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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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53部分:雷帝その六


雷帝その六

「あれが・・・・・・セリス公子」
 リンダはセリスを見て思わず呟く。
「まるで女の人みたい・・・・・・。綺麗な人・・・・・・」
 セリスはシャナン、オイフェ、レヴィン、そして他に二名連れている。二人の前に来るシアルフィ式の敬礼をした。二人もフリージ式の敬礼で返す。
「リンダ王女ですね」
 声や仕草からも悪い印象は全く受けない。むしろ優しげで心地良く魅力さえ感じる程である。
「はい」
 リンダは答えた。敵と会う為気を張り詰めて来たのだがいささか拍子抜けした。
「私は解放軍を率いるセリスという者です。実は貴女と御会いしたいという者がいて会見の場を設けました」
 「はい。そしてその者とは?」
「こちらです」
 セリスに手で示された者が前に出て来た。それはリンダが非常に良く知る者だった。
「アミッド兄さん・・・・・・」
「久し振りだな、リンダ」
 リンダは思いもよらぬ再会に驚いた。アミッドは突如行方をくらましたと聞いていたからだ。
「どうしてシアルフィ軍に・・・・・・!?」
 妹からの問いに対し兄は落ち着いて答えた。
「御前を迎えに来たんだ。ヒルダの魔の手から救う為にな」
「叔母様が!?まさか・・・・・・・・・」
 アマルダの方を見た。暗い顔で頷く。
「まさか・・・・・・そんな・・・・・・・・・」
「嘘だと思うのなら後ろを見てみな。お付の騎士さん達、騎士にしてはやけに人相が悪くねえか?」
「え・・・・・・!?」
 解放軍の最後の一人が出て来た。アーサーである。
「身近にも刺客はいるだろ。そう、すぐに命を狙える場所にな」
 後ろの五人の騎士達の顔が崩れだす。それは悪事を企む者が忌々しい真実を暴き出された時の顔だった。
「そんな・・・・・・・・・」
 アマルダの手が剣にかかる。
「さあてどうする?降参するなら良し、さもなければ・・・・・・」
 アーサーの言葉に刺客達は追い詰められていく。そして遂に自暴自棄の行動に出た。
 一斉にリンダへ襲い掛かった。既に柄に手を当てていたアマルダが銀の剣を抜きたちまち二人を斬り捨てる。しかし残る三人がリンダに襲い掛かる。
「エルサンダーー!」
 リンダが雷を放つ。一人目の刺客を倒した。二人目が剣を突き出すがそれをかわし相手の右頭部に至近で雷を直撃させる。イシュトーが認めただけあって強力な魔力と鮮やかな身のこなしである。だがこの時左がガラ空きになっていた。
 最後の一人が剣を振り下ろしてきた。間に合わない。アマルダがこちらへ駆けて来るがもう襲い。リンダは死を覚悟した。剣が彼女の頭に吸い込まれる様に落ちていく。
 件が刺客の腕ごと吹っ飛んだ。エルウィンドだ。リンダは思わず魔法の飛んで来た方を見た。風の主は兄だった。妹の危機に兄が放ったのだ。
 リンダがエルサンダーを放つ。アマルダが剣を突く。胸と脇と同時に撃たれ刺客は事切れた。
「兄さん・・・・・・・・・」
「俺だけじゃないぜ。周りを見てみな」
「えっ!?」
 リンダは兄の言葉に従い周りを見た。すぐ側でアマルダが剣を構え解放軍の一同がリンダを護る様に外を向いて円を組んでいる。
「えっ、敵の私を・・・・・・」
「敵だとかそんなのはこの場合関係無い。奸賊に狙われている俺の妹を助けてくれただけさ」
「そう・・・・・・有り難う」
 リンダは微笑んだ。瞳がうっすらと滲んでいる。
「御前さえ良ければだけど俺達と一緒に来ないか?」
「ええ」
「それでは私も」
 アマルダが入ってきた。
「えっ、将軍貴女は・・・・・・」
 リンダの問いかけにアマルダは目と口で微かに笑った。
 
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