ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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31部分:神剣その一
神剣その一
神剣その一
解放軍がダナン王を倒しイザーク全土を解放したという報はたちまち大陸全土へと伝わった。
これによりシレジアで、アグストリアでかってシグルドと共に戦ってきた者達を中心として蜂起が起こり、またグランベル帝国本領でもシアルフィを中心として不穏な動きが感じられるようになった。大陸全土に反帝国の狼煙が上がり始めていた。
大陸南東部レンスターにおいても例外ではなく、ブルーム王やヒルダ王妃達の圧政に対しまずターラが独立の気配を見せ、レンスターでは城主グスタフの不在に乗じてレンスター王家の直系リーフ王子と彼に従うレンスターの旧臣達が城を占拠した。
そして彼等の頼みに応じセリス公子率いる解放軍がイザークに一万の兵を残し、義勇兵を入れると八万に達する軍勢をもってリボー城を発ち南進を開始した。
対するレンスターを治めるフリージ家は彼等の四倍にも達する三十万の兵で迎え撃たんとする。今レンスターは風雲急を告げんとしていた。
かってレンスターにはマンスター、コノート、アルスター、そしてレンスターの四王国の他にターラ等の自治権が認められた都市が存在しレンスター王家がその盟主として他の王国や都市を束ねるという形で『レンスター連合王国』が存在していた。しかし七六〇年の戦乱の折イード砂漠において盟友シグルドを救うべく槍騎士団を率いて進軍していたレンスター王子キュアンとその妻でありシグルドの妹でもあるエスリン王女をその軍もろともトラキア王トラバントに殺され、二人の娘アルテナも彼のグングニルにより砂漠の露と消えレンスター王家の神器地槍ゲイボルグが持ち去られるといういわゆる『イードの戦い』に始まったトラキアのレンスター侵攻により連合王国は危機に瀕した。これに対しレンスターも盟主レンスター王を中心にトラキア軍を迎撃したが、トラキア王国に内応したコノートの将軍レイドリック、アルスターの宰相グスタフ等の裏切りによりトラキア軍に大敗、レンスター王は戦死した。同時にグランベル帝国はキュアン王子が反逆者シグルドに加担していたという理由でレンスター征伐を宣言し、フリージ家の当主ブルームを指揮官としてレンスターに侵攻した。帝国軍の圧倒的な物量の前にさしものトラバント王も兵を退くしかなく、不本意ながら帝国と同盟を結ぶしかなかった。
レンスターはフリージ家のものとなりブルームは王となった。独自性の強いレンスターの状況を考え各都市それぞれがそれなりの自治権を持ち、それをブルーム王が束ねるという統治方式だったがブルーム王の統治はグランベル帝国のそれに似た圧政であった。王自体はそれ程でもなかった。だが残虐非道な女として知られる王妃ヒルダ、レンスターを与えられたグスタフ、コノートを与えられたレイドリック、そして雷騎士団の将軍ケンプフ等いわゆる『三悪』といった連中の行いはイザークのダナン王のそれとその無道さにおいて勝らずとも劣らずであった。このままではすぐにイザークと同じ様に大規模な反乱が起こっていたであろうが王には二人の非常に聡明な子があった。
一人は『雷帝』イシュトー、もう一人は『雷神』イシュタル。この兄妹は若くして王国の両輪となって働きヒルダや三悪のとその一味を抑えていた。それに加え彼等は慈愛を知り、政戦両略に秀でていた為民や将兵にも慕われていた。イシュトーは王国の西の玄関口メルゲンに、イシュタルはトラキアとの境マンスターに駐屯し、東西で多様なレンスター全土を治めていた。だがかってのレンスターを慕う者は多く反乱の火種はくすぶり続けていた。その様な時にセリス公子のイザークでの活躍が伝わり、まず以前よりフリージからの独立を望んでいたターラで不穏な動きが見られるようになった。そしてセリス公子率いる解放軍が遂に蜂起し快進撃を続けているとの報が伝わるとレンスター城でリーフ王子達が城を占拠した。これに対しフリージはイシュトー王子を総司令とし四万の兵を以ってレンスター征伐軍を派遣した。そこにイザーク全土を手中に収めた解放軍が南下して来たのである。
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