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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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4部分:旅立ちその三


旅立ちその三

「へっ、ガキ共のお出ましだぜ」
 解放軍を見て兵士の一人が小馬鹿にした顔で言った。
「さあてと、さっさと片付けて後はどんちゃん騒ぎといこうぜ」
「おお」
 イザーク軍先遣隊と解放軍はコーンウォール峡谷西の平野で激突した。後に『ガネーシャの戦い』と呼ばれる解放軍の初めての正規戦である。兵力においてイザーク軍は優勢であった。しかし彼等はそれを頼みにまともな備えなく解放軍へ向かったのである。その代償は高くついた。
「いっちょまえに大剣振り回すんじゃねえよ、ガキのくせに!」
 イザーク兵の一人が解放軍の先頭に立ち銀の大剣を両手に持つスカサハに斧を投げ付けた。スカサハはそれを大剣で叩き落すとその斧を投げたイザーク兵へ突進し剣を振り上げた。
「喰らえっ、月光剣!」
 渾身の力を込めて相手の左肩から右脇へかけて剣を振り下ろした。続けてそのすぐ後ろにいた別の兵へ滑るように突き進み横一文字に薙ぎ払った。二人の兵士は時が止まったかのようにその動きを止めた。やがて斜めに剣を振り下ろされた兵士の身体が左肩からずれ落ちだし、横に薙ぎ払われた兵士の上半身が後ろへ崩れ落ちた。上半身が重い音を立てて落ちると同時に鮮血が間欠泉の様に噴き出した。その時にはスカサハは三人目の兵士を唐竹割りにしていた。
「最初は反対していたくせにやるじゃないか、あいつ」
 ロドルバンが半ば呆れ顔で言うとラドネイもそれに同調した。
「本当、真っ先に突っ込んで三人斬っちゃったわよ」
「流石はイード家だな、あの剣技は」
「兄さん、感心してる場合じゃないわよ」
 妹の言葉に兄は不敵に笑った。
「そうだな、じゃあ俺達も」
 二人は構えを取った。
「行きますか」
 その言葉を合図に二人は敵軍へ稲妻の如き速さで突き進んだ。岩石と見間違うばかりの大斧がロドルバンの頭上へ振り下ろされる。彼に斧を振り下ろした兵士の腕を右手の鋼の剣で切り払うと左手の鋼の大剣を胸へ突き刺した。ラドネイは足を狙った一撃を跳躍で素早くかわすと鋼の剣を横へ一閃させた。一撃を繰り出した兵士の顔が上顎の部分から吹き飛んだ。
「何だあいつ等、化け物か!?」
「あいつ等には構うな、あのちっこい女を殺れ!」
 ラクチェへ四人の兵士が襲い掛かる。ラクチェは勇者の剣を構え冷静に彼等を見ている。
(まだ遠い・・・・・・)
 イザーク兵達が突進して来る。
(まだだわ・・・)
 間合いが更に迫った。イザーク兵達が斧を振り上げた。
(今だ!)
 ラクチェが動いた。
「流星剣!」
 まず一番前にいた兵士が胸を斜めに切られ次の兵士の左腕と顔の斜め半分が飛んだ。三人目は片膝と胴を真っ二つにされ最後の兵士は身体を十文字に断ち切られた。一瞬にしてラクチェに斬られた兵士達は細切れになり地面へバラバラと落ちた。
 四人をはじめ解放軍の剣撃がイザーク軍を圧倒する中セリスは一人のイザーク軍の者と対峙していた。
 両手に銀の剣を構えセリスは瞬きもせず相手を見ている。セリスの足下には既に二人のイザーク兵が倒れている。今前に立っている者は将校らしく武装も服装も他の者とは違う。敵は斧を振りかざすとセリスへ襲い掛かった。それを見るとセリスは姿勢を屈め相手の懐へ跳んだ。
 二つの影が交差した。一方は着地と同時に脇腹から血を噴き出して倒れた。もう一方は着地の瞬間ややバランスを崩したがすぐにバランスを取り戻し壊走する敵軍を見やった。セリス達解放軍の初めての正規戦は鮮やかな勝利に終わった。
 
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