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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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37部分:神剣その七


神剣その七

 セルフィナが再び弓を引き絞った。矢は光の様な速さで宙を飛び敵兵を倒した。
 解放軍の者達も流石である。一人また一人と倒していく。
 敵の後ろに一人の魔道師がいた。奇妙な漆黒の法衣を着ている。だが形勢が不利と見るや踵を返して逃走した。
「奴は私に任せてくれ」
 セイラムはそう言うと砂の上を滑る様に逃げる敵を追い詰める。
 どれだけ逃げたであろうか。後ろを振り返った。敵はもう見えない。上手くまいたらしい。後は仲間の援軍を頼むだけだ。前を向いた。そこには死がいた。
「悪いがここを通すわけにはいかん」
 セイラムだった。魔道師の動きを読み先回りしていたのだ。
「周りには誰もいなかったのを不運に思うんだな」
 セイラムの周りが急に暗くなった。そして数個の黒い渦が現われた。
 渦は次第に人の顔のようになった。否、それは顔そのものだった。それが宙に浮いている。
「これの威力・・・知っているだろう」
「くっ・・・・・・」
 黒い顔が一斉に襲い掛かった。顔が魔道師に当たると黒い瘴気をシュウシュウと出した。
「死ね」
 魔道師は肌をドス黒く変色させ倒れた。苦悶の表情を浮かべ息絶えんとしていた。いまわの際にセイラムを睨み付けた。
「裏切り者・・・・・・」
 と呪詛の言葉を吐いた。セイラムはその言葉を背で受けた。
「・・・貴様なぞに解からんよ」
 振り向かず死体に言い返した。
 先頭部隊が襲われたとの報はすぐさま主力部隊を率いるオイフェにも伝わった。
「やはり魔物の正体は賊か。それならば対応する方法は幾らでもある」
 後ろの伝令役の将校達を見やった。
「飛兵達に伝えよ。軍の周りを広く飛び賊を探しそれを報告せよ、とな。歩兵と弓灰、及び魔道師は隊を組み敵に当たれ、騎兵隊はその援護、僧侶は治癒に当たれ」
「はっ」
「全軍に伝えよ、多少進軍が遅れても構わぬ。賊を探し出して殲滅せよ!」
「はっ!」
 伝令将校達はそれぞれの部隊へ命令を伝えに向かった。オイフェはそれを黙って見ていた。そして思った。
(民衆を害すだけが能の賊共なぞ敵ではない。そしてその様な賊共にセリス様の夢を壊させはせぬ)
 こうして砂漠での戦いが幕を開けた頃セリスはスカサハやラクチェ達剣士も主だった者達と軽歩兵五千を連れイード城へ向かっていた。
「本当に見渡す限り砂ばかりね」
 マリータは額の汗を手で拭いながらぼやいた。
「砂漠は初めてか」
 マリータの隣で服に付いた砂を払いながらガルザスが聞いた。
「ええ。レンスターは水と緑ばかりで砂は小川のサラサラした砂しか知らないの」
「レンスターか・・・。確か御前はフィアナにいたのだな」
「そうよ。リフィスさん達についてイザークに行くまでエーヴェル母様と一緒だったの」
「エーヴェルか。懐かしいな・・・」
 ガルザスはふと遠くを見る目をした。
「母様を知ってるの?」 
「ああ。もう長い付き合いだ」
「長い付き合いって・・・私そんなの全然知らなかったわよ」
「そうだろうな。俺がエーヴェルに最初に会ったのはまだ御前の親が生きていた頃だ」
 マリータの瞳が大きく見開かれた。そしてガルザスを見る。
「えっ、じゃあ貴方私の父様と母様の事を知ってるの!?」
「ああ、多少な」
「教えて、教えてよ!私の父様と母様ってどんな人だったの!?」
「・・・・・・いずれ解かる。それより客人だ」
「え!?」
 客人はパティとディジーだった。二人はマリータ達を見つけると全速力で走って来た。
「あんた達解放軍?」
 パティがマリータに尋ねてきた。 
「えっ、そうだけど」
「じゃあセリス様おられるよね」
「えっ、ええ、まあ」
 マリータはきょとんとしている。
「連れてって」
「ちょっと、そんな簡単に・・・・・・」
 見知らぬ少女の強引な主張にマリータは困惑している。
「いーじゃん、いーじゃん。堅苦しい事は言いっこ無し」
「ちょっと、大体あんた達何者・・・」
「あたし達?義賊よ」
「そうなの・・・って要するに盗賊!?」
「チッチッチッ、違うわね。あたし達は悪い金持ちや帝国からしか盗まないのよ」
「結局同じ事でしょーーが!」
 パティとマリータが妙なやりとりをしている間にガルザスから知らせを受けたセリスがスカサハとラクチェを伴って現われた。
 
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