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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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26部分:南へその二


南へその二

「ジャンヌ、ここにレスターとディムナがいたのね」
 抜き身の剣を肩に担ぎラクチェが後ろにいるジャンヌへ問う。
「ええ、間違い無いわ」
「ここで会ったが百年目、今日こそ引導を渡してあげるわ」
 ラドネイは銀の剣の輝く刀身を見ながら血走った目で言った。
「二人共そんなに頭にきてるの?」
 ジャンヌの問いは愚問であった。
「当たり前よ。おかげで始終あの鬱陶しいのに付き纏われてるのよ」
「ヨハルヴァの奴なんか一日中あたしと離れたくないってしつこいの」
「・・・・・・はあ」
「見てらっしゃい、今日こそは」
 この時ラクチェ達は闘技場を見ていなかった。もし見ていたならば驚いたであろう。ガルザスが流星剣を使ったのだから。
「剣の方も上手くなってきたじゃないか」
 別の闘技場でハルヴァンがオーシンに言った。
「ああ。けど何でオイフェさんはヨハン殿下に剣を使わせたりヨハルヴァ殿下やダグダさん達ウォリアーに弓を習わせたりしているんだ?」
「何でも攻撃に幅を持たせたいらしい。城の中での戦いや飛兵を相手に出来るようにってな」
「成程ねえ、流石は名軍師と言われるだけはあるな。おっ、始まるぞ」
 闘技場に一人の男が現われた。紅い縮れた髪に細く黒い瞳、卵型の顔をした白面の男である。裏が赤地の黒く長い上着に黒ズボンを身に着け、その上から灰色のマントを羽織っている。
「見たところ魔道師みたいだな」
「何か陰のある奴だな」
 二人は何気無くその男を見ながら話していた。男はエルファイアーで以って相手を一撃で倒した。
「中々やるみたいだな」
 二人、三人と雷や風の魔法も駆使し倒していく。やがて勝ち数は二十に達していた。
「おい、あいつかなり強いぞ」
「ああ、だが次はどうかな」
 今度の相手は重厚な鎧と楯で身を固めたバロンである。解放軍の者達に闘技場の腕利きを片っ端から病院送りにされた親父が切れてこの闘技場最強の男を彼に当ててきたのだ。
 バロンの右腕が下から上に振られ炎が地を走る。炎系の最高位に位置する魔法ボルガノンである。炎は魔道師の足下で大爆発を起こした。
「やられたか?」
 爆発と共に起こった火煙が消えた。そこには傷一つ受けていない男がいた。
「流石だな」
 オーシンが称賛の声をあげた。男は影の様に静かに、それでいて疾風の様に速く間合いを詰めてきた。
 至近でエルファイアーを放つ。だがそれは楯に防がれた。
 バロンが間髪入れずその重厚な鎧からは想像も出来ない素早さで大剣を横に薙ぎ払った。男はそれを後ろに宙返りしてかわした。
 体勢を戻し間合いを一気に詰める。まずはウィンドを放つ。敵はそれをまたもや楯で受け止め大剣を振り下ろした。その時だった。
 男は剣が振り下ろされるより速く相手の懐に飛び込んだ。そしてその腹部へエルファイアーを撃ち込んだ直後エルサンダーを放った。
 バロンの巨体が吹き飛ぶ。そして壁に激突し倒れ込んだ。
「勝負あり!」
 場内は喚声に包まれる。親父がガックリと肩を落とした。
「凄え奴だな」
「ああ、うちに欲しいな」
 ハルヴァンとオーシンが話しているうちに男は闘技場を出て観客席に現われた。そして二人の方へ歩いてきた。
 
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