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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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21部分:愚王の末路その四


愚王の末路その四

 ホプキンズ率いる親衛隊は斧騎士団と同じ様に突撃用の陣形を組んでいた。彼等を眼下に見下ろしながらオイフェはセリスに言った。
「あれが親衛隊です。連中の悪辣さはセリス様もよく御存知でしょう」
 彼等を忌々しげに見ながらセリスに話す。
「うん。ところで前から気になっていたんだけど親衛隊の紋章の犬の首と箒は一体どういう意味があるんだい?」
「犬の首は王に反対する者に噛み付き、箒は王に反対する者を排除するという意味だそうです。その実態たるや王の名の下に略奪や殺戮を楽しむ山賊よりも性質の悪い野獣共の群れです。とりわけ隊長のホプキンズはかって暗黒教団狩りの時罪を捏造しては罪無き人々を残忍極まる拷問で嬲り殺しにしその財産を全て自分のものにしていたという男です。私自身の手で成敗したとさえ思っております」
「暗黒教団狩り・・・・・・・・・」
 セリスが眉を顰めた。
「暗黒教団は百年前の聖戦で完全に亡び去っております。悪辣な輩共がでっち上げ己が浅ましき欲望の糧としたものです」
「・・・あの男と親衛隊、そしてダナン王を倒さなければイザークに明るい未来は無いね」
「はい。奴等に下す正義の審判を私は今ここに用意しております」
「正義の審判?」
「そうです。もうすぐ戦争が始まります。その時御覧頂けます」
 オイフェは目の前の解放軍の陣を見て笑った。それは勝利を確信した笑みであり、かつ己が策成功させようという軍人に共通する種の喜びを含んだものであった。
 朝靄が消えた頃親衛隊は動き始めた。坂を怒涛の如く駆け上がって来る。
「来ました」
 若い将校の字鳥がラルフに伝える。ラルフはすぐさまセリスとオイフェのいる本陣に伝えた。
「行きましょう」
 オイフェに促されセリスは前線へ出た。今将に親衛隊が弓を引き絞ろうとしている。
「撃て!」
 解放軍の陣から弓が一斉に放たれる。何騎かが落馬しそのまま動かなくなる。
「そのまま進め」
 動ずる事なくホプキンズは命令を下す。ドス黒い嵐が再び解放軍に襲い掛かる。
「魔道部隊、撃て!」
 弓兵と入れ替わり魔道師達が魔法を放つ。嵐が切り裂かれ炎に包まれ倒れていく。
「思ったより魔道師が多いな。しかし次に撃つまで時間がある。そのまま突撃だ」
 人形の様に全く表情を変える事無くホプキンズは命令する。だが進めなかった。
 すぐさま第二撃が斉射された。親衛隊の兵士が次々に撃ち倒されていく。
「何っ!?」
 ホプキンズの眼が大きく見開かれた。一射目からほぼ間髪を入れず第二射が来たからだ。
「私達が何の用意もせずにここへ来ているとでも思っていたのか!?」
 解放軍に近寄ることすら出来ず撃ち倒されていく親衛隊の将兵達を見ながらオイフェは言った。騎兵隊の突撃に対し解放軍は『多段斉射』でもって対したのだ。
 まず一組目が撃ち後ろに下がり二組目が撃つ。二組目が下がり三組目が撃つ。そしてそれを繰り返す。戦術としてはフリージの誇る雷騎士団が得意とする『カラコール』等があり取り立てて斬新な戦術ではない。ただ解放軍にまさかこれだけ正確に魔道を使える技能があると思っていなかった親衛隊は狼狽した。
「よし、次だ!」
 今度は投石器から巨大な岩が放たれた。岩石は放物線を描き親衛隊目がけ落下する。
 岩石が兵士の頭を直撃した。首から上を棒で割られた西瓜の様に四散させ兵士が落馬する。岩はバウンドし別の兵士の腹を直撃する。それが次々と放たれ頭上から襲い掛かる。同時に前からは弓と魔道が斉射される。
 弓と魔道と投石の攻撃により親衛隊が恐慌状態に陥ったその時彼等の上空に新たな脅威が現われた。
「ペガサスナイト!」
 今度はペガサスナイト達だった。弓騎兵達がしきりに動き弓を放つ。だが天馬達は弓の射程内には決して入ろうとせず遠巻きに飛ぶだけだ。だが親衛隊はそれに惑わされかろうじて保っていた陣が崩れてしまった。それは全てオイフェの読み通りであった。
「よし、弓部隊及び魔道部隊は全軍一斉射撃!その後騎兵隊全軍突撃!」
「おお!!」
 弓が空を埋めんばかりに放たれ炎や雷が壁として敵を撃ち、解放軍の全騎兵が一斉に地響きを立てながら突進して来た。
「ヒイイイイイイイッ!」
 悲鳴を上げた兵士の頭へヨハンが勇者の斧を振り下ろす。続けて横の兵士の胸を薙ぎ払う。ただの力技ではない。技と速さまで併せ持っている。
 
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