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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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256部分:聖戦その一


聖戦その一

                       聖戦
 夜からの雨は陽が昇る頃には止んでいた。解放軍は雲が空から去り陽が天と地を照らすのとほぼ同時に進撃を命じた。
 角笛が鳴らされはたがゆっくりと掲げられる。人と馬が大地を踏みしめ前進を開始する。目指すは魔皇子の座す城、王都バーハラである。
 バーハラ城は完全に包囲された。十重二十重に囲んだ解放軍は徐々にその輪を狭めていく。やがて城の城門が全て開かれた。
「敵軍だね」
 セリスがそれを見て言った。
「はい。城内の市民達は既に全員城から脱出し我等が保護しております。だとすれば考えられるのは一つしかありますまい」
 オイフェが言った。
「だとすればおそらく出て来るのは」
「はい、異形の者達でしょう」
 オイフェの予想は当たった。出て来たのは火竜や氷竜、魔竜といった竜達、ゾンビ、スケルトン、ドラゴンゾンビ、空には飛竜やガーゴイル、ビグル等がひしめきこれ等の他にも漆黒の魔犬や岩石の如き身体の巨人、山羊の頭や一つしかない腕や脚を振り回す古の魔物フォモール、人の身体に狼の頭を持つ人狼、炎の毛を持つ狐といった異形の魔物達が次々と現われてきた。
「どうやら暗黒教団の奴等が各地から召還してきたらしいな。相変わらずそういったことにはよく頭が回る連中だ」
 シャナンが忌々しげに呟く。
「だが退くわけにもいくまい。ここで退いたら今までのことが全て水の泡になってしまう。だろう、セリス」
「うん、何があろうと退かない。行こう皆、勝利を我が手に!」
 セリスがティルフィングを高々と掲げた。全軍鬨の声をあげ無気味な咆哮をあげこちらに炎の息や矛を向けんとする魔物達へ突撃を開始した。
 人と魔物達の壮絶な死闘が始まった。その禍々しい武具をもって襲い掛かる魔物達を解放軍の将兵達はその戦術を以って迎撃していた。
「怖れるな!敵の姿に怯える必要は無い!」
 セリスが叫ぶ。
 まず敵の前面には陽動として腕の立つ者が行く。そして側面や後方に回り込んだ者達が狙い撃つのだ。数を頼みに来る者に対しては方陣で以って防衛する。そうして魔物達に対抗していた。
 しかし魔物といえどやはりこと戦闘に関しては素人であった。実際に武器を手にし戦術を駆使して戦う術は知らなかったのである。個々の強さでは圧倒的な戦闘力を持ってはいてもそれを満足に生かせなかった。少しずつ確実に倒されていった。
 戦局が解放軍のものになるまで時間は然程かからなかった。城外の敵を全て倒し終えると解放軍はあらためて城を包囲したのである。
「行こう」
 セリスが行った。皆それに頷く。
 諸将と精兵達が城内に入る。遂に帝都にまで入った。
 城内は予想された通り悪質な罠と血に飢えた獣、そして所々に潜み奇襲を仕掛けんとする暗黒教団の者達でひしめいていた。建物の部屋を一つ、路の小通りを一つ確保するのでさえ容易ではなかった。だが解放軍は粘り強く進撃を続けた。
 天井が落ち暗黒教団の者達が闇から襲い掛かり足下の罠がその牙を突如として剥く。それでも進んで行った。一日が過ぎ二日三日、そして四日と死闘が続いた。遂に六日目の夜解放軍は宮城に達した。
 白亜の壮麗な城が夜の闇の中に聳え立っている。彼等はその城を見上げた。
「ようやくここまで来たな」
 既に宮城以外は全て占拠している。あとはここだけである。
「この城にいる」
 空には夜だというのにはっきりと見える程の無気味な雲がある。妖気に満ちたドス黒い雲だ。かってレンスターやミレトスに現われたあの雲だ。
 城門を開けた。そして中に進む。
 バーハラの宮城は複雑な造りで有名である。外敵を惑わせる為であるがそれは解放軍の諸将に対しても同じであった。このラビリンスは巨大でありモザイクの様に入り組んでいた。
 
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