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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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254部分:光竜降臨その二


光竜降臨その二

 光が消え後にはユリアだけが残された。
 ユリアの頬に少しずつ赤みがさしてきた。閉じられていた口が僅かに開いた。ゆっくりと瞼が開いてきた。
「良かった、ユリ・・・・・・」
「ユリアッ!」
 セリスが進み出ようとする。だがそれより速くオイフェが飛び出て来た。
 ユリアに駆け寄り抱き付いた。そして人目も憚らず彼女を抱き締め涙を流した。
 その思いもよらぬ事態にセリスをはじめ一同呆然となった。当のユリアも狐につままれたような顔をしている。
「あの、オイフェ」
 セリスが近付きオイフェに声をかける。オイフェは主君の言葉に我を取り戻し顔を真っ赤にして慌ててユリアから離れた。
 ユリアに言おうとしたその言葉をオイフェに取られたセリスはとりあえずユリアに服を着替えて来るように言った。
 暫くしてユリアが戻って来た。以前の薄紫の丈の長い服とローブである。
 以前と大きく変わったようだ。表情も大人びていた。瞳も左の瞳がシアルフィの青い瞳となり神秘性を増していた。何よりも全体から発せられる気が今までよりもより強く美しくそれでいて全てを包み込むようなものとなっていた。
 一同その変貌に思わず息を飲んだ。オイフェは顔を赤らめたまま俯き加減にユリアを見つめている。
「皆さん、ご心配をかけ申し訳ありません。只今帰ってまいりました」
 そう言ってペコリ、と頭を下げる。長い薄紫の髪が波を作った。
「ユリア、本当に良かった。これも十二聖戦士の御導きだろうね」
 セリスが笑顔で言った。
「はい。こうして再び皆さんとお会い出来たことが夢のようです」
 二人は互いに歩み寄り手を取り合う。今兄と妹は再び結ばれた。
「ユリア、君に渡したいものがある」
 セリスは言った。
「わかっていると思う。それが何なのか。そしてそれを手渡すことが何を意味しているのかも」
「はい」
 二人の表情が引き締まった。セリスはレヴィンからダイアの箱を受け取ると彼女の前に出した。
 箱の蓋に丸い輪の形をしたくぼみがある。人の頭程の大きさだ。
「ユリア、君が着けている母上の形見でもあるそのサークレット・・・・・・。それこそがこの蓋を開く鍵なんだ。さあユリア、この箱を自らの手で開けるんだ。そしてユグドラルに幸福と平和を取り戻そう」
 ユリアはその言葉に従い自分の頭からサークレットを外した。そしてそれを箱のくぼみに入れた。
 箱のくぼみから白く強い光が発せられた。光が消えると箱の蓋がゆっくりと開いた。
 箱の中には一冊の書があった。黄金色の拍子に豪華な装飾が施されている。
 ユリアはその書を手に取った。不思議な温かさが感じられた。
 黄金色の光がユリアを包んだ。温かく力強くそれでいて優しい光だった。
 ユリアは多くの声が自分の心の中に語り掛けて来るのを感じていた。弱い者達、自らを守る術の無い者達の為に、ユグドラルの為に、平和の為に、そして束縛されている者達の為にこの力を使えーーーー。多くの声がそう言っていた。どれも厳しくそれでいて温かさのある声だった。
 何時しかユリアの瞳から涙が流れていた。感涙していた。自らの使命の責任の重さ、人々の期待の大きさ、そして人の持つ温かさ、全てが感じられた。炎の様に熱く真珠の様に美しい涙であった。
 
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