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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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34部分:神剣その四


神剣その四

−イード砂漠ー
 かってイードはイザーク王国領であった。
 先の戦乱の時グランベル王国がイザーク征伐に出兵した折イザーク王国のマリクル王子はここを拠点としてグランベルに対抗した。砂漠でのゲリラ戦にグランベル軍は苦戦したが兵力に勝るグランベル軍はイード城を包囲した。この時点でイザークと講和しようとしたクルト王子はランゴバルト公に暗殺され、その罪はバイロン公に着せられた。和平派は粛清され、イード城への総攻撃が開始された。業火の中マリクル王子は十二神器の一つ神剣バルムンクと共に炎の中に消え、ランゴバルト公は城内の将兵や市民を虐殺して城を廃墟とした。イザーク王国がドズル家のものとなってもイード城は廃城とされ長らく誰も近寄らなかった。何時しかこの城に魔物が潜んでいると噂されるようになりイードを通った旅人や行商人達が消息を絶つようになった。これに対しイザーク、レンスター両国は何回か調査隊を送り込んだが真相は解らず終いだった。やがてこの辺りを誰も通らなくなりイードは死の砂漠となった。城は砂漠に覆われ時折ツチブタやフェネックが顔を出す。城門もどうしようもない位寂れている。先の戦乱の傷跡が今だ生々しく残っている。そこから不意に二つの影が飛び出してきた。
 影の正体は二人の少女だった。一人はサラサラとした金髪を後ろ髪だけ伸ばし、それを束ねた青い瞳の小柄な少女である。顔立ちは明るく可愛らしい。青と白のストライブの帽子に黄の上着、白いミニスカートの下に黒タイツを履いている。もう一人は黒のロングヘアに黒い瞳をした整った細身の少女である。背は金髪の少女より少し高い位か。ピンクのバンダナにオレンジ色のシャツ、赤いズボンといった格好である。
「やったねパティ、大漁よ」
 黒髪の少女が手にした袋を掲げながら金髪の少女に言った。
「あたしの言った通りでしょ?ディジー。ここはお宝の山が眠ってるって」
 金髪の少女パティも袋を掲げながら朗らかに言った。
「魔物がいるって聞いたけどそんなのいなかったし」
「あんなの単なる噂話よ。どうせ行き倒れたか蠍や蜘蛛にでも刺されたんでしょ」
 ディジーはパティが右手に持つ一振りの剣を見た。片刃で三日月の様に反り返った刀身を持ち柄や棹には豪華な装飾が施されている。
「パティ、その剣何処にあったの?」
「ああ、これ?祭壇のとこに何か恭しく置かれてたの。高く売れそうでしょ」
 その時城門から一つの影が躍り出て来た。
「!?」
 出て来たのは青年だった。長い黒髪に深い黒に近い紫の瞳、スラリとした長身に白い端正な顔、紫の丈の長い服に同じ色のズボンを身に着けている。
「で、出たあーーーーっ!」
「魔物ーーーーっ!」
 パティとディジーは絶叫した。
「・・・・・・おい、私が魔物に見えるか?」
 青年はやや呆れ顔で二人に言った。二人は顔を見合わせた後青年をまじまじと見た。そして。
「御免なさーーーい」
「間違えちゃったあ」
 とあまり誠意の感じられない謝罪をした。
「・・・まあ良い。ところで」
 誠意の無い謝罪を受け流し青年は言葉を続けた。
「君が手に持っている剣だが」
 パティが手に持っている剣を指差した。すると二人は再び叫んだ。
「何、じゃああんた同業者!?」
「そんなに欲しいんだったら城から取って来なさいよ!」
 青年は目を閉じ額に左の人差し指を当て俯いた。
「・・・・・・違う。その剣は私のものなのだ」
 と言った。
「嘘!?」
「どういう事!?」
 青年は続けた。
「その剣は十二神器の一つ神剣バルムンク、我がオード家に伝わる神器だ」
 二人はハッとして顔を見合わせた。
「って事は貴方は・・・・・・」
「イザークのシャナン王子!?」
「そうだが」
「素敵ーーー、本物なのねーーーっ!」
「あたしファンなのーーーーっ!」
 シャナンは飛びついて来た二人を手で制しつつ冷静さを失わない声で言った。
「・・・・・・とにかく返してくれないか」
 それに対しパティは素直に従った。
「はい」
 とシャナンの手の平に返した。
「これがバルムンクか・・・・・・」
 シャナンは剣を手に取った。そして鞘の先から柄の先までゆっくりと眺めた。
「何と暖かい・・・。全身に力がみなぎってくる様だ・・・・・・」
 濃紫の瞳が恍惚としている。シャナンの脳裏に今までの記憶が甦ってくる。
 
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