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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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195部分:魔女その四


魔女その四

「身体だけじゃないぜ。弓の腕も親父を超えたぜ」
 父は大口を叩く息子に対して目を細めた。
「ははは、見せてもらうのを楽しみにしているぞ」
 パティがその横で自分と同じ金髪碧眼の女性に抱き付いていた。
「母様、会いたかったよ・・・・・・」
 嬉し泣きするパティに抱き付かれている女性も涙を流している。パティより頭一つ高い美しい女性である。黄の上着に白ズボン、皮の胸当てを着けている。
「御免なさいね、パティ。でもこれからはずっと一緒よ」
「うん・・・・・・うん・・・・・・」
 娘の頭を愛しげに撫でる。優しい母親の顔だ。
「随分強くなったみたいね。それに綺麗になったわ」
「えっ、そうかなあ、へへへ」
 パティは顔を赤らめ照れ笑いを浮かべる。そんな娘を見て母はまた微笑んだ。
 青い鎧に全身を包んだ黄金色の髪と青い瞳をした騎士がデルムッドととナンナ、そして何故かフェルグスと一緒にいた。
「そうか、ラケシスはイードで・・・・・・」
 青い鎧の騎士はデルムッドとナンナから話を聞くと静かに目を閉じた。
「けど母さんは自らの信念を持ってイードへ行ったんだ。・・・・・・俺に会う為に」
 デルムッドは俯きながら言った。
「デルムッド・・・・・・」
 騎士はデルムッドを慰める様にその名を呼んだ。
「母様は亡くなられたけどここで父様に会えるなんて不思議ね。もう二度と会えないかもと思っていたのに」
「ナンナ・・・・・・」
 三人は抱き合った。それを見てフェルグスも貰い泣きした。
「良いなあ、親父さんと再会出来て。・・・・・・俺も家から旅立って七年、親父とお袋元気かなあ」
「心配するな、開拓村で元気にやっているよ」
 騎士は子供達と抱き合いながら言った。
「コールプレとクンドリーだろ。村で宿屋をやっているさ」
「何で親父とお袋の名前を知ってるんだ?」
「それも本名じゃない。本当の名前はカールとエヴァっていうんだろ」
「そこまで・・・・・・」
「知っていて当然さ。俺の兄夫婦なんだからな」
「えっ!?」
 それを聞いたデルムッド、ナンナ、そしてフェルグスの三人は思わず声をあげた。話しの張本人、二人の父でありフェルグスの叔父であるかってシグルドと共に戦い剣騎士として名を馳せたベオウルフは悪戯っぽく笑った。
「俺はアグストリアの宿屋の次男坊だったんだ。ある日旅に出て何時の間にか傭兵になった。そしてエルトシャン王やシグルド公子と知り合い今ここにいる。まあ偶然の連続でここまで来たのさ」
「・・・・・・凄い偶然の連続だな」
 かなり相当な偶然であるが親子と叔父甥、そして従兄弟同士の対面は終わった。以後フェルグスとデルムッド、ナンナの関係はより親密なものになった。
 親と子の再会が、叔父と甥の出会いが、そして再会が輪となる中レヴィンは一人の古くからの友と共にいた。
「遂にここまで来たな」
「ええ」
 レヴィンに言葉をかけられたその友は静かに、且感激を込めて言った。
 純白の法衣をゆったりとした黒いマントで覆っている。長い金の髪、空の様に澄んだ瞳に中世的な白い顔立ち、かってユグドラル一の賢者とされ『ブラギの再来』とまで謳われたクロードである。
 その法力の強さは伝説的であった。疫病で全滅の危機にあった村をライブの杖一つで救ったり、未来を知る事も出来たという。バーハラの戦い後はその力を恐れた帝国に執拗なまでに追っ手を差し向けられたが逃げ延びアグストリアに潜伏していた。やがてかっての仲間達が帝国に反旗を翻すとそれに加わった。そして今このラドスの平原に立っている。
「光の下星達が集まっています。闇が払われる時が来ようとしているのです」
「ああ」
「別れた糸が再び繋がれています」
 クロードは抱き合う親と子達を見ながら言った。
「そして私も・・・・・・」
 クロードは歩きだした。そこには新たな、そして力強く優しい星が輝かんとしていた。
 
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