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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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262部分:炎の剣その三


炎の剣その三

「正確にはレーヴァティンの魂がティルフィングと一時的に同化したのだ。暗黒神を倒す為ティルフィングの守護神であるバルドにレーヴァティンの所持者であるローゲが力を貸したのだろう」
「しかし何故ローゲが・・・・・・」
 ローゲは気紛れで悪戯好きの神として知られているのだ。
「気紛れかも知れんぞ。ローゲは天邪鬼な行動を好む男。元はムスペルムヘイムで燃え盛る炎であったのが心を得て神となりヴォータンの義兄弟としてヴァルハラに出入りするようになったのだからな。炎の様に消え現われる。同僚である神々に対して悪質な悪戯をする事も多い。知恵は回るがその行動と性質が常に矛盾している。基本的に暗黒神と対立する位置にいるがどうかな。今度の行動も気紛れだろう」
「そうですか」
 一同その答えにいささか拍子抜けした。だがレヴィンはそれとは逆のことを考えていた。
(レーヴァティンがセリスの手にあるということは・・・・・・。このユグドラルにおける私の仕事はもう終わりだな)
 レーヴァティンを手にするのには相当の力が無ければ出来ないのは言うまでもない。またこの世の週末に放たれるというこの剣は己を持つ者の心をも厳しく見る。ローゲがこの剣をどうして手に入れたか誰も知らない。だが一つだけ言えた。世界を滅ぼし焼き尽くせるこの剣に選ばれた者は世界に平和をもたらし統べるに足る者でもあるのだ。
 ユリウスがその左腕に稲妻を宿らせる。バチバチと音が鳴り緑の筋が血管の様に左手で動く。
 右手には炎を宿らせた。赤く燃え盛りユリウスの右半分を照らし出す。
 同時に胸に風を出した。それはすぐに竜巻となり炎と雷の両方を巻き込みはじめた。
 両手をクロスさせその三つを一斉に放った。相互の螺旋を描いて絡み合いながら暗黒神に襲い掛かる。
 ユリアが静かに瞳を閉じた。黄金色の光がゆっくりとその全身を包んでいく。
 光はユリアを包み光の球となった。その中で彼女の薄紫の長い髪と柔らかい衣が波打っている。
 瞳を開いた。紫の瞳と青の瞳が水晶の様に澄み切っていた。
 両手を合わせ前へ出した。光球が目の前に立つ邪神に向けて放たれた。
 ユリウスとユリアの攻撃を受けさしもの暗黒神も呻き声をあげた。今までの傷もあるのだろう。その巨体が一瞬グラリと揺らいだ。
 セリスはそれを好機と見た。白い炎を宿らせたティルフィングを両手で強く握り締め全速で駆け出した。
 跳んだ。これも剣のちからであろうか。背にツバサが生えたかの様であった。
 苦しみもがく暗黒神の頭上を越えた。剣を逆手に握り直しそのまま急降下する。剣が向けられたその足下には角をはやした漆黒の頭があった。
 空中で一度大きく振り被った。竜の眉間へ向けて渾身の力を込めて突き降ろした。
 根本まで突き刺さった。セリスも竜もその動きが止まった。時がその刻みを止めたかの様であった。
 セリスは根本まで突き刺さった剣をゆっくりと引き抜いた。剣身を包んでいた白い炎は徐々に消えていき完全に消え去った。
 暗黒神から飛び降りる。着地し今しがた渾身の一撃を加えた敵を見る。
 竜の頭を白い炎が包んだ。その炎はすぐに首や胸、翼、やがては全身を包み込んだ。
 暗黒神は白い炎の中に消えていった。炎がその最後の一片を消した時竜もまたその姿を消していた。
「やった、か」
 レヴィンは思わず会心の笑みを漏らした。諸将が一斉にセリスに駆け寄る。
 セリスはその輪の中にいた。皆喜びを分かち合っている。中には涙を流している者もある。辛く長い戦いが今ようやく終わったのだ。
 城の内外からも勝利と戦いの終わりを喜ぶ声が木霊する。ユグドラルを覆っていた闇の帳が振り払われ光が取り戻されたのだ。
「夜明けか」
 気が付けば月が姿を消し暁が姿を現わそうとしていた。その中ユリウスは一人輪の中に入らず階段を降りようとしていた。
「一人で行くのか」
 誰も気付かなかったがレヴィンだけが気がついていた。他の者に知られることなく呼び止める。
 ユリウスは黙って頷いた。だがレヴィンは言った。
「一人で行くより二人で行った方が良いだろう」
 この言葉に流石のユリウスも驚いた。しかしレヴィンはまた言った。
「それが御前の歩むべき道なのだ。今までの罪を償うのならばその方が良かろう。どうだ?それを選ぶのも選ばないのも御前の自由だが」
「・・・・・・・・・」
 ユリウスはしばし沈黙し考え込んだがやがて頷いた。レヴィンはそれを見て微笑んだ。
 勝利を祝う声が木霊する。それは新たな時代の到来を告げる声でもあった。
 
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