地に白い二つの雷と雷神ドンナーの持つ鎚が描かれた大旗が掲げられている。その下に一際大きな天幕がある。そこから喧騒が聞こえてくる。
「今奴等を討たなくてどうするというのだ、この小娘!」
テーブルを挟んで人相の悪い男二人がテーブルを叩く。ケンプフの配下ザインとバルベデスである。二人共ドス黒い軍服に褐色のマントを羽織っている。彼等とケンプフが一方に陣取りもう一方にヴァンパ、フェトラ、エリウ等三姉妹とヒックスがいる。ティニーはテーブルの主座で戸惑いながら双方のやり取りを見守っている。
「無闇に攻撃しても被害を出すだけだ。今はメルゲンとの境で守っておれば良いのだ!」
ヴァンパが舌鋒鋭く反論する。妹達もそれに賛同した。
「フン、大方レンスターを陥した後こちらに振り向けられる援軍を期待しての事だろう。何とも悠長な事だ」
バルベデスが皮肉を込めて言う。エリウがそれに反論する。
「あ〜ら、無鉄砲な突撃をしようっていうの?蛮勇って素晴らしいわ」
「何っ!?」
フェトラも参加した。
「今我が軍は優勢にあるのよ。別に下手に攻勢を仕掛けなくてもいいじゃない」
「くっ・・・・・・」
バルベデスは沈黙した。ヴァンパは更に追い込んだ。
「大体何故そこまでシアルフィ軍との戦いを望むの?メルゲンやダーナで戦利品を漁ろうってわけじゃないでしょうね?」
「ぐっ・・・・・・・・・」
二人は言葉を出せなかった。正にその通りだったからだ。
「だからどうしたというのだ?」
ケンプフが出て来た。傲然と胸を張り何ら臆するところは無いようだ。
「勝者が敗者から戦利品をもらうのは当然の権利だ。それにセリス公子は帝国に弓引く反逆者、何ら非難される謂れは無い」
「し、しかしそれは・・・・・・」
ヒックスの言葉をケンプフは遮る様に言葉を続けた。
「騎士道でも言い出すつもりか?全く無意味な事だな。そんなものが戦においてどれだけ役に立つというのだ?」
「うっ・・・・・・」
怯んだヒックスをケンプフは嘲笑する眼で見下ろした。
場には険悪な雰囲気が漂っていた。ケンプフ達と三姉妹、ヒックスは互いに睨み合い一歩も引かず嫌悪の眼で見合っていた。
「・・・・・・・・・もう止めて」
ティニーの声だった。右手をテーブルにつき左斜め下へ顔を向けている。顔を正面へ向き直した。
「今ここで仲間割れなんかして何になるというの?私達はこれからシアルフィ軍と戦わなくてはならないのよ」
「姫様・・・・・・」
ティニーは更に言葉を続けた。
「今日の軍議はこれで終わります。将軍達はそれぞれ休んで」
「はっ」
敬礼が一斉に為される。ケンプフ達はさっさと天幕を後にし三姉妹はティニーを気遣うように視線を送りながら天幕を後にする。ヒックスは側に控えようとするがティニーはそれを制して天幕の入口に引かせた。
大きな天幕に一人だけとなったティニーは椅子にポツンと座った。両肘をテーブルに付き顎を手の甲の上に置き物思いに耽っている。
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