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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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35部分:神剣その五


神剣その五

 イザークとグランベルの戦乱を避け叔母アイラに連れられヴェルダンへ逃れた。そこでシグルドに助けられ以後行動を共にする。ヴェルダンからアグストリアに移った時彼にとって決して忘れる事の出来ない事件が起こった。シグルドの妻ディアドラが何者かに捉われ姿を消してしまったのである。シグルドからディアドラの護衛を頼まれていたシャナンはシグルドに泣き叫んで謝った。その時のシグルドの顔は今でも覚えている。反逆者の汚名を着せられたシグルド達がシレジアに逃れた時は共にシレジアへ移った。リューベックの戦いの直後シャナンはオイフェと共にセリスや子供達を連れてイザークへ落ち延びた。そしてその地でシグルドの死を知った。自らの軍を安全な場所に逃がす為楯となりその傷により死んだのだ。それを聞いた時オイフェはその場に崩れ落ちた。シャナンは黙ってセリスを抱き締めた。セリスはそんなシャナンの顔を見て無邪気に笑っていた。泣かなかった。二度と泣かないと決心したからだ。叔母アイラとその夫ホリンは仲間達と共にシレジアに潜伏し会う事は無かった。しかし寂しくはなかった。オイフェや子供達、エーディン、ミデェール、そして何よりセリスがいたからだ。シャナンはセリスの兄の様な存在となり常に共にあった。寝食を共にし戦場でも一緒だった。セリスを護りたい、その一心で戦い抜いた。剣技は比類無きものとなった。だがそれに満足しなかった。もっと力が欲しい、セリスを護り共に戦う為の力が欲しい、その為にイード来てバルムンクを探し回ったのだ。そして今その求めていたものが手の中にある。シャナンの身体が喜びに打ち震えた。
 その時だった。城門から次々に影が現われた。それぞれ手に剣や弓を持ち三人へ向かって来る。
「どうやらこいつ等が魔物の正体らしいな。何の事は無い、単なる賊だ」
 シャナンはバルムンクを抜くと跳躍した。
 低く跳びすれ違いざまに戦闘の剣士を斬り捨てる。着地と同時に振り返り横の弓兵を倒す。そのままの回転で真後ろの賊達を横に両断する。回転が止まると同時にその前にいた敵の足を薙ぎ払う。
 今度は高く跳んだ。まず跳びざまに一人の賊の頭を縦に斬った。宙を飛びながら右の弓兵の口から上を斬り飛ばすと左の剣士の胸を刺し貫く。着地ざまに眼の前の敵を両断する。まるで舞うかの様に美しい剣技である。
「すっごーーーーい!」
「流石イザークの王子様!」
 シャナンの剣技を見て嬉しそうに飛び跳ねる二人にシャナンは言った。
「二人共、騒いでいる暇があるなら逃げろ。ここは私一人でどうにでもなる」
「逃げるって何処に?」
「イザークの方だ。あそこには我が解放軍の協力者も多い」
「リボーの辺り?それならもう解放軍が解放したわよね」
「イザークはもう全部解放されちゃったわよね」
 「何っ、それは本当か?」
 今度は逆にシャナンが驚いた。
「ええ、あたし達ここ来る前リボーによったから」
「大騒ぎだったよね」
「そうか、セリスが・・・・・・」
 シャナンは嬉しそうに、感慨深げにリボーの方を見た。
「だとすれば話は早い。すぐリボーへ行け」
「うん」
「了解」
「やけに物分りがいいな」
 その言葉に二人はにっこりと微笑んだ。
「だってねえ」
「セリス様って・・・」
 二人は声を合わせた。
「凄い美形なんでしょ?」
「・・・まあ私の目から見てもな」
 二人の緊迫感の無い浮いた態度にシャナンは再び呆れ返った。
「でシャナン様、セリス様ってどんな女の子が好みなの?」
「あたしみたいな黒い髪の女の子よね」
「何言ってんのよ、あたしみたいな金の髪の元気な美少女よ」
「美少女!?ちょっとは自分の身長考えて言いなさいよ。そこらの子供より小さいくせして」
「そう言うあんただって大して変わらないじゃないのよ」
「あーら、これでもパティより高いわよ」
「殆ど変わらないじゃないの」
 言い争いを始めた二人にシャナンは瞼を右手の親指と人差し指で押さえ暫し瞑目した。いい加減頭にきた。
「・・・・・・二人共、そんな事をやっている暇があったら早く行ってくれないか」
「あーーっ、忘れてた」
「今行きまあーーす」
 二人は脱兎の如く東へ駆けて行った。砂に全く足を取られず信じられない速さでたちまち見えなくなった。
「・・・やっと行ったか」
 すぐに城門から新手が現われた。すぐにシャナンを取り囲んだ。
「どうやら死に急ぐようだな」
 不敵な笑みを浮かべた。バルムンクの刀身が眩い光を発した。
 
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